エンゲル係数を3分で理解理想のエンゲル係数やエンゲル係数を下げる具体的な方法を解説
家計の消費支出のうち食費の割合を示す「エンゲル係数」。
一般的にエンゲル係数が高くなるほど、家計にゆとりがない状態だと言われます。
私たちは誰しも生きていくうえで飲食を欠かすことはできず、他の出費を削ることができても食費を大きく削ることは難しいためです。
このようにエンゲル係数からは世帯の生活レベルを読み取ることができます。
ということは、エンゲル係数を知ることで家計のバランスを見直すきっかけがつかめるのです。
今回は、エンゲル係数から読み取れることや、エンゲル係数が高い家庭が取り組むべき対策についてお伝えしていきたいと思います。
目次
エンゲル係数から読み取れる2つのこと
エンゲル係数から「1世帯あたりの生活レベル」や「国民全体の消費意欲」が分かります。
まずは「1世帯あたりの生活レベル」についてです。
冒頭でもお伝えしたように、一般的にエンゲル係数が高いほど生活レベルは低く、エンゲル係数が低いほど生活レベルは高いと言われます。
家計にゆとりがあってもなくても、人が生きていくうえで飲食を欠かすことはできません。
節約して食費以外の出費を削っても食費がほぼ変わらないとなると、支出全体に占める食費の割合は増加しますよね。
そのため、食費の割合が高い(=エンゲル係数が高い)世帯ほど生活にゆとりがなく、食費の割合が低い(=エンゲル係数が低い)世帯ほど生活にゆとりがある、という見方ができるのです。
エンゲル係数から読み取れるもう1つのことは、「国民全体の消費意欲」です。
たとえば、2014年度のエンゲル係数は1993年度以来21年ぶりの高水準を更新しました。
エンゲル係数が上がった背景には、消費税アップがあると考えられています。
消費税アップ以外にも、当時の円安や所得減も要因だと考えられます。
このようにエンゲル係数は、社会政策や経済面の変化が国民全体の消費意欲にどういった影響を及ぼしているのかを計る指標としても使われます。
日本におけるエンゲル係数の推移
総務省統計局は国の政策づくりに役立てるため、国民の家計収支を調査しています。
下記は、2000年(平成12年)から2018年(平成30年)にかけてのエンゲル係数を年ごとに算出したものです。
2000年(平成12年) | 23.35 |
2001年(平成13年) | 23.33 |
2002年(平成14年) | 23.30 |
2003年(平成15年) | 23.18 |
2004年(平成16年) | 23.01 |
2005年(平成17年) | 22.85 |
2006年(平成18年) | 23.09 |
2007年(平成19年) | 23.02 |
2008年(平成20年) | 23.25 |
2009年(平成21年) | 23.43 |
2010年(平成22年) | 23.28 |
2011年(平成23年) | 23.63 |
2012年(平成24年) | 23.50 |
2013年(平成25年) | 23.61 |
2014年(平成26年) | 24.08 |
2015年(平成27年) | 25.02 |
2016年(平成28年) | 25.85 |
2017年(平成29年) | 25.74 |
2018年(平成30年) | 25.75 |
参照サイト⇒総務省統計局 家計調査(家計収支編)時系列データ
アベノミクスでエンゲル係数は上昇した?下落した?
2018年1月に行われた参議院予算委員会質疑では、野党から「アベノミクス以降のエンゲル係数が上昇している」との声が上がり、話題となりました。
アベノミクスの開始は2012年12月ですが、たしかにそれ年以降のエンゲル係数は23.61%から25.85%(2015年)まで上昇しています。
エンゲル係数が上がった主な要因としては、「増税」と円安による「食料価格の急騰」が挙げられます。
以下に、2013年から2018年にかけての価格指数(食料)とエンゲル係数をまとめた表を掲載します。
価格指数(食料) | エンゲル係数 | |
2013年(平成25年) | 93.4 | 23.61 |
2014年(平成26年) | 97 | 24.08 |
2015年(平成27年) | 100 | 25.02 |
2016年(平成28年) | 101.7 | 25.85 |
2017年(平成29年) | 102.4 | 25.74 |
2018年(平成30年) | 103.9 | 25.75 |
上表のとおり、食料の価格指数上昇にともなってエンゲル係数も上昇しています。
ちなみに、2013年から2018年にかけて賃金指数はほとんど伸びていません。
参照資料⇒厚生労働省 毎月勤労統計調査 平成30年分結果確報 時系列第1表 賃金指数
アベノミクス以降の「食料品価格は上昇したが賃金はほとんど伸びない」という状況下で、エンゲル係数は上昇したのです。
高齢化とエンゲル係数の関係性
高齢世帯はその他の世帯と比較し、エンゲル係数が高くなる傾向にあります。
限られた収入から消費支出を切り詰めるとしても、食費を減らすことはできないためです。
2017年の家計調査年報によれば、1世帯あたりのエンゲル係数が25.5%であるのに対し、世帯主が60歳以上の世帯で27.1%、世帯主が65歳以上の世帯で27.4%という結果が出ています。
このことからも、高齢化はエンゲル係数上昇の1つの要因であることがわかります。
参照資料⇒総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)
日本人の食費の月額の平均額を家族構成別に紹介
消費支出全体に占める食費の割合は、家族構成やライフステージによってことなります。
たとえば、結婚後第1子出産前夫婦のみのステージでは、借家世帯が多いため「住居費」の占める割合が多いです。
それに対して出産後は、子供に関連する「被服費」や「教育費」の割合が高まります。
この段落では、全国消費実態調査結果を参照し、世帯の消費支出に占める食費の割合をご紹介していきたいと思います。
・二人暮らし(結婚)
・四人暮らし(結婚+子供2人で先に生まれた子供が未就学児)
・四人暮らし(結婚+子供2人で先に生まれた子供が中学生)
・四人暮らし(結婚+子供2人で先に生まれた子供が大学生)
二人暮らし(結婚)
結婚後夫婦のみ二人暮らしの場合、世帯の消費支出に占める食費の割合は「18.2%」です。
借家住まいの世帯が多く、「住居費」にかける割合が16.9%と他の費目に比べて多いのが特徴です。
四人暮らし(結婚+子供2人で先に生まれた子供が未就学児)
四人暮らし(子供が2人おり、長子が未就学児)の場合、世帯の消費支出に占める食費の割合は「22.2%」です。
結婚後夫婦のみの場合よりも食費の割合は4%増加したのに対し、住居費が7.8%減少しました。また、この時期から子供に関連する「教育費」が新たに発生します。
四人暮らし(結婚+子供2人で先に生まれた子供が中学生)
長子が中学生の時期、世帯の消費支出に占める食費の割合は「27.2%」です。
四人暮らしのケースで見た場合、子供が義務教育中のこの時期は、もっとも食費の割合が大きくなります。
教育費や教養娯楽費の割合も増加します。
四人暮らし(結婚+子供2人で先に生まれた子供が大学生)
長子が大学生の時期、世帯の消費支出に占める食費の割合は「18.7%」です。
長子が中学生だった頃と比較し食費が8.5%減少している一歩で、教育費の占める割合が2倍以上(26.8%)と増大していることが特徴です。
エンゲル係数の算出方法
エンゲル係数を求める式は「食費÷消費支出の総額×100」です。
ちなみに「食費」には外食も含まれます。
また「消費支出」とは、食費、住居費、光熱費、被服費など生活を維持する上でかかるお金のことをいいます。社会保険料や税金など、消費を目的としない支出は「消費支出」に含まれませんのでご注意ください。
参照サイト⇒知るぽると 消費支出・非消費支出とは
実際に自分の家のエンゲル係数を計算する方法
1ヶ月の消費支出が20万円の世帯で食費が4万円だった場合を計算してみましょう。
【計算式】4÷20×100=20
上記の式から、この世帯のエンゲル係数は「20%」だということが分かりました。
このように計算式自体はシンプルですが、実際に自分の家のエンゲル係数を計算しようと思ったら、1ヶ月の消費支出と食費を正しく把握する必要があります。
食費には外食費も含まれると先ほどお伝えしましたが、自動販売機で買ったジュース代のように細かな出費も含まれます。
「1ヶ月分のレシートを集めておき、まとめて合計しよう」と思っていても、漏れが出てしまうこともあります。
買ったものをこまめにメモしておくのも良いですが、スマホの家計簿アプリを活用するとより手軽に食費を記録できます。
エンゲル係数が高い家庭が取り組むべき3つの対策
あくまで目安ですが、エンゲル係数の理想は20〜25%だと言われます。
もし大幅にオーバーしてしまっている場合は、以下3つの対策に取り組んでみましょう。
1.食費の予算を立てる
2.外食を減らす
3.献立を決めてから買い物へ行く
3つの対策それぞれについてもう少し詳しくご紹介します。
対策1つ目は「食費の予算を立てる」ということ。これからお話する2つの対策の前提とも言えます。
要は「1ヶ月にいくらまで食費に使えるか?」ということですが、予算を立てるためにまずは家計の収支を把握しましょう。
世帯の月収がいくらあって、その内のいくらが消費支出に回せるのか。
さらに、消費支出のうち食費にかけられる費用はいくらなのか。1ヶ月の予算が決定したら、その金額内でやりくりするよう心がけます。
対策2つ目は「外食を減らす」ということ。
エンゲル係数を算出する際に使う「食費」には、外食も含まれます。
総務省の調査によると、1世帯あたりの1か月の外食費は「11,724円」。
対前年1.3%増で、支出全体の4.8%を占めています。
ちなみに、勤労者世帯だと4,137円多い「15,861円」。
対前年2.9%増で、支出全体の5.8%を占めています。
参照資料⇒e-Stat 家計調査(2018年)
外食には人付き合いや気分転換といった目的もありますので、たとえば毎週外食をしている人がいきなりゼロにすることは難しいと思います。
しかしこれまで「なんとなく」で参加していた飲み会を減らし、自炊(内食)を増やすことでも食費を下げることができるでしょう。
対策3つ目は「献立を決めてから買い物に行く」ということ。
対策1つ目で予算を立てることをおすすめしましたが、予算内でやりくりするためには1回の買い物でいくら使えるかを知り、無駄買いや衝動買いを減らす努力が必要です。
スーパーへ行ってから「今日は何を作ろうかな」と考えると、買う予定の無かったものまで買ってしまいがちです。
空腹時ならなおさらです。
ですので、食材の買い出しでは家を出る前に献立を決め、買い物リストを持っていくよう心がけましょう。
これだけで想定外の出費を減らすことが期待できます。
エンゲル係数に関するQ&A
ここからはエンゲル係数に関するよくある質問にお答えしていきたいと思います。
エンジェル係数とエンゲル係数は何が違う?
エンジェル係数とは、「家計の消費支出に占める養育費の割合」です。
・エンゲル係数……「食費」の割合
・エンジェル係数……「養育費」の割合
養育費には、学校や塾の授業料、子供用の服や靴などの費用、レジャー費用など、子供に関する費用すべてが含まれます。
理想的なエンゲル係数の目安は何%?
エンゲル係数は「20〜25%程度」であることが理想と言われることが多いです。
この割合は家計を見直す際には1つの目安となりますが、家族構成やライフスタイルが多様化するに従い、「エンゲル係数が30%を超えているからゆとりがない」「エンゲル係数が10%におさまっているから我が家は裕福だ」などのように一概には言えない場合が増えてきました。
エンゲル係数が50%を超えているのは異常?
エンゲル係数はあくまで目安ですが、もし50%を超えているとなると、改善の余地がある可能性が高いです。
外食や中食の頻度が多い場合は、食費の予算を立てて金額内でやりくりすることを目標にしたり、内食を増やしたりするなどの対策が必要です。
エンゲル係数は消費支出に占める食費の割合ですが、住居費や貯蓄費についても割合の目安があります。
こちらもあくまで目安ですが、一般的には住居費は手取りの3割、貯蓄費は手取りの1割と言われることが多いです。
他の費用項目とのバランスも考えながら、食費にかけている割合が適正かどうかを定期的に見直していきたいですね。
まとめ
エンゲル係数は家計の収支バランスを見直すきっかけとなる1つの指標です。
一般に言われている「理想値」や「適正値が」必ずしもすべての世帯にあてはまるとは言えませんが、実際にエンゲル係数を算出してみることで、これまで見落としていた気づきを得られることもあります。
定期的にエンゲル係数を見直すよう心がけ、バランスの取れた家計収支を維持していきましょう。