訪問看護は医療保険が使える?料金や回数と対象者や自己負担額をFPがシミュレーション

2024.07.16

介護保険

何かしらの病気にかかってはいるが、病院ではなく自宅で療養する場合に受けられる訪問看護。

訪問看護は自宅に看護師さんが訪問して、看護や処置を行なってくれることをいいます。

そしてこの訪問看護の費用は、介護保険や医療保険が利用でき、自己負担の額を抑えることが可能です。

そこで今回は訪問看護において、どのような場合にどのような条件で医療保険を適用できるのかを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただくことで、訪問看護で医療保険が適用されるケースがわかるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。

訪問看護で医療保険(健康保険)を使える対象者と年齢

訪問看護での医療費に医療保険と介護保険のどちらが適用されるかは、自分で選ぶのではなく、それぞれの保険で利用できる条件が異なっています。

医療保険を利用する条件は以下の通りです。

●40歳未満で訪問看護の対象者

●40歳以上65歳未満の方で「特定疾病」にかかっているたが、要介護の認定を受けていない

●65歳以上の方で要介護の認定を受けていない方、もしくは要介護の認定を受けている方のうち「厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍など)」に該当する方

などが上げられます。

基本的に訪問看護で医療保険を使う人は、疾病等にかかっていて健康状態があまり良くない方が対象です。

それに対して介護保険は、介護認定は受けているものの、疾病等にかかっていない比較的健康な方が対象であると考えると分かりやすいですね

医療保険を使った訪問看護の回数と料金はいくら?

医療保険で、訪問看護を使える料金や回数などが以下のように決まっています

医療保険の場合の訪問関数

医療保険で訪問看護を使える回数は基本的に以下の通りです。

●1日に1回、週に3回まで
●1カ所の訪問看護ステーションのみ

しかし、「厚生労働大臣が定める疾病等」に当てはまっている場合は、週に4回以上の利用が可能です。

この場合は、「特別訪問看護指示書」が発行されますが、有効期間は14日間となり、期限を延長するためには再発行が必要ですので注意しましょう。

ちなみに訪問時間は、1回の訪問あたり30〜90分です。

医療保険の料金

訪問看護の料金は、サービスの内容や時間によって金額が変わる仕組みとなっています。

そして、お住まいの地域によって金額などは変わるので注意しましょう。

訪問看護で医療保険を利用するときの自己負担額は、他の医療保険が利用できるケースと同様に1割から3割負担です。

自己負担の割合は年齢によって以下のように決められています。

●就学前の児童は2割負担
●70歳未満の方は3割負担
●70歳以上の方は1割負担(ただし所得の高い方は、2割~3割を負担)

例えば、訪問看護での医療費が1月に120,000円かかったとした場合、

●1割負担:12,000円
●3割負担:36,000円

の自己負担で済みます。

一方で、介護保険の場合は費用の1割負担で、利用できる限度額は認定されている介護等級によって変わります。

そして、上記の決められた訪問回数や訪問時間を超過した費用については、全額自己負担となるので注意しましょう。

高額療養費制度が使える

医療保険の特徴である「高額療養費制度」も使えるため、ご自身の所得の額に応じてひと月に自己負担すべき金額に上限があります。

一般的な年収(年収約370~約770万円)の方の場合、一月の自己負担額はおよそ9万円〜10万円程度におさまる場合が多いです。

さらに介護保険のように給付額に上限がないため、条件を満たす限りなんどでも医療保険から給付を受けることができます。

訪問看護の別表7と別表8とは

訪問看護を利用する人が、別表7に記載されている疾病にかかっていたり、別表8に記載された状態になっていたりすると、以下のように制限がなくなります。

●訪問看護を週に4回以上受けられ回数制限がなくなる

●複数の訪問看護ステーションからの訪問が可能になる(最高3箇所まで)

●1日に複数回の訪問が可能になる

そして、65歳以上で要介護の認定を受けている方や、40歳以上65歳未満の特定の疾病に該当し要介護認定を受けている方も、介護保険ではなく医療保険が適用されるようになります。

それでは別表7と8についてそれぞれ解説していきます。

別表7は「厚生労働大臣が定める特定疾病等」が記載されている

別表7に書かれているのは、疾病についてで、具体的には以下のものがあげられます。

1.末期の悪性腫瘍
2.多発性硬化症
3.重症筋無力症
4.スモン
5.筋萎縮性側索硬化症
6.髄小脳変性症
7.ハンチントン病
8.進行性筋ジストロフィー症
9.パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。))
10.多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群)
11.プリオン病
12.亜急性硬化性全脳炎
13.ライソゾーム病
14.副腎白質ジストロフィー
15.脊髄性筋萎縮症
16.球脊髄性筋萎縮症
17.慢性炎症性脱髄性多発神経炎
18.後天性免疫不全症候群
19.頸髄損傷
20.人工呼吸器を使用している状態

出典:厚生労働省「在宅医療その2(平成25年5月29日)

とても重い病気や、聞いたこともないほど珍しい病気が並んでいるのが特徴ですね。

別表8は「状態」

別表8に記載されているのは、回数などの制限がなくなる、利用者の「状態」が記載されています。

1.在宅悪性腫瘍患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者

2.在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者

3.人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者

4.真皮を越える褥瘡の状態にある者

5.在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者

出典:厚生労働省「在宅医療その2(平成25年5月29日)

とても分かりづらいのですが、訪問看護の利用者の中でも、特別な管理が必要な方が該当します。

訪問看護の特定疾患

特定疾患とは、40歳以上65歳未満の介護保険の第2号被保険者の方が、介護保険を適用できる疾病のことです。

特定疾病には、以下の種類があります。

●末期のがん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
●関節リウマチ
●筋萎縮性側索硬化症
●後縦靭帯骨化症
●骨折を伴う骨粗鬆症
●初老期における認知症
●進行性核上性麻痺大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
●脊髄小脳変性症
●脊柱管狭窄症
●早老病
●多系統萎縮症
●糖尿病性神経障害 糖尿病性腎症 糖尿病性網膜症
●脳血管疾患
●閉塞性動脈硬化症
●慢性閉塞性肺疾患
●両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

別表7と重複している病気もあるため、混同される方も多いです。

実際に上記の青文字の疾病は、別表7にも記載されています。

また、この特定疾病に該当していても、要介護の認定を受けていない場合は、医療保険が適用されるため注意しましょう。

訪問看護で医療保険を使う手続き方法

訪問看護で医療保険を利用するためには、公的な医療保険に加入した上で、医師によって訪問看護が必要であると認められなければいけません。

そのため、最初に主治医に相談し、訪問看護が必要であると判断される必要があります。

終的に主治医から「訪問看護指示書」が発行されると、訪問看護で医療保険が利用することが可能です。

ただし、要介護認定を受けたかたは、医療保険ではなく介護保険が優先されるため注意しましょう。

訪問看護における医療保険と介護保険の違い

訪問介護と医療保険では、利用できる条件や回数などにおいて以下の違いがあります。

対象者

医療保険は、介護保険の対象にならない方や、重い病気にかかっている方などが中心。

また、要介護の認定を受けている方でも「厚生労働大臣が定める特定疾病等(別表7)」に該当する場合も医療保険の対象です。

それに対して介護保険の対象者は、要介護の認定を受けた40歳以上の方で、主治医によって訪問看護が必要と判断された方が対象です。

ちなみに40歳以上〜65歳未満の方は、上記で説明した特定疾病に該当しなければなりません。

サービスの料金や限度額

医療保険を使った場合は、訪問看護で発生した費用のうち、年齢などに応じて1割〜3割の自己負担となります。

このため、残りの7割〜9割が医療保険からの給付で、給付の限度額はありません。

さらに、医療費の自己負担額が高額だった場合は、高額療養費制度を利用することでさらに負担額を下げることができます。

一方で介護保険は、利用料金の1割のみが自己負担で、残りの9割が保険から給付。

ただし、介護保険には支給される限度額があり、認定される介護等級によって変わるので注意しましょう。

利用できる回数の制限

医療保険を使って訪問看護を利用する場合、原則3回までで、「厚生労働大臣が定める特定疾病等(別表7)」にあてはまると4回以上利用できます。

一方で介護保険は、利用できる回数などに限度はありませんが、支給額に限度があるため、これを超えた分は全額自己負担です。

ただし介護保険の支給限度額には、訪問介護などの他のサービスの料金も含まれるため、注意しましょう。

また、介護保険を利用する人は医療保険を利用する人よりも、身体の状態が安定している方も多いため、実際の訪問看護の利用は週に1〜2回程度が一般的です。

利用できる時間

医療保険の場合は、1訪問あたり30〜90分となっていますが、一部の医療依存度が高い利用者は90分以上の訪問になる場合もあります。

一方で、介護保険を利用した場合は、20分未満、30分未満、30〜60分、60〜90分の4つから選択する形です。

利用開始の手続き

医療保険、介護保険のどちらも、主治医に「訪問看護指示書」を交付してもらって、訪問看護ステーションと契約する点は共通しています。

ただし、介護保険を適用する場合は、事前に要介護の認定を受けなればなりません。

共通していること

訪問看護において、医療保険と介護保険のどちらを利用しても、受けられる処置などはかわりません。

基本的にはどちらの保険を使った場合でも、主治医の指示書に基づいて、看護や処置が行われます。

具体的には以下のものが挙げられます。

●健康状態の観察
●病状悪化の防止・回復
●療養生活の相談とアドバイス
●リハビリテーション
●点滴、注射などの医療処置
●痛みの軽減や服薬管理
●緊急時の対応
●主治医、ケアマネジャー、薬剤師、歯科医師との連携

出典:公益財団法人 日本訪問看護財団ホームページ

このように訪問看護で医療保険を使った場合と介護保険を使った場合で違うところもあれば、同じ部分も存在します。

訪問看護で医療保険と介護保険を併用することはできる?

訪問看護において、医療保険と介護保険を併用して利用することはできずどちらか片方のみを利用可能です。

例えば、65歳以上で介護保険が使える方でも、「厚生労働大臣が定める特定疾病等(別表7)」に該当した場合は医療保険が適用されます。

また、介護保険のサービスを利用していた人の病状が悪化し、がんの末期などになった場合は医療保険の利用する形に変更されます。

このように基本的にはどちらか一方しか利用できないため、注意しましょう。

まとめ

この記事では、訪問看護において医療保険がどのように使えるのかを中心に解説してきました。

訪問看護において医療保険と介護保険のどちらが適用されるかは、利用する人の年齢や病状などによって変わります。

医療保険の訪問看護は、病気の症状や障害などの状態が重い方が中心で、介護保険は状態が比較的安定している方の利用が中心であるという違いをまず理解しましょう。

そして訪問看護で医療保険を利用する際は、ご自身の病状や状態によって、利用できる回数などが変わってくることを知っておかなければなりません。

今後、国は在宅療養に一層力を入れていく予定のため、訪問看護を利用される方は増えていくでしょう。

そのときに困らないためにも、訪問看護において医療保険をどのように利用できる確認しておくことはとても大事なことでしょう。

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