ダウンサイジングとは~老後の不安を解消!ダウンサイジングの意味と具体的なノウハウ

2024.07.16

家計と暮らし

「老後の生活費用に不安を感じている」という方は、ダウンサイジング生活へ取り組むことをおすすめします。

「ダウンサイジング」とは、直訳すると「規模(サイズ)を縮小(ダウン)」すること。

「ダウンサイジング生活」とは、おさえられる生活費をおさえ、そのぶん生活の質を高めていくことです。

無駄な出費を省くダウンサイジング生活のスタートは早ければ早いほど良いのですが、「老後を見据えて」という理由で50代から始める方が増えています。

財布のひもをきっちり締めて極限まで切り詰める……といった節約生活とは違い、ダウンサイジング生活は無理なく続けられることがポイントですよ。

本記事では、老後に向けて生活費をダウンサイジングする具体的な方法やポイントをお伝えします。

老後にダウンサイジングをすべき4つの理由

老後にダウンサイジングすべき理由を一言でいうと「生活費をおさえられるから」です。

無駄な出費を減らし本当に必要なものにお金を使う生活が確立すれば、生活の質を高めることにもつながりますよ。

具体的な理由としては、下記4つが挙げられます。

1.これまで見過ごしていた無駄な出費をおさえることで、本当に必要なものへお金をかけられるから
2.家の中の無駄なものが減ることで、掃除や維持が楽になるから
3.本当に必要なモノ・大切なモノに囲まれることで精神的にも満たされるから
4.遺品整理がスムーズに進められるから

このように、ダウンサイジング生活は経済面だけでなく、自分の心身や家族にとってもメリットが多いのです。

年金は毎月いくらもらえるのか?受取額をシミュレーション

「老後の生活費は年金でなんとかなる」と考えている人も、具体的な受給額を調べる機会はあまりないかも知れません。

そこで、老後の年金がいくらもらえるのか、受取額をシミュレーションしてみました。

【参考】そもそも老後の生活費っていくらくらいかかる?

最低日常生活費として 月額22.0万円
ゆとりある老後生活を送るなら 月額34.9万円

さっそくシミュレーション結果を見ていく前に、まずは老後にかかる生活費用の平均を知っておきましょう。

公益財団法人・生命保険文化センターの調べによると、老後の最低日常生活費は月額平均22万円(夫婦2人の場合)。

旅行やレジャー、人付き合いや趣味にかかる費用を上乗せした、ゆとりある老後生活を送ろうと思ったら、月額平均34.9万円になります。

参照サイト⇒公益財団法人・生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?

ケース1.50歳男性(配偶者が主婦)の場合

【本ケースのモデル像】

・現在の年齢:50歳
・性別:男性
・職業:会社員
・配偶者:あり(主婦)
・平均標準報酬月額:94万円
・賞与:月収3ヶ月分
・退職予定年齢:60歳
・60歳以降の予想月収:0円

本人(世帯主) 65歳から195.30万円
配偶者 65歳から77.93万円
夫婦2人の年金受給額合計 273.2万円
1か月あたりの年金受給額 22.7万円

現在50歳の会社員が60歳に退職し、その後の月収がない場合の年金受取予想額は本人が約195万円。夫婦2人で約273万円です。

1か月に換算すると22.75万円ですので、最低日常生活費は満たしますが、ゆとりある老後生活には及ばないことがわかります。

ケース2. 50歳会社員男性(配偶者も会社員)の場合

【本ケースのモデル像】

・現在の年齢:50歳
・性別:男性
・職業:会社員
・配偶者:あり(世帯主と同条件で勤務)
・平均標準報酬月額:94万円(配偶者は26.46万円)
・賞与:月収3ヶ月分
・退職予定年齢:60歳
・60歳以降の予想月収:0円

本人(世帯主) 65歳から195.30万円
配偶者 65歳から166.36万円
夫婦2人の年金受給額合計 361.66万円
1か月あたりの年金受給額 30.1万円

世帯主と配偶者が同条件で厚生年金に加入していた場合は、1か月あたりの年金受給額は30.1万円となり、老後の最低日常生活費はカバーできます。

それでも、ゆとりある老後生活には4.8万円不足してしまいます。

シミュレーションに使用したサイト⇒保険市場 公的年金受給シミュレーション

7つの観点から生活費をダウンサイジングする

シミュレーション結果から、老後の生活費は年金だけでまかなえないことが分かりました。

対策としては「収入を増やす」「支出を減らす」のどちらか、もしくは両方が必要です。

しかし、今より収入を増やすことはなかなか難しいですよね。

一方、ダウンサイジングによって支出を減らすことは意外と簡単にできるのです。

そこでこの段落では、具体的なダウンサイジング方法についてご紹介します。

①食費をダウンサイジングする

食費をダウンサイジングするには、「必要なものまで切り詰める」というよりも「無駄を徹底カットする」という心構えが必須です。

食費や飲料は、衝動買いや無駄買いが増えがちな出費であるためです。

まずは大前提として1ヶ月の食費予算を立てましょう。

その上で、次に挙げる方法で、日々の食費のダウンサイジングを実践しましょう。

1.スーパーへ行く前に買い物リストを作成する(衝動買いや浪費対策になる)
2.空腹の時はスーパーへ行かない(出かける前に小腹を埋めておく)
3.水筒を持ち歩く(自販機の使用やコンビニへ立ち寄る頻度を減らす)
4.食事はなるべく自炊する
5.職場へ弁当を持参する曜日をつくる

特に、項目1と2が重要です。

1と2どちらにも共通していることは「想定外の買い物への防止策」であるということ。

毎月の食費が予算オーバーしてしまう原因は、予算の見積もりが低すぎるか、想定外の買い物が多すぎるかのいずれかであることがほとんどです。

前者「予算の見積もりが低すぎる」という問題についてはダウンサイジング生活を数ヶ月も続ければ適正金額を把握できてくると思いますが、後者「想定外の買い物が多すぎる」について項目1、2のように継続して対策していく必要があるのです。

②通信費をダウンサイジングする

大手キャリア3社(ソフトバンク、au、Docomo)の携帯電話・スマートフォンを利用している人は、格安スマホへの乗り換えを検討しましょう。

多くの場合、3,000〜5,000円程度の節約になります。

「でも、解約手数料がかかるし……」と心配している方もいるかも知れません。しかし解約にかかる費用を気にして、いつまでも高い通信費を払い続けるのはかえって損です。

格安スマホへの乗り換えで年間36,000円〜60,000円の節約になることを考えれば、解約費用を払ったとしてもたった数ヶ月で元を取れる計算だからです。

通信費を含む固定費は口座から自動引き落とし設定にしていることが多く、見落としがちな出費です。

その反面、1度見直せば節約効果はずっと持続します。

「格安スマホが良いのは分かるけど、やっぱり大手キャリアの通信を使い続けたい」という方も、現在加入しているプランを見直しましょう。

契約時に店員からすすめられるがまま申し込んだ有料オプションが通信費をかさあげしていることもあります。

自分で確認しようとしてもなかなか分かりづらいこともあるかと思いますので、まずは携帯ショップへ相談されることをおすすめします。

③自動車の維持費をダウンサイジングする

自動車を所有していると、車検費用や車税、保険料などの維持費が結構かかってしまうものです。

そこで最近注目が集まっている自動車のダウンサイジング方法は、「車を所有しないこと」。「カーシェアリング」という選択肢も検討してみてください。

カーシェアリングとは、必要な時だけ自動車を予約して利用するという手段。

自分で自動車を所有しないため、維持費が一切かからず大幅なコストダウンが期待できます。

通勤や生活のために自動車は必須だという方も、燃費の良い車に買い替えてガソリン代を節約したり、税金の安い車種に買い換えたりといった方法があります。

④保険をダウンサイジングする

保険をダウンサイジングするというと「今入っている保険プランを見直す」ということを考える人も多いでしょう。

もちろん定期的なプランの見直しも大切なのですが、「そもそも民間保険に加入する必要があるか?」ということも考えてみてください。

毎月高い掛け金を払い続けるよりも、自分で貯蓄しておけばじゅうぶん、ということもあるためです。

健康保険の加入者は、自己負担額が高額になったとしても一定の金額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」が利用できます。

事前に医療費が高額になることがわかっている場合は、あらかじめ認定証を申請しておけば、窓口での支払いが自己負担限度額となりますよ。

ちなみに自己負担限度額は所得に応じて段階的に異なり、月収26万円以下の人であれば1ヶ月の医療費自己負担額は57,600円が上限となります。

さらに、自己負担額は世帯で合算することが可能です。

参照サイト⇒全国健康保険協会 高額な医療費を支払ったとき

⑤住まいをダウンサイジングする

毎月の出費の中でも大きな割合を締めている住居費。

「住居費は節約できないだろう」と思いがちですが、収入や家族構成に適した住まいを選ぶことで住居費もダウンサイジングすることが可能です。

住居費の目安について「収入の3分の1」という話と聞いたことがある人は多いでしょう。しかし、この目安が参考になったのは、日本がまだ好景気だったころ。

現在ですと家賃は収入の2割〜2.5割程度を目安にすることが多いです。

たとえば手取り月収20万円なら6万2,500円、手取り月収30万円なら7万5,000円の家賃が理想だと言えます。

現在、手取り20万円の人が家賃7万5,000円の住まいに住んでいるとしたら、理想の家賃をオーバー気味ですね。

仮に家賃6万2,500円の住まいに引っ越すことで、毎月1万2,500円、1年間で15万円の節約になります。

引越し費用で30万円かかったとしても、2年で元を取れる計算です。

しかし、家賃が安い住まいが見つかるたびに引っ越しを繰り返していれば、マイナスになってしまいます。

引越し先にどのくらいの期間住めば引越し費用の元が取れるかは、住み替え時の検討項目に加えるようにしましょう。

⑥衣服をダウンサイジングする

衣服にかける費用(被服費)の節約方法は「買っても着ないものは買わない」ということ。新しい衣服を買う前には、下記3つのポイントを実践してみましょう。

1.欲しい衣服があっても即決せず一晩だけ考えてみる
2.買う前に衣服を試着する(試着できない通販では買わない)
3.気に入った衣服と似たものがファストファッションブランドのお店でも売られていないか確認してみる

被服費に関しては、「欲しい!」と思える衣服が見つかっても即決しないことが節約につながります。

自分が「これ、欲しい!」と感じる衣服は傾向が似ていることが多く、家に帰ってクローゼットを確認したらすでに似た服を持っていた、ということもあります。

また、後日ファストファッションのお店へ行ってみたら、より安くて似たデザインの服が見つかった……ということもありえます。

このような残念な事態を防ぐためにも、新たに衣服を買おうという時は、上記3つのポイントを思い出してくださいね。

⑦水光熱費をダウンサイジングする

水光熱費をダウンサイジングする方法は、大きく分けて下記2つです。

1.古い家電を新しく買い換える
2.電力会社やプランを見直す

まず検討したいのは、古い家電の買い替えです。

たとえば、部屋の照明器具を消費電力の少ないLED照明に買い換えて電気代を節約する。あるいは、冷暖房器具を省エネ効果の高い最新モデルに買い換えるなど。

こうすることによって家電の使用頻度を減らさなくても、水光熱費のダウンサイジングが期待できます。

次に検討したいのが、電力会社やプランの見直しです。

従来、一般家庭においては電気をどの会社から買うかを選ぶことはできませんでした。

しかし、2016年4月以降は電力の小売自由化が拡大し、一般家庭においても電力会社が選べるようになったのです。

電力会社を切り替える際に大がかりな工事などは不要です。

利用できる電気会社は地域によってことなるため、「電力プラン 比較」などのキーワードで、インターネット検索してみましょう。

どれくらい安くなるかを概算でシミュレーションしてくれるサイトもあります。

参照サイト⇒経済産業省 資源エネルギー庁

生活レベルをダウンサイジングする際に重要な3つのポイント

生活レベルをダウンサイジングする際は「継続できること」を前提としましょう。

無理におこなった節約の効果は一時的なものに過ぎませんが、長いスパンで見て確実にダウンサイジングできることこそ大切だからです。

ダウンサイジングを始めるにあたっては、特に下記3つのポイントを意識してください。

1.短期間で大幅にダウンサイジングしようとしない
2.一般的な目安や他の家庭の水準はあくまで「参考程度」にとらえる
3.定期的にダウンサイジング効果を検証し、見直すようにする

これら3つのポイントを踏まえ、無理なく自分のペースでダウンサイジングを継続していくことが、結果的に節約効果を最大にしてくれるのです。

ダウンサイジングをする際に参考にしたいブログ3選

ダウンサイジングをする際に参考になるブログをご紹介します。

具体的な節約方法について数多く紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。

1.ノマド的節約術

支出を減らす節約術のほか、資産運用や収入アップの方法について実体験をまじえながらわかりやすく解説してくれているブログです。

2.ミニマリストしぶのブログ

ミニマリストとは、なるべくモノを持たず、必要最小限のモノだけで暮らす人のことをいいます。

本ブログでは、著書『手ぶらで生きる』が話題となったミニマリストの「しぶ」さんが、実際に暮らす部屋や厳選した所有物を紹介。

しぶさんほどミニマルな生活を送ることはなかなか難しくても、参考になることが見つかるはずです。

3.ミニマリスト日和

夫婦でミニマリストだという「おふみ」さんのブログです。

整理収納アドバイザー1級を持つおふみさんの整理収納術や断捨離術は、ダウンサイジングをめざす方の参考になるものばかりです。

老後でも働ける業種・仕事一覧

「どうしても今の生活水準を下げたくない」、「ダウンサイジングしつつ、老後も働いて収入を得たい」という方もいるでしょう。

そんな方が老後の働き方を考える際に意識していただきたいのは、「これまでの職務や人生経験が活かせる仕事かどうか?」ということ。

若い人や年下の人と競い合うよりも、シニアであることが強みになる場で働くのが理想ですよね。

逆に、まったく経験のない仕事や、体力が求められるような職場への就職は難しいでしょう。

老後でも働ける業種・仕事には、具体的に下記のようなものがあります。

・マンション・ビルなどの管理業
・販売業
・飲食業
・清掃業
・士業
・講師、インストラクター
・事務や経理などのオフィスワーク

いずれの業種・仕事も、これまでの経験や保有資格からアピールできるポイントがあれば、採用時の武器になってくれます。

現在、現役世代だという方は、なるべく早いうちから老後に「武器」となってくれる経験を積んだり、資格勉強を始めたりと準備しておくことをおすすめします。

まとめ

ダウンサイジングの内容は生活費をおさえることですが、生活の質はむしろ高めていくことが理想です。

節約もダウンサイジングも、無理が多ければ継続できず、結局「生活費をおさえる」という目的を達成できません。

“これまで見過ごしていた無駄をおさえ、生活の質を高めることができる”。

そんなダウンサイジング生活で、老後の生活費用にまつわる不安を少しずつ解消していましょう。

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