年金を払わないとどうなる?違法?罰則は?払わない方法と年金の重要性
日本に住む20歳以上の人は誰でも、国民年金制度への加入が法律によって義務付けられています。
国民年金の保険料を払わないままでいると、老後に年金が受け取れないだけでなく、車や不動産などの資産に手を付けられる可能性があります。
しかし「年金制度は破綻する」「年金を払うよりも自分で貯金したほうがマシ」というふうに考える人もいるのではないでしょうか。
結論から言いますと、年金制度が破綻する可能性はきわめて低く、年金をしっかり払うほうが自分で預貯金するよりも“コスパが良い”と言えるケースもあるのです。
本記事では、保険料を払わなかった場合や、保険料の免除・猶予制度についてご説明していきたいと思います。
目次
年金を払わないとどうなる?違法?払わない方法はあるのか解説
国民年金への加入は日本に住む20歳以上全員の義務であり、このことは国民年金法という法律で定められています。つまり、保険料を納付しないことは違法行為にあたります。
なお「被保険者」についても国民年金法に定めがあり、下記のいずれかに該当する人を指しています。
1.日本に住む20歳以上60歳未満
2.厚生年金保険の被保険者(第二号被保険者)
3.第二号被保険者の配偶者であって第二号被保険者の収入により生計を維持する者
参考サイト⇒国民年金 第七条
厚生労働省が発表している年金保険料未納者の数と推移について
厚生労働省は29年度の公的年金保険料未納者の数を「157万人」と発表しました(※未納者とは、24ヶ月の保険料を未納している人を指します)。
割合で見てみると、公的年金加入者6,731万人に対し、「2.3%」の人が国民年金保険料も厚生年金保険料も納めていないという現状です。
平成25年度以降の年金未納者数の推移を見ていきましょう。
平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | |
未納者数(単位:万人) | 259 | 224 | 206 | 179 | 157 |
公的年金加入者に占める割合(%) | 3.8 | 3.3 | 3.0 | 2.0 | 2.3 |
年齢別に見ると「年齢が若いほど納付率が低い」という調査結果が出ています。
年金の保険料を滞納し続けるとどうなる?
国民年金の保険料を滞納し続けると、納付督励または強制徴収の対象となります。
順序としては、まずは納付督励が実施されます。具体的には、文書や電話、戸別訪問(面接)がおこなわれます。
度重なる納付督励に応じなければ、強制徴収(財産差し押さえ)が実施されます。
ちなみに強制徴収の着手件数は、27年度からの3年間で増加傾向にあります。
27年度 | 28年度 | 29年度 | |
最終催告状 | 84,801件 | 85,342件 | 103,614件 |
督促状 | 43,757件 | 50,423件 | 66,270件 |
財産差押 | 7,310件 | 13,962件 | 14,344件 |
参考資料⇒厚 生 労 働 省 年 金 局 ・ 日 本 年 金 機 構 公的年金制度全体の状況・国民年金保険料収納対策について(概要)
もし年金の保険料を支払えない場合は、滞納するのではなく必ず早めに年金事務所または役所の窓口へ相談するべきです。
次段落からは、経済的に保険料の支払いが困難な場合に利用できる3つの制度についてご紹介します。
年金の免除、猶予期間について
「失業や収入源で年金を納める余裕がなくなった」
「学生のため年金を払う余裕がない」
このような経済的事情があり一定の条件にあてはまれば、保険料の免除・猶予制度を利用できます。
本来支払うべき期間で未納があったとしても、2年前までさかのぼって「保険料の納付を免除してください」と申請することで、支払いの義務を一定期間なくすことが可能です。
保険料免除制度
対象となる人 | 本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定以下の場合や失業した場合など |
学生の利用 | 不可 |
免除される額 | 全額、4分の3、半額、4分の1の4種類 |
制度を利用するには | 本人から申請して承認を得ることが必要 |
追納 | 可能 |
年金の受給資格期間として | カウントされる |
免除期間中に障害となったり死亡した場合は? | 障害基礎年金または遺族基礎年金が支給される |
本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定以下の場合や失業した場合など、保険料を納めることが経済的に困難な場合は、申請して承認を得ることにより納付を免除できます。
免除される額は最大で保険料全額ですが、その場合受け取る年金は全額納付した場合の半分になります。
参考サイト⇒日本年金機構 保険料を納めることが、経済的に難しいとき
納付猶予制度
対象となる人 | l 50歳未満の国民年金の第1号被保険者
l 本人及び配偶者の前年所得が一定以下の人 |
学生の利用 | 不可 |
制度を利用するには | 本人から申請して承認を得ることが必要 |
追納 | 可能 |
年金の受給資格期間として | カウントされる |
免除期間中に障害となったり死亡した場合は? | 障害基礎年金または遺族基礎年金が支給される |
制度の期限 | 平成37年6月まで |
50歳未満の国民年金の第1号被保険者であって、前年の所得が基準以下の場合、申請によって納付猶予制度を利用できます。
10年間は追納が可能ですが、追納されない限り老後に受け取る年金(老齢基礎年金)の計算にはカウントされません。
参考サイト⇒日本年金機構 納付猶予制度
学生納付特例制度
対象となる人 | 本人の所得が一定以下の学生(※家族の所得は問わない) |
学生の利用 | 可 |
制度を利用するには | 申請して承認を得ることが必要 |
追納 | 可能 |
年金の受給資格期間として | カウントされる |
免除期間中に障害となったり死亡した場合は? | 障害基礎年金または遺族基礎年金が支給される |
学生は保険料免除制度や納付猶予制度を利用できませんが、学生納付特例制度を利用することができます。
家族の所得の多い少ないに関わらず、本人の所得が基準を下回っており、かつ申請して承認を得ることにより制度を利用できるのです。
年金が支払えない場合は必ず早めに相談をすべき理由
どんな事情があれ自己判断で年金の滞納を続けていると、最終的には財産が差し押さえられてしまいます。
「年金を払う余裕がない」という状況にある場合は、早めにお近くの年金事務所または役所の国民年金担当窓口へ相談に行きましょう。
前の段落でお伝えした免除や猶予制度を活用すれば、年金を支払わない期間も未納扱いにならず、障害や死亡など万一の場合も保障されます。
年金を未納にする3つのデメリット
年金を未納するデメリットは主に3つ。
ここまで見てきた内容と重複する部分もありますが、おさらいしていきましょう。
デメリット1つ目は、老後の年金(老齢年金)が受け取れないということ。
年金の資格期間は10年ですので、その期間保険料を支払っていれば年金は給付されます。しかし、全額納めた場合と比較するとやはり金額は低くなってしまいます。
デメリット2つ目は、怪我や病気で障害が残った場合や死亡してしまった場合に給付が出ないということ。
国民年金というと老齢年金のイメージが強いという人も多いと思いますが、障害給付や遺族給付など「万が一」の場合にも年金が支給されるしくみになっているのです。年金を未納にしていると、これらの給付を受けることができません。
デメリット3つ目は、滞納が続けば財産を差し押さえられてしまうということ。
これを防ぐためにも、「今のままでは年金を支払えない」というような状況に陥ったら、必ず早めに年金事務所または役所の窓口へ相談しましょう。
年金保険料の後払いについて
追納(後納)の対象 | 追納が承認された月の前10年以内の免除等期間 |
加算はあるか? | 免除・猶予を受けた期間の翌年度から起算して「3年度目以降」の追納には、経過期間に応じた加算額が上乗せされる |
追納額も社会保険料控除の対象となるか? | 対象となる |
免除や猶予を受けて年金を払わなかった期間があると、全額年金を支払った場合より受け取る年金額が低額となります。
そのため、払わなかった期間の保険料は後払い(追納)することをおすすめします。
年金は払わないで生活保護を受けたほうが得は本当?
「年金を払うよりも生活保護を受けたほうが得じゃないか?(だったら年金を払わないほうが良いのでは?)」と考える人もいるかも知れません。
たしかに、単純に給付額のみを比較すると、生活保護で受けられる基準額のほうが基礎年金月額を上回るケースがあります。
しかし、年金と生活保護はそもそも制度の役割が異なるため、給付額のみで単純に比較すべきではありません。
ここであらためて確認しますと、生活保護とは、生活に困窮している人に対して支給される最低生活費のこと。
生活保護は1人あたりではなく、1世帯を基準に保護するかどうかが決まります。
また、生活保護はある種最後の手段であり、先に年金等他の制度を活用した上で、それでも生活に困窮する場合に申請するものです。
そして、公的年金と生活保護にはそれぞれ下記のような役割の違いがあります。
生活保護 | 資産、能力等すべてを活用しても、なお生活に困窮する者に対する最低生活の保障及び自立の助長 |
公的年金 | 高齢による稼得能力の減退を補てんし、老後生活の安定を図るもの |
参考サイト⇒生活保護制度との関係について
このように、生活保護が「最低生活を保障する水準」で設定されているのに対し、公的年金は「現役時代の収入の減退を補てんする水準」として設定されているのです。
生活保護を受けるには資産や能力などあらゆるものを活用してなお困窮した状態にあることが前提となっており、支給される保護費の学も最低水準の生活費のみです。
もちろん、親族などから援助を受けることができる場合はそれらも利用することが前提です。
生活保護を申請してから支給されるまでは厳格な調査がありますし、受給中も定期的に収入の状況報告や福祉士事務所職員の訪問調査がおこなわれます。
一方、公的年金は現役時代に構築した生活基盤や老後の備えに上乗せする形で年金が支給されます。
公的年金と生活保護については給付額でどちらか得かを比べるのではなく、それぞれの生活水準を比較すべきです。
最低生活を保障する趣旨の生活保護よりも、老後生活の安定をはかる目的で給付される公的年金を受けるほうが、生活水準としては高いと言えます。
日本が崩壊しない限り年金は破綻しない
「年金をちゃんと払ったって、年金制度自体が破綻してしまうのでは?」
こういった不安を抱いている人もいるかも知れません。
しかしながら、それはマスコミが流した表面的な情報に過ぎません。
年金制度が破綻すれば、確実に深刻な社会不安が起こります。それこそ日本という国が崩壊するレベルの社会不安です。そんな事態を防ぐために、国は絶対に年金制度を破綻させたりはしないと言えます。
年金は国民の義務!払わないという選択肢はない
ここまで見てきたように、日本に住む私たちに「年金を払わない」という選択肢はありません。
「国民の義務であるから」という理由ももちろんですが、生活のリスクや老後の生活費を個人だけで備えるにはどうしても限界があるためです。
「預貯金すれば良いだろう」と言っても、人は何歳まで生きるか予測できません。つまり、いくら貯蓄があれば安心かは誰にも分かりません。
その点、公的年金なら亡くなるまで支給を受けることができます。
また、障害を負ったり配偶者を失ったりしたときにも、障害年金や遺族年金という形で保護を受けることができます。
日本が崩壊しない限り年金制度が破綻することはほぼありませんので、現役時代から保険料をきちんと納めておくことが大切です。
年金以外の収入も若いうちから準備しておくことが非常に重要
年金制度が破綻することはほぼありませんが、年金以外の収入も若いうちから準備しておくことが非常に重要です。
なぜかと言うと、公的年金だけでは老後の消費支出をまかないきれない実態があるからです。
厚生労働省によれば、平成31年度の国民年金額は1人あたり月額65,008円。厚生年金も含むと、夫婦2人分で月額221,504円です。
これに対し、1ヶ月の生活費の平均は単身世帯で148,358円、2人以上では290,083円という調査結果があり、いずれも年金受給額をオーバーしています。
単身世帯 | 夫婦2人 | |
年金受給額(平成31年度) | 65,008円 | 221,504円 |
1ヶ月の消費支出 | 148,358円 | 290,083円 |
差額 | 83,350円 | 68,579円 |
したがって、これらの不足分は自助努力でおぎなう必要があるのです。
参考資料⇒厚生労働省 平成 31 年度の年金額改定についてお知らせします
参考資料⇒総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)
ここから先は、年金以外にも老後の備えとなるような資産運用方法をいくつかご紹介します。
気になるものがありましたら、ぜひ詳細記事も参考してみてください。
個人年金保険
個人年金保険とは、民間の保険会社などが販売する金融商品の1つです。毎月払い込む保険料をもとに、老後に年金として受け取るしくみとなっています。
公的年金と異なり任意で中途解約もできますが、その場合は元本割れするため、貯蓄が苦手な人にはかえって続けやすいとも言えます。
なお、払い込んだ保険料は所得控除の対象となり節税につながります。
株や不動産、FXなど投資
お金を増やすという観点では株や不動産、FXといった「投資」があります。
銀行に預けっぱなしにしているよりも、投資に回すことで高いリターンを得られる可能性があります。その反面、元本割れするリスクもあるため、投資商品選びは慎重さが必要です。
ideco
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは法律にもとづいて実施されている私的の年金制度であり、
掛金と運用益の合計額をもとに原則60歳から給付を受けることができます(個人年金保険と異なり中途解約は不可です)。
掛けたお金も受け取るお金も税制上の優遇措置を受け取れますが、自分で運用する必要があります。
低解約返戻金型終身保険
低解約返戻金型終身保険とは、保険を中途解約した時に戻ってくる「解約返戻金」を一定期間低くしている終身保険です。
解約返戻金が低く設定されている期間以降の返戻率は100%を超えてくることが多く、老後資金を貯蓄する手段として選ばれることも多いです。
外貨建て保険
日本円より金利の高い海外のお金で保険料を積み立てるのが「外貨建て保険」です。
資産を日本円だけでなく外貨に換えて持つことで分散投資にもなり、解約時に円安となっていれば受け取るお金は増加します。
逆に、円高となっている場合は受取るお金が減ってしまうというリスクについても理解しておきましょう。
定期預金
1か月、6か月、1年など期間を決めて預け入れる定期預金は、普通預金と比べて金利が高く設定されています。
また、満期が来るまでは原則引き出すことができないため、まとまったお金が入った場合や生活費と分けておきたいお金がある場合は、普通預金ではなく定期預金の利用を検討してみてください。
老後も働けるように資格取得やスキルを身につけておく
資格をとったりスキルを身に着けたりしておくことも、老後の備えにつながります。
資産運用方法の検討とあわせて、収入を維持できる方法についてもなるべく早いうちから考えておきたいですね。
まとめ
年金を払うことは国民の義務であり、滞納を続けると将来受け取れる年金額が減少してしまいます。
「事情があってどうしても払えない」という場合は、とにかくまずは役所へ相談に行きましょう。
一定の条件にあてはまれば免除や猶予制度を利用できます。
年金制度が破綻する可能性はきわめて低いですが、年金だけで不自由ない老後生活を送ることはできません。
個人年金保険やiDeCoなど税制優遇を受けつつ資産運用できる方法も検討していきましょう。