死亡保険の必要性~生命保険は不要?必要な家庭といらない家庭をFPがシミュレーション
死亡保険はご家族がいらっしゃる方にとって、とても必要性の高い保険です。
しかし販売されている死亡保険の種類も多く、自分にとってどんな死亡保険が合っているのか、そもそも死亡保険が必要なのか迷われてしまう方も多くいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は死亡保険の必要性や、どのような過程にとって必要なのかをまとめました。
この記事を読んでいただくことで、自分にとって死亡保険が必要かどうか判断できますのでぜひご一読ください。
目次
死亡保険は必要?備える理由や役割とメリット・デメリット
死亡保険が必要かどうかを判断するときは、そのメリットとデメリットについてしっかり把握する必要があります。
死亡保険は何の為に備える?
死亡保険に加入する理由は、自分が亡くなった後に周りの人々に金銭的な迷惑をかけないためです。
例えば、あなたにご家族がいて、妻と小さい子供がいた場合、あなたが亡くなってしまうと、これまで得ていた収入が途絶えてしまい、残された家族が生活できなくなる可能性があります。
そこで、死亡保険に加入しておくことで、あなたが亡くなった後は支払われた保険金を使って残された家族が生活をしていくことが可能です。
また、あなたが独身の場合でも、葬式にかかる費用を死亡保険で準備しておくことで、親に金銭的な負担を強いることがなくなるでしょう。
このように、死亡保険は残された家族がお金に困らないように備える目的があります。
死亡保険に加入するメリット
保険金で金銭的な不安を解消できる
死亡保険に加入すると、亡くなった場合に残された家族が保険金を受け取れるため、遺族の金銭的な負担を緩和できるメリットがあります。
家族が亡くなるということは、精神的にもかなりつらいもの。
そんな中で今後の生活に金銭的な不安があると、残された家族はさらに追い詰められてしまいますよね。
死亡保険で保険金を受け取ることで、今後の金銭的な不安が解消されるため、残された家族の心をケアしてくれる効果もあります。
保障を準備しながら貯蓄もできる
さらに死亡保険は様々な種類があり、終身保険や養老保険のように死亡保障を準備しながら貯蓄もできるものもあります。
特に終身保険は、一定期間経過後に解約すると支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れるため、銀行の預金に預けるよりも効率的にお金を貯めることができます。
税金の負担が緩和される
死亡保険に加入すると、支払った保険料が生命保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の負担が少なくなります。
生命保険料控除で控除できる額は、所得税で最大4万円(年間保険料が8万円以上)で住民税が2.8万円です。
所得税と住民税をそれぞれ計算するときに、年間の所得から生命保険料控除の額が引かれて税金の金額が算出されるため、控除額分だけ税金が安くなるわけではないという点に気を付けましょう。
死亡保険に加入するデメリット
保険料負担が高額になる場合がある
死亡保障を得るためには、当然ですが保険料の支払いが必要です。
家族がいる場合は、保険金額を数千万円に設定する場合もあり、保険料が高額になる可能性があります。
特に終身保険などの貯蓄性の保険は、掛け捨ての保険と比べて毎月の保険料負担が大きくなるため家計を圧迫してしまうことも。
また、途中で解約をすると、受け取れる解約返戻金よりも、それまで支払った保険料の方が大きくなる「元本割れ」が発生することもあります。
死亡保障は確かに必要ですが、現在の生活の方が大事ですので、家計に過度な負担を与えない金額に設定しましょう。
自分が保険金を受け取れない
死亡保険金が給付されるときは、自分が亡くなった時ですので、医療保険やがん保険と違い自分が保険金を受け取ることができません。
あくまで、残された家族のために加入する保険であることを忘れないようにしましょう。
万が一があった際の遺族年金制度と公的助成制度について
万が一のことがあった場合は、死亡保険に加入していなくても、公的な制度から給付金を受け取ることができます。
代表的なものが「遺族年金」です。遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなった場合に、残された家族に支給される年金です。
支給される額は、779,300円に子供の人数に応じたこの加算を加えた金額。
子の加算額は以下の通りです
- 第1子・第2子:各224,300円
- 第3子以降:各74,800円
子供の人数が多いほど、受給できる額が多い仕組みですが、子供が2人いても受給できる額は、10万円程度。
後述の遺族厚生年金を受け取ることができない、自営業やフリーランスにとっては、少し心もとない金額となります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、遺族基礎年金に上乗せして受け取れる年金で、主に会社員や公務員が受給できます。
遺族厚生年金で受給できる額は、厚生年金に加入していた期間によって変わり、以下の計算式で求めることが可能です。
(1と2の年金額をそれぞれ計算し、多い方の金額を受給できます)
1 報酬比例部分の年金額(本来水準)
(平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×3/4
2 報酬比例部分の年金額(従前額保障)
※従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したもの)
(平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬月額×5.769/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×0.997×3/4
※出典:日本年金機構
上記の計算式を見ると複雑に見えますよね。簡単にいうと遺族厚生年金で受給できる額は、老後に受け取れる老齢厚生年金の3/4です。
年に1度送られてくる年金定期便に、ご自身の年金受給予定が記載されているため、確認してみると良いでしょう。
年齢別死亡率と死亡原因
厚生労働省の、「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)」を元にすると、日本人の死亡原因の第一位は、「がん(悪性新生物)」です。
その割合は全体の27.9%を占めています。その次は、心筋梗塞・狭心症などの心疾患(15.3%)と脳血管疾患(8.2%)が続きます。
悪性新生物の死因は、男性で3人に1人、女性で4人に1人です。
そして、男性女性とも悪性新生物に罹患する割合が高いのは、「気管、気管支および肺」です。
また、男性は「前立腺」女性は「乳房」など、性別特有の悪性新生物で入院している点も特徴としてあげられます。
また、それぞれの年齢別の死亡率は以下の通りで、人口10万人に対してのそれぞれの年代の死亡率を表しています。
年齢 | 男 | 女 |
20〜24歳 | 48.3 | 19.3 |
25〜29歳 | 50.5 | 24.8 |
30〜34歳 | 61.5 | 32.6 |
35〜39歳 | 78.7 | 44.4 |
40〜44歳 | 116.7 | 72.6 |
45〜49歳 | 189.6 | 110.8 |
50〜54歳 | 304.9 | 168.6 |
55〜59歳 | 493.5 | 240.3 |
60〜64歳 | 814.5 | 352.1 |
65〜69歳 | 1,346.0 | 553.2 |
70〜74歳 | 2,056.4 | 850.4 |
全体的に男性よりも女性の方が、死亡率が高いという結果になりました。
例えば30〜34歳の男性が死亡する確率は、10万人に対して61.5人ですので0.0615%です。
この確率を高いととるか、低いととるかは人それぞれでしょう。
しかし、0%ではないため、家族がいる方の場合は自分が死亡した時のことを想定しておく必要があります。
共働き子供ありの夫婦に死亡保険は必要かシミュレーション
ここからは、モデルケース別に死亡保障がいくら必要なのかを考えていきたいと思います。
まずは以下のモデルケースのように共働きで子供がいた場合に、夫が亡くなったケースを想定したシミュレーションを見ていきましょう。
世帯情報
家族構成:夫、妻、子(2歳)
生活費:月35万円
夫
年齢:30歳
職業:会社員
収入(標準報酬月額):毎月35万円
妻
年齢:30歳
職業:パート
収入:毎月10万円
子
年齢:2歳
想定教育費:1000万円(全て公立、国立校と想定)
このケースの場合、毎月の生活費から妻の収入と遺族年金分を除いた額を、生命保険で用意する必要があります。
生活費-(妻の収入-遺族年金)
=35万円-(10万円-約13万円)=約12万円
※遺族年金は、以下の条件で計算しています。
・夫または妻が死亡した時点での厚生年金の加入期間:25年(300月)
・残された方の夫や妻は40年間国民年金に加入する
毎月約12万円の不足が発生する結果となりました。
現在の妻の年齢が30歳ですので、仮に年金受給開始の年齢である65歳までの不足額を計算すると、
12万円×12カ月×35年=5,040万円
という結果となりました。
これに加えて子供の教育費1000万円と、葬式費用として300万円~400万円と考えると、合計で、約6400万円のお金が必要になります。
以上の結果から、死亡保険の必要性は非常に高いといえるでしょう。
共働き子供なしの夫婦に死亡保険は必要かシミュレーション
共働きの夫婦で子供がいない場合、夫が亡くなったケースでシミュレーションをしてみます。
世帯情報
家族構成:夫、妻
生活費:月30万円
夫
年齢:30歳
職業:会社員
収入(標準報酬月額):毎月35万円
妻
年齢:30歳
職業:会社員
収入:毎月20万円
このケースの場合も、毎月の生活費から妻の収入と遺族年金分を除いた額を算出します。
生活費-(妻の収入-遺族年金)
=30万円-(20万円-約4.6万円)=約5.4万円
※遺族年金は、以下の条件で計算しています。
・夫または妻が死亡した時点での厚生年金の加入期間:25年(300月)
・残された方の夫や妻は40年間国民年金に加入する
毎月5.4万円の不足分ですので、妻が65歳となる残りの期間の35年で計算すると、
5.4万円×12カ月×35年=2,268万円
となります。
ただし、夫が亡くなった後に、妻の収入が増える可能性や、必要生活費が下がる可能性もあります。
さらに将来、再婚するケースも考えられるため、死亡保険の必要性が低い場合もあります。
ご自身にとって保障が必要かどうかは、ご家族でしっかりと話し合ってみてください。
専業主婦世帯、子供ありの夫婦に死亡保険は必要かシミュレーション
今度は妻が専業主婦で、収入が0円であった場合を考えてみたいと思います。
モデルケースは以下の通りです。
世帯情報
家族構成:夫、妻、子(2歳)
生活費:月30万円
夫
年齢:30歳
職業:会社員
収入(標準報酬月額):毎月35万円
妻
年齢:30歳
職業: 専業主婦
子
年齢:2歳
想定教育費:1000万円(全て公立、国立校と想定)
以上のケースで、夫が亡くなった場合の保障額を算出します。
生活費-(妻の収入-遺族年金)
=30万円-(0万円-約13万円)=約17万円
※遺族年金は、以下の条件で計算しています。
・夫または妻が死亡した時点での厚生年金の加入期間:25年(300月)
・残された方の夫や妻は40年間国民年金に加入する
妻が65歳になるまでの残りの期間で必要な額は、
17万円×12か月×35年=7,140万円です。
さらに子供の教育費と夫の葬式費用を合計すると、合計で8,500万円程の保障額が必要になります。
仮に子供が社会人として独立したときに生活費を下げた場合でも、6000万円ほどは必要な計算となります。
もちろんこの数字は、専業主婦の方が夫の死亡後に働かなかった場合の最低限に必要な保障額です。
夫が死亡したあと、働きに出る場合は、保険金額を下げて良い場合もあります。
ご自身が亡くなってしまった後は、どのように生活していくのかついて一度話し合う機会を設けると良いでしょう。
専業主婦世帯、子供なしの夫婦に死亡保険は必要かシミュレーション
妻が専業主婦で、子供がいない場合のモデルケースで考えてみます。モデルケースは
以下の通りです。
世帯情報
家族構成:夫、妻
生活費:月25万円
夫
年齢:30歳
職業:会社員
収入(標準報酬月額):毎月35万円
妻
年齢:30歳
職業: 専業主婦
以上のケースで、夫が亡くなった時の必要保障額は、以下の通りです。
生活費-(妻の収入-遺族年金)
=25万円-(0万円-約4.6万円)=約20.4万円
※遺族年金は、以下の条件で計算しています。
・夫または妻が死亡した時点での厚生年金の加入期間:25年(300月)
・残された方の夫や妻は40年間国民年金に加入する
妻が65歳になるまでに必要な保障額は、
20.4万円×12カ月×35年=8,568万円です。
これに夫の葬儀費用、300万円~400万円を足すと、9000万円ほどの死亡保障が必要ということになります。
しかし、実際に死亡保険でこれだけの保障が必要とは限りません。
夫が亡くなった後に妻が働いていけるケースもあるからです。
ただし、妻が病気で働けないなど何らかの事情で就業できないこともあります。
30歳を越えての女性の再就職はハードルが高い場合もあるでしょう。
以上の点から、夫が死亡した場合の保障は、葬式代のみの数百万円~今後の生活費も含めた数千万円ととても幅広いため、家族で良く話し合って死亡保障額を決めましょう。
独身の人に死亡保険は必要かシミュレーション
独身の人は、年齢や性別によって必要な保障額は異なりますが、共通して必要なお金は死後の整理資金です。
整理資金には、葬式代からお墓の購入費用などで、相場は300万円~400万円。
この金額の保障は、独身でも必要な場合が多いでしょう。
また、独身の場合でも自分の両親や兄弟と同居しており、ご自身が収入源となっている場合は、更に手厚い死亡保障が必要なケースもあります。
親と同居している場合は、親が現在どれだけの収入を得ていて、今後年金がいくら受け取れるのかを考慮したうえで、死亡保障額を決めると良いでしょう。
老後に死亡保険は必要かシミュレーション
老後の死亡保障も、独身の場合と同じく基本的には死亡時の整理資金(葬式代やお墓代)の300万円~400万円の金額を保障の目安にしましょう。
老後は、子供も独立して教育資金がかからない上に、65歳以降になると老齢年金を受給できるからです。
老齢年金で受給できる額は、家族形態や国民年金と厚生年金にどれだけの期間加入していたかによって変わります。
厚生労働省が公開している「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老後に受け取れる年金の平均額は以下の通りです。
- 「単身者:国民年金」=55,615円
- 「単身者:厚生年金」=166,668円(男性)、103,026円(女性)
- 「夫:厚生年金」+「妻:国民年金」=222,283円
- 「夫・妻:厚生年金」=269,694円
年金を受給していても、年金額が削減されない範囲で労働収入を得ているひともいらっしゃるかもしれませんので、ご自身の生活費を照らし合わせて、死亡保障が必要かどうか検討しましょう。
相続税対策に死亡保険を活用する
財産が多くある人は、死後に財産を相続する場合、相続税の金額が大きくなってしまうケースがあります。
この場合は、生命保険の非課税枠を利用して、相続税の金額を減らせます。
生命保険で受け取れる保険金は「500万円×法定相続人の数」の金額分には相続税が課税されないためです。
例えば、法定相続人が3人であった場合は、
500万円×3人=1500万円
までの税金は課税されません。
法定相続人とは、基本的に「配偶者」「子」などを指しますが、場合によっては兄弟姉妹や直系尊属になる可能性もあります。
生命保険の非課税枠を利用することで、相続税の金額を減らすことができ、大切な財産を少しでも多く家族に残すことができるので、有効に活用しましょう。
子供に死亡保険は必要かシミュレーション
子供が未成年の場合は、基本的に死亡保障は不要でしょう。
子供が亡くなった場合、ご家族の精神的ショックはとても大きいものですが、未成年の子供は家族の家計を支えていたわけではありません。
このため、子供が亡くなっても経済的に困窮する可能性は少ないため、死亡保障はあまり必要とはいえないでしょう。
子供のお守りのためという理由で少額の死亡保障に加入している方がいらっしゃいますが、保険には保険料の支払いが必要です。
その保険料負担が本当に必要なのかどうかをよく考えたうえで、保険への加入を検討しましょう。
死亡保険が必要かは価値観による
死亡保険が必要かどうかはその方の価値観によって変わります。
例えば、夫婦共働き世帯で夫が亡くなった場合に残された妻は、
「亡くなった夫の分も働こう!」
と思う人もいれば
「これ以上収入を増やすことは難しい」
と考える人もいるでしょう。
このため、最終的にいくらの死亡保障に加入すべきかどうかは、家族でしっかりと話し合って決めることが大切です。
万一の事態に備えるのが保険ですが、万一の事態になってからでは保険の相談を家族ですることはできません。
そして、十分な保険金を受け取れたとしても、大事な家族を失った悲しみが簡単に癒されるものではないでしょう。
せめて金銭的にも残された家族に負担を与えないように、死亡保障額についてしっかり話し合う機会を設けることが必要です。
まとめ
今回は死亡保険の必要性をケース別に解説しました。
あくまでここでご紹介させて頂いているのはモデルケースですので、実際にいくらの死亡保障が必要かは、ご自身の状況や価値観によっても変わります。
もし、ご自身やご家族では必要な死亡保険が分からないという場合は、お近くのFPや保険相談窓口で相談してみるのも良いでしょう。
自分や家族にとってどんな保障が最適なのか、ぜひ1度検討してみてください。