公務員の年金はいくらもらえる?いつからもらえる?種類の解説と年金シミュレーション
昔、日本の年金構造は「3階建て」と呼ばれ、公務員のみがその「3階部分」の年金を受給できていました。
ですが、平成27年から年金構造が「2階建て」の構造に切り替わり、公務員の年金事情に大きな変化が生まれています。
公務員である方でも変更内容の違いを全て把握しきれていないかもしれませんし、公務員を主人に持つ奥さんの立場としても、老後の収入が変化するのは大きな関心事でしょう。
そこでこの記事では、公務員の年金事情の変化に着目し、直近の年金制度変更と変更後のシミュレーション等をご紹介していきます。
これから公務員になる予定の方に向けてのシミュレーションも用意しましたので、参考にしてみてくださいね。
目次
公務員の年金は厚生年金に一元化された
冒頭でお伝えしましたように、長らく日本の年金制度は「3階建て」構造で成り立っていました。
3階建ての内訳としては、
1階部分…国民年金(基礎年金として、全国民の該当者に適用)
2階部分…厚生年金(民間サラリーマンに適用)、共済年金(公務員等に適用)
3階部分…職域加算(公務員等のみの付加支給分)
このようになっておりました。
参照記事⇒共済年金は厚生年金に一元化されます|地方公務員共済組合連合会
ですが、平成27年10月から、上記3階建て構造が下記2階建て構造に切り替わることとなりました。
1階部分…国民年金(基礎年金として、全国民の該当者に適用)
2階部分…厚生年金(民間サラリーマン、国家公務員、地方公務員、私学学校教職員に適用)
※職域加算は廃止
参照記事⇒共済年金は厚生年金に一元化されます|地方公務員共済組合連合会
なぜこのような一元化が行われたのでしょうか。
背景には、平成24年に閣議決定された「社会保障と税の一体改革」の大綱があります。
改正の趣旨における地方公務員共済組合連合会の説明を引用します。
今回の改正の趣旨は、多様な生き方や働き方に公平な社会保障制度を目指す平成24年2月17日の閣議決定「社会保障・税一体改革大綱」に基づき、公的年金制度の一元化を展望しつつ、今後の制度の成熟化や少子・高齢化の一層の進展等に備え、年金財政の範囲を拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性を確保することにより、公的年金全体に対する国民の信頼を高めるため、厚生年金制度に公務員及び私学教職員も加入することとし、厚生年金制度に統一することです。
この趣旨の内容から、かねてから公務員だけがより手厚く保障されている年金制度に対する国民の不満感情(公平性の欠落)があったものと思われますし、また国の財政を立て直す面でも、より多く受給されている公務員の年金部分にメスを入れることが、今後も年金制度を維持していく点でも必要だったことが容易に想像できます。
こうした背景や国民全体で見た公平感を増す施策として、公務員の年金が厚生年金に一元化されたということですね。
以前は「国家公務員共済」「地方公務員共済」「私立学校教員共済」の3種類だった
では、改めて厚生年金に一元化される前の公務員年金としてはどのような仕組みになっていたかをおさらいしていきます。
以前は下記3種類に大別されていました。
・国家公務員共済…国家公務員(官僚や裁判官、外交官等々)のための共済年金。105万人が加入。
・地方公務員共済…地方公務員(各自治体職員や公立学校の教員等々)のための共済年金。288万人が加入。
・私立学校教員共済…学校教職員のうち、地方公務員である公立学校以外に勤める方のための共済年金。48万人が加入。
※加入人数は平成23年3月末時点のもの。
参照記事⇒共済年金は厚生年金に一元化されます|地方公務員共済組合連合会
これら3つの公務員共済年金が、厚生年金に一元化されたということになります。
もらえる年金は減った?一元化により共済年金から変更したポイント
公務員がもらえる年金は、厚生年金への一元化でどう変わるのでしょうか。
変更点を含めて、詳しく見ていきましょう。
「職域加算」の代わりに「年金払い退職給付」となり受給額は減る
まず、従来の年金制度での「3階部分」にあたる「職域加算」ですが、ここがどうなったかを見ていきます。
元々職域加算は、年金被保険者(公務員の方本人)に一切の支払いがなく、終身型の年金として無料で一生涯受給できた年金でした。
例えば、
・標準報酬月額36万円
・年金加入期間40年
として見た場合に、職域加算だけで1ヶ月あたり2万円受給できていました。
上記の一元化でこの職域加算が廃止され、その代わりに、「年金払い退職給付」という仕組みが新設されています。
年金払い退職給付(法律上は「退職等年金給付」といいます。)とは、これまでの職域年金相当部分が、被用者年金制度の一元化に当たり廃止され、その代わりに民間の企業年金に相当する労使折半の年金として平成27年10月1日から創設されたものです。
職域加算が年金払い退職給付に代わった上でのポイントとしては、
・賦課方式から積立方式となり、公務員本人の持ち出し(労使折半)が発生したこと
・全て終身型で受給できていたものが、半分終身型で残り半分は有期型となり(下記図参照)、受け取り総額が減ること
・職域加算時と同内容の積立期間を設けても、毎月の受給額が下がる(下記図参照)こと
以上3点です。
標準報酬月額36万円、年金加入期間40年として見た場合に、職域加算であれば自身の持ち出しなく終身型で毎月2万円受け取れていたものが、現役時代に持ち出しが発生し、それでも毎月1.8万円の受給に減り、更にはうち半分は受給期間が有期であるということになります。
今までの恩恵の大きさから考えても、かなり減ってしまうような感覚になりますね。
年金一元化前に受給権が発生した人への策
ここまでは、年金の一元化に伴う変更点について見てきましたが、これら一元化が適用される前に年金の受給権が発生した方はどうなるのでしょうか。
こうした方に向けた、「特別支給の退職共済年金」というものと、「本来支給の退職共済年金」というものがありますので、それぞれ見ていきます。
まず、「特別支給の退職共済年金」ですが、該当者に関しては下記の通りです。
特別支給の退職共済年金は、昭和36年4月1日以前に生まれた方で次の1から3までのすべての条件を満たしているときに支給されます。
1.60歳に達していること(注1)
2.組合員期間等が25年以上あること(注2)
3.組合員期間が1年以上あること
60歳から65歳までの間に「特別支給」として年金の受給があるということですね。
なお、上記の(注1)(注2)に関しては下記内容の補足があります。
(注1)の「60歳に達していること」は、下記例外があります。
・昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日生まれの方は、61歳が支給開始となります。
・昭和30年4月2日〜昭和32年4月1日生まれの方は、62歳が支給開始となります。
・昭和32年4月2日〜昭和34年4月1日生まれの方は、63歳が支給開始となります。
・昭和34年4月2日〜昭和36年4月1日生まれの方は、64歳が支給開始となります。
(注2)の「組合員期間等が25年以上あること」は、国民年金や厚生年金の加入期間も算入できます。
また、下記例外があります。
・〜昭和27年4月1日生まれの方は、加入期間が20年以上で適用となります。
・昭和27年4月2日〜昭和28年4月1日生まれの方は、加入期間が21年以上で適用となります。
・昭和28年4月2日〜昭和29年4月1日生まれの方は、加入期間が22年以上で適用となります。
・昭和29年4月2日〜昭和30年4月1日生まれの方は、加入期間が23年以上で適用となります。
・昭和30年4月2日〜昭和31年4月1日生まれの方は、加入期間が24年以上で適用となります。
年金額については、生年月日と加入月数により変動しますが、
・定額部分(加入月数に比例し、受け取れない場合もあり)
・厚生年金相当額(本来の水準額と今までの保障額との比較でより高い額が採用)
・職域加算額(組合員として1年以上の加入で発生)
・加給年金額(一定の条件を満たした場合に発生)
上記4種類を合計した金額が支給されます。
次に、「本来支給の退職共済年金」については、下記の通りです。
本来支給の退職共済年金は、次の1から3までのすべての条件を満たしているときに支給されます。
1.65歳に達していること
2.組合員期間等が25年以上あること(注)
3.組合員期間が1月以上あって退職していること、または在職中の方で組合員期間が1年以上あること(注)組合員期間等が25年以上あることについては、特別支給の退職共済年金と同様です。
65歳からは、「本来支給されるべき」金額の退職共済年金が付与されるということですね。
60歳から支給となっている「特別支給の退職共済年金」は、共済年金と銘打っている通り支給元が共済組合連合会からとなりますが、65歳から付与される「老齢基礎年金」の支給元は日本年金機構となるため、支給元が2ヶ所からになります。
老齢基礎年金の支給も踏まえて、本来支給の退職共済年金の内訳には「経過的加算額」というものが加わり、支給されるべき金額に見合うよう調整弁のような働きをしています。
基本的には前述の特別支給の退職共済年金として受け取っていた金額と同額になり、加給年金の対象となる扶養家族がいる場合には一部加算がされた支給となる見込みです。
公務員は結局いくら年金をもらえる?
ここからは、実際に現行の制度の中で、公務員の方がいくら年金をもらえるのかをケースごとに見ていきます。
ご自身の状況ではどのような受給額になりそうか、下記のシミュレーションも参考にしながら見ていってください。
公務員がもらえる年金の種類
まず、公務員がもらえる年金の種類ですが、今までで見てきておわかりの通り、3種類に分かれています。
1つ目は、年金制度の1階部分である「老齢基礎年金」です。
2つ目は、2階部分である「老齢厚生年金」です。
3つ目は、従来の3階部分であった職域加算の代わりとなる「年金払い退職給付」です。
また、その他にも状況により「障害厚生年金」や「遺族厚生年金」が支給されることもあります。
また平成27年3月まで支払っていた分については、「旧職域部分」として従来共済年金での加入期間に応じて支給があります。
参照記事⇒共済年金は厚生年金に一元化されます|地方公務員共済組合連合会
いつから年金はもらえる?
次に、年金の受給ができる年齢についてですが、前述の「特別支給の退職共済年金」で見てきた内容と合わせると、下記の通りとなります。
・〜昭和28年4月1日生まれの方は、60歳が支給開始となります。
・昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日生まれの方は、61歳が支給開始となります。
・昭和30年4月2日〜昭和32年4月1日生まれの方は、62歳が支給開始となります。
・昭和32年4月2日〜昭和34年4月1日生まれの方は、63歳が支給開始となります。
・昭和34年4月2日〜昭和36年4月1日生まれの方は、64歳が支給開始となります。
・昭和36年4月2日〜生まれの方は、65歳が支給開始となります。
夫が公務員の場合、妻はいくらもらえるか
夫が公務員の場合の奥さんの受給額に関してですが、民間サラリーマンの妻と同様、専業主婦もしくはパートタイマーの主婦であれば、「第3号被保険者」に該当します。
第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者(夫など)に扶養される配偶者の方(20歳以上60歳未満)が対象となります。
パートタイマーの主婦の場合、扶養に入るかどうかの1つの目安として「年収130万円未満」という基準がありますが、平成28年10月1日から厚生年金の加入条件が拡大されましたので、特に大企業にパートで勤めている場合等は扶養から外れる(第3号被保険者ではなくなる)可能性があります。
参照記事⇒平成28年10月1日から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がります!|日本年金機構
ここでは、公務員の妻(専業主婦)として40年間、第3号被保険者として過ごした場合の年金受給額をご紹介しますと、月額約65,008円(年額780,100円)となります。
参照記事⇒平成31年度の年金額改定についてお知らせします|厚生労働省
公務員の年金シミュレーション
実際に、いくつか公務員の場合の年金受給額をシミュレーションしてみます。
改めて、年金額計算の上で押さえるべきポイントを整理しますと、
・昭和36年までの生まれの方は、「特別支給の退職共済年金」があり年金受給年齢が段階的になっていること
(昭和36年4月2日〜生まれの方は、一律して年金受給年齢が65歳となります。)
・平成27年3月末までの計算は「職域加算」が反映され、平成27年4月からの分は「年金払い退職給付」が反映されること
※便宜上、今回のシミュレーションにおける年金払い退職給付の「有期型」給付は、全て「20年」を選択するものとします。
・平成15年3月までと4月からで、年金受給額の計算乗率が変わっていること
なお、年金払い退職給付の計算に必要な「給付算定基礎額」は、標準報酬月額に応じても変動しますが、ここでは概算として、平均して月額8,000円積み立てているものとします。
参照記事⇒共済組合担当者のための年金ガイド|株式会社社会保険出版社
参照記事⇒実務担当者のための年金講座 第14回 地方公務員共済組合の、新3階部分・退職等年金給付算定基礎額残高通知書はこんなイメージです|くらしすと
以上を踏まえて、平成31年3月末時点でのシミュレーションをしていきます。
①昭和34年1月1日生まれの満60歳、勤続年数38年(大卒22歳で就職し、60歳で退職)、4人家族(満55歳の妻、成人した子供2人)の場合
※老齢基礎年金への加入対象期間は、勤続年数と同期間と仮定します。
※平成15年3月までの22年間の標準報酬月額を360,000円、平成15年4月からの16年間の平均標準報酬月額を530,000円と仮定します。
(標準報酬月額の等級表に関して)参照記事⇒共済年金は厚生年金に一元化されます|地方公務員共済組合連合会
(標準報酬月額の金額設定に関して)参考文献⇒図解 わかる年金 2019-2020年版 中尾幸村/中尾孝子|新星出版社 92p
この場合は、63歳から65歳までの特別支給の退職共済年金と、65歳からの老齢厚生年金等の算出が必要となります。
まず、特別支給の退職共済年金ですが、昭和24年4月2日〜昭和36年4月1日までに生まれた方の算出は下記の通りです。
年金額=厚生年金相当額+職域加算額
厚生年金相当額は、下記AとBを比較して高い方を採用します。
A.本来水準額(イとロの合計額)
イ 平成15年3月以前 平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月以前の組合員期間の月数
ロ 平成15年4月以後 平均標準報酬額×5.481/1,000×平成15年4月以後の組合員期間の月数
B.従前保障額(イとロの合計額)
イ 平成15年3月以前 平均標準報酬月額×7.5/1,000×平成15年3月以前の組合員期間の月数×0.997
ロ 平成15年4月以後 平均標準報酬額×5.769/1,000×平成15年4月以後の組合員期間の月数×0.997
上記を当てはめていきますと、
A.イ…360,000×7.125/1,000×264=677,160
A.ロ…530,000×5.481/1,000×192=約557,746
A:677,160+557,746=1,234,906
B.イ…360,000×7.5/1,000×264×0.997=約710,662
B.ロ…530,000×5.769/1,000×192×0.997=約585,292
B:710,662+585,292=1,295,954
以上より、厚生年金相当額は1,295,954円(年額)となります。
続いて職域加算額ですが、こちらも下記AとBを比較して高い方を採用します。
A.本来水準額(イとロの合計額)
イ 平成15年3月以前 平均標準報酬月額×1.425/1,000(注1)×平成15年3月以前の組合員期間の月数
ロ 平成15年4月以後 平均標準報酬額×1.096/1,000(注1)×平成15年4月以後の組合員期間の月数
B.従前保障額(イとロの合計額)
イ 平成15年3月以前 平均標準報酬月額×1.5/1,000(注1)×平成15年3月以前の組合員期間の月数×0.997
ロ 平成15年4月以後 平均標準報酬額×1.154/1,000(注1)×平成15年4月以後の組合員期間の月数×0.997
(注1)組合員期間の月数が240月(20年)未満であるときの給付乗率は、1/2を乗じます。
上記を当てはめていきますと、
A.イ…360,000×1.425/1,000×264=135,432
A.ロ…530,000×1.096/1,000×1/2×192=約55,765
A:135,432+55,765=191,197
B.イ…360,000×1.5/1,000×264×0.997=約142,132
B.ロ…530,000×1.154/1,000×1/2×192×0.997=約58,539
B:142,132+58,539=200,671
以上より、職域加算額は200,671円(年額)となります。
さらに加えて、配偶者が65歳未満の間、また子供が18歳までの間は、一定の条件を満たせば「加給年金」として年金額が上乗せされます。
昭和18年4月2日以降に生まれた本人の配偶者に対しては389,800円(年額)が加算となります。
(①の場合、子供は既に成人していますので加給年金の対象とはなりません。)
これらを踏まえると、①の場合の63歳から65歳までの特別支給の退職共済年金額は、
1,295,954+200,671+389,800=1,886,425円(年額)
となります。
次に、65歳からの老齢厚生年金の算出に移ります。
老齢厚生年金等については、下記の通りです。
老齢厚生年金=報酬比例部分+経過的加算(+加給年金)
※その他、平成27年9月までの公務員共済組合への加入期間を踏まえた旧職域加算に相当する「経過的職域加算額」と、平成27年10月より積み立てている「年金払い退職給付」を加算します。
参照記事⇒老齢厚生年金|地方職員共済組合
加えて、65歳からは老齢基礎年金も付与されますので、そちらも別途計算の上加算します。
上記用語の整理と各計算式を見ていきます。
・報酬比例部分については下記の通り計算します。
(平成15年3月31日までの期間)
平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの被保険者(組合員)期間の月数
+
(平成15年4月1日以後の期間)
平均標準報酬額×5.481/1,000×平成15年4月以後の被保険者(組合員)期間の月数
・経過的加算は、下記のことを指します。
被保険者期間のうち、国民年金の老齢基礎年金の算定の基礎とならない期間(20歳前及び60歳以後の期間等)にかかる加算です。
また、計算は下記の通りです。
1,626円×被保険者(組合員)期間月数ー780,100×被保険者(組合員)期間のうち老齢基礎年金の算定基礎となった月数/480
参照記事⇒老齢厚生年金|地方職員共済組合
参考文献⇒図解 わかる年金 2019-2020年版 中尾幸村/中尾孝子|新星出版社 92p
・加給年金は上記で見た通りです。
なお、子供に対する加算額は、1人目と2人目がそれぞれ224,300円(年額)、3人目からは1人あたり74,800円(年額)となります。
参照記事⇒老齢厚生年金|地方職員共済組合
・経過的職域加算額は、下記の通り計算します。
(平成15年3月31日までの期間)
平均給料月額×1.425/1,000(※1)×平成15年3月までの組合員期間の月数
+
(平成15年4月1日から平成27年9月30日までの期間)
平均給与月額×1.096/1,000(※2)×平成15年4月〜平成27年9月の組合員期間の月数
(※1)被用者年金一元化前後の組合員期間が20年未満の方は0.713/1,000
(※2)被用者年金一元化前後の組合員期間が20年未満の方は0.548/1,000
なお、概算として、平成15年4月〜平成27年9月までの平均給与額は、平成15年4月〜の平均標準報酬月額と同等とみなします。
・年金払い退職給付については、下記の通り計算します。
有期型の退職給付年金額=給与算定基礎額残高×1/2÷有期年金原価率
終身型の退職給付年金額=給与算定基礎額残高×1/2÷終身年金原価率
※有期年金原価率は支払い残月数に応じて変動、及び終身年金原価率は年齢に応じて変動しますし、加えて10月から翌年9月までの数字として毎年変動します。
また、給与算定基礎額も、標準報酬月額等に応じて変動しますので、ここでは下記の設定として概算の計算をします。
1.前述の通り、給与算定基礎額は月額8,000円として、65歳まで積立を継続した想定で算出します。
2.有期年金原価率は残月数240ヶ月(20年)として、終身年金原価率は65歳時点として、原価率は地方公務員共済組合連合会が発行する数字を基に算出し、有期年金原価率は19.064542、終身年金原価率は21.609620として計算します。
参照記事⇒年金払い退職給付制度に係る付与率・掛金率等について|地方公務員共済組合連合会
・老齢基礎年金については、480ヶ月(40年間)以上の加入を満額の780,100円として、国民年金(組合員含む)加入期間に応じて按分計算します。
では、それぞれ実際に計算していきます。
・報酬比例部分:下記計算により、1,234,906円(年額)…【1】
(平成15年3月31日までの期間)
360,000×7.125/1,000×264=677,160
(平成15年4月1日以後の期間)
530,000×5.481/1,000×192=約557,746
677,160+557,746=1,234,906
・経過的加算:下記計算により、361円(年額)…【2】
1,626円×456ー780,100×456/480
=741,456ー741,095
=361
・加給年金:①の場合の該当は、65歳未満の配偶者のみで、5年間のみ389,800円(年額)が加算…【3】
※配偶者が65歳を過ぎてからは、配偶者にも老齢基礎年金が支給されます。
(ここでは便宜上、夫と同期間の加入とみなして計算します。)
・経過的職域加算額:下記計算により、222,564円(年額)…【4】
(平成15年3月31日までの期間)
360,000×1.425/1,000×264=約135,432
(平成15年4月1日から平成27年9月30日までの期間)
530,000×1.096/1,000×150=約87,132
135,432+87,132=222,564
・年金払い退職給付(20年有期部分):下記計算により、8,812円(年額)…【5】
※平成27年10月から平成31年3月末までの給与算定基礎額残高:8,000(円)×42(ヶ月)=336,000(円)
336,000×1/2÷19.064542=約8,812
・年金払い退職給付(終身部分):下記計算により、7,774円(年額)…【6】
336,000×1/2÷21.609620=約7,774
・老齢基礎年金:下記計算により、741,095円(年額)…【7】
※配偶者が65歳以降は、配偶者にも⑺と同額の支給がなされます…【8】
勤続年数と同期間の加入期間としますと、38(年)×12(ヶ月)=456(ヶ月)
780,100×456/480=741,095
以上より、①の場合の65歳以降の年金受給額は下記のようになります。
65歳〜70歳(加給年金が加味されます):【1】+【2】+【3】+【4】+【5】+【6】+【7】=2,215,512円(年額)
70歳〜85歳(配偶者の老齢基礎年金が加味されます):【1】+【2】+【4】+【5】+【6】+【7】+【8】=2,956,607円(年額)
85歳〜(有期の年金払い退職給付がなくなります):【1】+【2】+【4】+【6】+【7】+【8】=2,947,795円(年額)
②昭和44年1月1日生まれの満50歳、勤続年数28年(大卒22歳で就職。60歳で退職予定)、4人家族(満45歳の妻、10歳、2歳の子供)の場合
※老齢基礎年金への加入対象期間は、勤続年数と同期間と仮定します。
※平成15年3月までの12年間の標準報酬月額を300,000円、平成15年4月からの16年間の平均標準報酬月額を440,000円と仮定します。
(①の仮定から勤続が10年少ないことを踏まえ、等級表の標準報酬月額を3段階ずつ落とした金額として仮定しています。)
参照記事⇒共済年金は厚生年金に一元化されます|地方公務員共済組合連合会
この年代の方ですと、65歳からの老齢厚生年金等のみの受給となります。
なお、下記計算は今後10年勤続をして退職した場合を想定して計算していきます。
※計算式については①と同様なので、説明は省略します。
では、それぞれ実際に計算していきます。
・報酬比例部分:下記計算により、1,060,232円(年額)…【1】
(平成15年3月31日までの期間)
300,000×7.125/1,000×144=307,800
(平成15年4月1日以後の期間)
440,000×5.481/1,000×312=約752,432
307,800+752,432=1,060,232
・経過的加算:下記計算により、361円(年額)…【2】
1,626円×456ー780,100×456/480
=741,456ー741,095
=361
・加給年金:②の場合の該当は、65歳未満の配偶者が5年間のみ389,800円(年額)が加算…【3】
加えて、下の子供が18歳になるまでの期間、6年間のみ224,300円(年額)が加算…【4】
※配偶者が65歳を過ぎてからは、配偶者にも老齢基礎年金が支給されます。
(ここでは便宜上、夫と同期間の加入とみなして計算します。)
・経過的職域加算額:下記計算により、133,896円(年額)…【5】
(平成15年3月31日までの期間)
300,000×1.425/1,000×144=61,560
(平成15年4月1日から平成27年9月30日までの期間)
440,000×1.096/1,000×150=72,336
61,560+72,336=133,896
・年金払い退職給付(20年有期部分):下記計算により、33,990円(年額)…【6】
※平成27年10月から平成41年3月末(便宜上、左記表記とします)までの給与算定基礎額残高:8,000(円)×162(ヶ月)=1,296,000(円)
1,296,000×1/2÷19.064542=約33,990
・年金払い退職給付(終身部分):下記計算により、29,987円(年額)…【7】
1,296,000×1/2÷21.609620=約29,987
・老齢基礎年金:下記計算により、741,095円(年額)…【8】
※配偶者が65歳以降は、配偶者にも⑺と同額の支給がなされます…【9】
勤続年数と同期間の加入期間としますと、38(年)×12(ヶ月)=456(ヶ月)
780,100×456/480=741,095
以上より、②の場合の65歳以降の年金受給額は下記のようになります。
65歳〜70歳(配偶者、子の加給年金が加味されます):【1】+【2】+【3】+【4】+【5】+【6】+【7】+【8】=2,613661円
70歳〜71歳(配偶者の加給年金はなくなり、子の加給年金と配偶者の老齢基礎年金が加味されます):【1】+【2】+【4】+【5】+【6】+【7】+【8】+【9】=2,964,956円
71歳〜85歳(子の加給年金がなくなります):【1】+【2】+【5】+【6】+【7】+【8】+【9】=2,740,656円
85歳〜(有期の年金払い退職給付がなくなります):【1】+【2】+【5】+【7】+【8】+【9】=2,706,666円
③平成9年1月1日生まれの満22歳、勤続年数0年(大卒1年目、60歳で退職予定)、生涯独身の場合
※老齢基礎年金への加入対象期間は、勤続年数と同期間と仮定します。
※①の仮定と②の仮定の中間くらいの想定として、定年までの平均した標準報酬月額を470,000円と設定します。
参照記事⇒共済年金は厚生年金に一元化されます|地方公務員共済組合連合会
このモデルケースの場合には、加給年金や経過的職域加算額は必要でないので、それ以外の計算をしていきます。
・報酬比例部分:下記計算により、1,174,688円(年額)…【1】
470,000×5.481/1,000×456=約752,432
・経過的加算:①、②と同内容で、361円(年額)…【2】
・年金払い退職給付(20年有期部分):下記計算により、95,675円(年額)…【3】
※平成31年4月から平成69年3月末(便宜上、左記表記とします)までの給与算定基礎額残高:8,000(円)×456(ヶ月)=3,648,000(円)
3,648,000×1/2÷19.064542=約95,675
・年金払い退職給付(終身部分):下記計算により、84,407円(年額)…【4】
3,648,000×1/2÷21.609620=約84,407
・老齢基礎年金:①、②と同内容で、741,095円(年額)…【5】
以上より、③の場合の65歳以降の年金受給額は下記のようになります。
65歳〜85歳(有期の年金払い退職給付も加味されます):【1】+【2】+【3】+【4】+【5】=2,096,226円
85歳〜(有期の年金払い退職給付がなくなります):【1】+【2】+【4】+【5】=2,000,551円
なお、上記は平成30年度、31年度の数字をベースとしたあくまでも概算としてのシミュレーションです。
それぞれの場合の詳細の年金見込み額は、「ねんきん定期便」にてチェックすることができますので、そちらも合わせて確認してみてください。
公務員もきちんと考えよう!老後の資金計画
上記シミュレーションも含めてですが、今まで見てきました通り、この度の厚生年金一元化の流れは、突き詰めて言えば良くも悪くも「年金制度における公務員の処遇を民間サラリーマンと同等に持っていく」動きと言えます。
今までは3階部分の職域加算という、追加で支払いの必要なく民間サラリーマンよりも多くの年金を一生涯受けられる等、かなり手厚い年金制度が敷かれていたので、公務員の方々はそこまで将来の不安は無かったかもしれません。
ですが、
・厚生年金への一元化で、間違いなく従来より年金額が減ること(年金払い退職給付を受けるための現役時代の支出も増えます)
・「人生100年時代」と言われるほど年々平均寿命が延びており、老後資金の重要性がより高まっていること
これらから、公務員の方でも、今後は老後資金の計画をきちんと考えていかないと、老後に辛い思いをするリスクが高くなっていると言えますね。
これを機に、老後の資金計画について家族で話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
【番外編】公務員には年金手帳が発行されない訳
本記事の内容とは少し脱線してしまいますが、補足知識として、なぜ公務員には年金手帳が発行されないのかを説明します。
結論から先に言いますと、公務員(従来の共済年金加入者)には、年金手帳ではなく「基礎年金番号通知書」が発行されていたためです。
参照記事⇒基礎年金番号は年金手帳や基礎年金番号通知書に記載されています。|日本年金機構
皆さんが加入してきた年金を将来受給できるためには、「基礎年金番号」が重要な役割を果たしますが、国民年金や厚生年金の加入者はこの番号の記載がある年金手帳の発行を受け、年金手帳で将来の年金受給の手続きを取る運びとなります。
一方で公務員の方は、年金手帳ではなく入職時に「基礎年金番号通知書」が発行されますので、将来年金の受給には基礎年金番号通知書を使って手続きをするということですね。
なお、今回の一元化に伴い、公務員の方も共済年金ではなく厚生年金に加入となりましたが、今後はマイナンバーとの連携等により、基礎年金番号さえあれば国の一元管理のもとで確実に当人へ年金が支給されるような整備がされていく見込みですので、今となっては年金手帳自体が不要になりつつあります。
参照記事⇒公務員の年金手帳が発行されない理由とは|キャリアパーク
そのため、公務員には年金手帳が発行されないのですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
冒頭でお伝えしました通り、公務員に向けた共済年金が厚生年金に一元化されるこの度の制度改正には、特に「公平性」の観点も含まれている等、今後の社会保障の存続も考えるとある種致し方ない側面もあるのが実情。
ですが、その煽りを受ける当人側となる公務員の皆さんからすれば、かなりの痛手であることも事実。
とはいえ、既に制度が切り替わっていることもあり、厚生年金の保険料率も段階的に引き上げられて(平成29年まで年々引き上がり、上限の18.3%となりました)、民間サラリーマンも従来より負担増となっていることも考えると、ここから再び年金受給者側にとって都合のいい変更は期待できないでしょう。
今私たちにできることは、従来制度との変更点を改めて理解し、現行制度で実際の受給額がどの程度になるかをきちんと把握した上で、自身でできる準備を始めていくことだと筆者は考えます。
この記事の内容を踏まえて、老後に慌てないよう今から老後資金の準備を始めていきましょう。