母子家庭に死亡保険(生命保険)は必要?FPがシングルマザーの死亡保険の必要性を解説
母子家庭において、死亡保険は必須と言っても過言ではありません。
ご自身が亡くなってしまうとお子さんが路頭に迷ってしまうだけではなく、きちんとした教育も受けられないために、将来に大きな影響を与えるからです。
実際は、子育てもしながら仕事も忙しく、保険の事など考えている時間もない方がほとんどなどではないでしょうか。
そこで今回はシングルマザーの方がどのような死亡保険に入るべきかを分かりやすくまとめました。
日々の生活に忙しくて保険を選ぶ時間なんてないという方に読んでいただきたい内容ですのでぜひご一読ください。
目次
母子家庭に生命保険は必要?シングルマザーの生命保険の選び方
母子家庭の方が生命保険を選ぶ際は、公的制度で得られる給付を理解したうえで、子供が育っていくにはどれだけのお金が必要かを考える必要があります。
そして、保険を選ぶ際は、医療保障よりも死亡保障を優先的に準備すると良いでしょう。
シングルマザーの方が亡くなった場合、残された子どもが育つために多くのお金が必要だからです。
公的制度で受け取れるお金は最低限にも満たない場合もあり、相続できるような財産が十分にない限りは死亡保障に加入しないとお子さまの生活に大きな影響がでる可能性があります。
子供が産まれてから高校、大学を卒業するまでに必要なお金
子供が生まれてから高校や大学に進学にするまでには多くのお金が必要になります。
以下の表をご確認ください。
公立 | 私立 | |
幼稚園 | 234,000円(702,000円) | 482,000円(1,446,000円) |
小学校 | 322,000円(1,932,000円) | 1,528,000円(9,168,000円) |
中学校 | 479,000円(1,437,000円) | 1,327,000円(3,981,000円) |
高校 | 451,000円(1,353,000円) | 1,040,000円(3,120,000円) |
※文部科学省 平成28年 子供の学習費調査 参考資料
これらの学費の合計を計算すると以下のようになります。
- 全て公立:5,424,000円
- 高校だけ私立:7,191,000円
- 中・高と私立:9,735,000円
- 小・中・高と私立:16,971,000円
- 全て私立:17,715,000円
全て私立に通わせるととても高額な学費がかかることが分かりますね。
特に小学校で私立に通わせた場合はとても高額な学費が発生します。
入学金 | 在学費用(4年間) | 合計 | |
国公立大学 | 79.7万 | 405.2万 | 484.9万 |
私立大学文系 | 96.9万 | 599.2万 | 696.1万 |
私立大学理系 | 120.1万 | 759.6万 | 879.7万 |
※文部科学省 平成28年 子供の学習費調査 参考資料
国公立の大学に通わせた場合でも、4年間で500万年近い学費がかかっています。
高校まで全て公立でも500万円以上の学費がかかっていることから、最低でも1000万円の学費がかかる計算です。
ご自身が亡くなった場合は、これだけの高額な学費をお子様が準備できる可能性は高くありません。
もちろん奨学金を利用することで、進学できる可能性があります。
しかし、無利子で借りるには、成績優秀者である必要があるだけでなく、あくまで借金ですのでお子様に返済義務が生じます。
このため、お子様が金銭面で不自由することなく、進学してもらうためにも、死亡保障に加入することが望ましいです。
シングルマザーが支援を受けられる公的支援・助成制度
シングルマザーの方が亡くなった場合は、公的遺族年金を受けることができます。
遺族年金とは、残された家族に一定額の年金を支給する制度で、遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれています。
自営業やフリーランス、パートの場合は遺族基礎年金のみの支給、会社員や公務員の場合は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給できます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金で受給できる額は、779,300円+子の加算。子の加算の金額はそれぞれ以下の通りです。
- 第1子・第2子:各224,300円
- 第3子以降:各74,800円
と決められています。
ただし、子供が遺族基礎年金を受給する場合、子の加算は第2子以降にしか行われません。
例えば、子供が1人だった場合に、親が亡くなってしまうと、779,300円が残された子供に支給されます。
これは1年間で受け取れるお金ですので、月額は約6.5万円です。
子供が2人いる場合は、779,300円+224,300円=1,003,600円ですので、1ヶ月あたり約8.4万円になります。
子供が遺族年金を受給する際は、計算方法が少し異なるため注意しましょう。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は遺族基礎年金に上乗せして受け取れるお金で、会社員や公務員、一定の勤務時間以上働いているパート・アルバイトが受給可能です。
遺族厚生年金で受給できる額の計算は少し複雑で、以下の計算式によって「報酬比例部分」を計算する必要があります。
下記の1の式によって算出された額が2の式によって算出した額を下回る場合は、2の式で算出された額が報酬比例部分の年金額となります。
1 報酬比例部分の年金額(本来水準)
(平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×3/4
2 報酬比例部分の年金額(従前額保障)
※従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したもの)
(平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬月額×5.769/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×0.997×3/4
※出典:日本年金機構
以上のように、勤務先で厚生年金に加入していた期間によって、受給できる年数が変わります。
被保険者期間が300月未満の場合は、300月として計算します。
例えば、平成15年以降に社会人になられた方で、現在の月収が20万円の方で被保険者期間が300月未満の場合は、およそ以下の金額になります。
1 本来水準の計算
200,000円×0.005481×300月×3/4=246,645円(毎月約20,553円)
2 従前額保障の計算
200,000円×0.005769×300月×0.997×3/4=258,826円(毎月約21,568円)
上記を比較すると2の方が大きいため、受給できる金額は258,826円となります。
遺族基礎年金と合計すると、子供が1人だった場合は、
779,300円+258,826円=1,038,126円(毎月86,510円)
を受給できます。
シングルマザーが死亡保険に加入する必要はある?
シングルマザーの場合は、死亡保険は必須と言っても過言ではありません。
親が亡くなった場合、遺族年金だけでは生活していくことが難しいからです。
親が亡くなってしまった場合、残された子供は親の兄弟もしくは、高齢になっている親の両親に(祖父母)に預けられることとなるでしょう。
特に両親が高齢の場合は、定年退職が近いこともあり、収入を得られたとしても子供を養っていける額をいつまで維持できるかわかりません。
年金生活が始まると、子供を育てていくのはもっと難しくなるでしょう。
遺族年金を受け取ることで、ある程度の生活費は補填できますがそればかりに期待はできません。
場合によっては、遺族基礎年金と厚生年金の両方に加入しても、毎月10万円前後しか受給できないケースも多く、この金額では生活していくことは難しいでしょう。
さらに、進学に必要な大きな金額も国の公的な補助だけでは不足する可能性が高いため、子供の将来のためにも親の死亡保障は必須と言っても過言ではありません。
シングルマザーが死亡保険に加入するメリット
シングルマザーが死亡保険に加入すると、残されたた子供がしっかり生活していける額のお金を用意できる点が最大のメリットです。
自分が亡くなると自分の手で子供を育てることができなくなりますが、保険金を残すことで子供はそのお金を使って生活していけます。
さらに、死亡保険に加入すると、生命保険料控除が受けられるため、所得税や住民税の負担が減ります。
税金の負担が減って必要な保障が得られるため、限られた金額の中で生活していく必要のあるシングルマザーにとっては、とても嬉しいですね。
シングルマザーが死亡保険に加入するデメリット
保険に加入するには、保険料を払う必要があるため、家計を圧迫する可能性があります。
死亡保険にもたくさんの種類がありますが、特に貯蓄性も兼ね備えた終身保険を検討するときは注意しましょう。
終身保険は、一定期間を経過した後に解約すると、これまで支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れるため、無駄がないように思えます。
しかし、終身保険のような貯蓄性も兼ね備えた保険は、毎月の保険料が高額になるため、家計を圧迫する可能性が高くなります。
加えて、お子様が小さい場合終身保険の保険金だけでは、今後の生活費を賄えない可能性もあります。
保険料負担が生じるデメリットは避けられないですが、必要な保障額が高額である場合は、掛け捨ての定期保険、収入保障保険に加入するとよいでしょう。
死亡保険が必要なシングルマザー
まだ子供が小さい場合は、死亡保険が必要でしょう。
子供の教育費は最低でも1000万円かかるだけでなく、生活費も考えると数千万円の保障は必要です。
この大きな金額を貯金で準備することはとても難しいため、死亡保険に加入する必要があります。
また、自分が亡くなった場合に、親族に子供を見てもらえるだけの金銭的な余裕がない場合もしっかりと死亡保障を準備しておく必要があります。
死亡保険が必要ないシングルマザー
シングルマザーでも、お子様が既に成人されている場合や、社会人として独立している場合は死亡保険の必要性は低いといえます。
子供は自分で自分の生活費を稼げるようになるため、死亡保障をわざわざする必要はないといえます。
シングルマザーの死亡保険、受取人は誰にする?
死亡保険の受取人は特定の親等内の親族であれば、年齢に関係なく指定できるため、子供にすることも可能です。
しかし、子供に指定すると「本当にお金の管理ができるのか」と不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。
そこで、受取人を子供にする以外の方法を2つご紹介します。
親などの信頼できる親族にする
受取人を親などの信頼できる親族にしておくと、自分の子供のために使ってくれる可能性が高いためおすすめです。
子供が小さいうちは、死亡保険の受取人を子供にしておき、子供がある程度成長したら受取人を子供に変更すると良いでしょう。
未成年後見人に任せる
子供を受取人にし、管理を未成年後見人に任せるという方法もあります。
子供の判断能力が充分でない場合も、未成年後見人に管理を任せることで保険金を有効に使ってもらえる可能性が高くなります。
ただし、未成年後見人に託す場合は、あらかじめ遺言書で未成年後見人を誰にするかを指定しておく必要があります。
未成年後見人になってほしい人の許可を得た上で、遺言書に記載し、指定すると良いでしょう。
万が一、ママが亡くなったら子供はどうなる?
万が一、親が死亡したら子供はどうなるのかシュミレーションしてください。
シングルマザーの家庭で子供が亡くなった場合は、母親の両親や兄弟に引き取られることになるでしょう。
しかし、ご自身のご両親は、高齢になっている場合が多く、体力も低下している中で、子供を育てることは簡単ではありません。
また、ご自身の兄弟、姉妹に預けた場合も、きちんと愛情を持って育ててくれるかどうかは保障できないでしょう。
いずれにしても、預けられた先の家族のライフプランに大きな影響を与えることは間違いありません。
また、引き取ってくれる親族が居ない場合は、未成年後見人を決めることになります
離婚した元配偶者が存命の場合は、未成年後見人も選定される可能性は否定できません。
もし、未成年後見人を予め指定したい場合は前述のように遺言にて指定しておくと良いでしょう。
死亡保険以外にもシングルマザーに保障は必要?
シングルマザーは死亡保険以外にも、様々な保険が必要な場合があります。
必要かどうかは今後のライフプランや、状況にもよるため、自分に合ったものを選びましょう。
シングルマザーと学資保険
学資保険とは、お子様が将来必要になる教育資金を確保するための保険です。
保険料を毎月積み立てていき、将来の教育資金を貯めていき、子供が大学に進学したタイミングなどで保険金を受け取ります。
さらに契約者である親が亡くなった場合は以後の保険料の支払いが免除され、保険金は予定通り受け取ることが可能です。
効率的にお金が貯められるだけでなく、親が死亡した場合も保険金の支払いが約束されるため、高い確率で子供の教育資金を準備できます。
シングルマザーと収入保障保険
収入保障保険とは、残された家族に毎月一定額の保険金が決められた年数分支払われる保険です。
例えば、保険金額を毎月20万円に設定し、満期年齢が55歳の収入保障保険に、30歳で加入したとしましょう。
仮に31歳の時に親が亡くなってしまった場合、55歳までの残り24年間に渡って毎月15万円が子供に支給されます。
このため、合計額は
20万円×12ヵ月×24年=5,760万円
の死亡保障となります。
一時金で5000万円の死亡保障を用意しておくと、残された家族はその使い道に困ってしまうかもしれません。
また、親に万一のことがなく無事に生きていけた場合、子供の成長に合わせて保障額を減額する必要があります。
収入保障保険であれば、毎月一定額の保険金が受け取れるため、お金の管理がしやすくなり、親が亡くなった年齢に応じて受給年数が変わるため、調整も必要ありません。
シングルマザーと医療保険
医療保険は、病気やケガで入院した場合に、保険金や給付金を受け取ることができる保険。
シングルマザーの場合は、自分が病気やケガで入院すると治療費がかかるだけでなく、収入も減少すると子育てに大きな影響が出ます。
このため、シングルマザーにおいて医療保険の必要性は高いように思われますが、加入の際は、公的制度を確認してから加入しましょう。
シングルマザーが受けられる公的制度
日本国民は健康保険への加入が義務付けられているため、健康保険に加入し健康保険証を持っています。
健康保険証を、受診した医療機関の窓口に提示すると、医療費の自己負担が3割負担で済みます。
また、自己負担の額はその人の所得によって、上限が決められており、超過した分は健康保険が支払ってくれる「高額療養費制度」もあります、
さらに、ひとり親家庭医療費助成制度を使うと、所得に応じて医療費の自己負担割合が下がり、場合によっては自己負担額を全額返金されるケースもあります。
ひとり親家庭医療費助成制度は、18歳以下のお子様がいる場合に受けられる医療費の助成制度で、各市町村によって運営されています。
申請方法や、助成される金額、条件などが運営されている市町村によって違うため、ぜひ確認してみてください。
シングルマザーに死亡保険が必要かは価値観による
シングルマザーで小さい子供がいる場合は、死亡保険が必要になる可能性が高いですが、加入するかどうかを最終的に判断するのは自分自身です。
中には、死亡保険に加入せずに健康に気を使って長生きする努力をした方が良いと感じる人もいるでしょう。
自分が亡くなった場合も自分の親が面倒を見てくれるため、死亡保険は
不要だと感じている人もいるかもしれません。
また、毎日の生活に精一杯で自分が亡くなった時のことなど考えられない、想像できないという人もいるでしょう。
しかし、親がいなくなってしまうと、残された子供はあなたが想像するよりも、もっと路頭に迷ってしまうこともあるでしょう。
そしてどれだけ健康に気を使っていても、交通事故で亡くなる可能性もあることから、死亡率を0%にすることはできません。
このため、シングルマザーで死亡保険が必要かどうかを考えられていない人は、ぜひ一度考えてみてください。
死亡保険に加入するとしても無理のない保険料の設定を
この記事に解説してきたように死亡保険は、とても必要性の高い保険です。
しかし、保障を得るためには、毎月の保険料の支払いが必要。この保険料の負担のせいで今の生活に大きな支障が出てしまうのは避けるべきです。
あくまで大事なのは今の生活です。
保険に加入して生活に支障が出てしまうと、やりたいことが出来なかったり、子供にさせてあげたいことが叶わなくなったります。
このため、死亡保険に加入する際は、無理のない範囲で保険料を設定しましょう。
まとめ
今回は母子家庭の死亡保険の必要性について解説してきました。
小さいお子さまがいる家庭では、死亡保険の必要性が高いので、ぜひ検討することをおすすめします。
日々の生活や仕事、子育てで忙しいかと思いますが、時間を作り、自分が亡くなってしまったときのことを考えてみるのも、大事な子育ての1つといえるのではないでしょうか。