がん保険の必要性~FPが教える年代・職業・男女別がん保険の必要性と不要な人
がん保険が必要なのは、貯蓄が少ない人と、がんに対する不安が大きな人です。
日本人の2人に1人ががんにかかるといわれる時代。
加入しておらず、不安をもっているかもしれませんね。
しかし、がん保険は、がんになった場合は100%「よかった!」と思える保険ですが、半分の人にとっては「入っていたのに使わなかった…」となってしまう保険です。
だからこそ、貯蓄が少ない人は「経済的不安を解消して、治療に専念できるように」、がんに対する不安が大きい人は「加入していないことを、がん宣告を受けたあとに後悔しないように」、自分にとっての必要性を今一度考えてみてもいいでしょう。
またがん保険の必要性を考えるときには、年代別に気を付けたいポイントがあります。
この記事では、がんに関するデータ、年代別のポイントと、ガン保険がどのようなときに使えるのかについて徹底解説します。
「自分が、2分の1のどっちになるのか不安!」と感じているなら、まずはがん保険について必要性を考えてみましょう。
目次
がんにかかる確率〜年齢・部位・男女別に見るがんになる確率
がんは、さまざまな病気の中でも死亡率が高く、日本人の死因第1位を占めています。
平成22年の「人口動態統計」のデータでは、全死亡におけるがん患者の割合は約30%です。
つまり、日本人の3人に一人はがんで亡くなっているということになるのです。
死亡しないにしても、「日本人の2人に1人が生涯でがんになる」という統計も出ています。
国立がん研究センターによると、生涯にがんに罹患する確率は、男性で55.7%、女性で41.3%。
がんは細胞のエラーが原因で起きるといわれています。そのため、どんなに健康的な生活をしていようと、「なるときはなる」種類の病気です。そして、がんは全身のどこにできるかもわからないため、完全に回避はできません。
では、がんを種類別に見ていきましょう。
がん全体の中で、死亡率が高いのは以下の6つのがんです。
1位:肺がん(19.7%)
2位:胃がん(13.9%)
3位:大腸がん(12.8%)
4位:肝がん(8.9%)
5位:膵がん(8.1%)
6位:乳がん(3.6%)
数字は、2011年度のがんによる死亡者数357,305人のデータですが、この6種類のがんの合計はなんと67%!
もちろん他にも白血病や舌がん、子宮がんなどさまざまな種類がありますが、統計的にはこれらのがんにかかる可能性は誰にでもある…といえるのです。
がんになったときの治療費と必要金額
しかし、がんになったからといってすぐに死んでしまうわけではありません。
医学の進歩によってがんの5年生存率は大きく改善しており、早期発見をすることでがんを克服し、社会復帰ができるようになってきています。
そうなると必要になってくるのは治療費です。しっかりと治し、仕事に復帰するためには、「お金がないから治療ができない」ということを避けなくてはなりません。
そこで知りたいのは「いったい、いくら備えておけばいいの?」ということですが、がんの治療は最新になればなるほど、さまざまな治療法の組み合わせになります。
そのため一概に「これだけあれば大丈夫!」とはいい切れませんが、厚生労働省の「医療給付実態調査」から、がんの治療費の統計を、目安として見ておきましょう。
肺がんの医療費総額:627,624円
胃がんの医療費総額:643,765円
大腸がんの医療費総額:636,557円
乳がんの医療費総額:605,588円
子宮がんの医療費総額:624,498円
白血病の医療費総額:1,556,488円
一番治療費がかかるのは、血液のがん「白血病」のようです。
しかし、おおむね60~70万円程度の治療費が一般的であることが分かりました。
予想より多いでしょうか?
それとも少なかったでしょうか。
「がんになっても、60万円なんてお金は用意できない」と不安になった方も、安心してください。
実際には、公的な医療保険でカバーできる分があるので、自分で支払いをしなければいけない金額は上記より少なくなります。
公的医療保険で賄える金額
医療保険には、2種類あります。
ひとつめは「自分の意志で加入する、民間の保険会社の医療保険」です。
ここには会社で加入した共済保険や、終身保険・養老保険などに自動セットされている医療保険も含まれます。
もうひとつは、公的な国民健康保険・社会保険です。これは、国民すべてが加入するもので、「健康保険証」をもっている=加入しているということになります。
この公的医療保険に加入していると、医療費は3割負担になります。
つまりがんの治療に60万円かかったとしても、自分で負担するのはその3割、つまり18万円ということですね。
また、公的な医療保険を使って治療をすると、一定の金額を超えた分があとから払い戻される「高額療養費」の制度を利用することもできるため、自己負担額はさらに減るのが一般的です。
高額療養費で払戻を受けるときの自己負担限度額は、その人の年齢と年収によって変わります。
当然ですが、年収の高い人の自己負担限度額は高く、年収が低い人は低く設定されているため、所得が少なく治療費が支払いにくいという人にとっては、とても役に立つ制度となっています。
カンタンにシミュレーションしてみましょう。
先ほど出てきた、がんの治療に60万円かかって、3割負担で18万円を支払うことになった人のケースで考えてみます。仮にその人年収が約450万円だったとすると、「区分ウ」に該当し、80,100円が高額療養費の計算に用いられることになります。
80,100円+(600,000円-267,000円)×1%=83,430円
負担の上限額が83,430円ということは、窓口ですでに18万円を支払っていますから、その差額である96,570円が高額療養費として返還されるという仕組みになっているのです。
子供のがん保険、必要性を独身・既婚、男女別にシミュレーション
子供にもがん保険は必要でしょうか?
まず、子供は大人に比べてがんにかかる確率は低いです。がんは生活習慣病でもありますから、子供のうちはそう心配することはないでしょう。
しかし子供のがんで不安なのは、「かかった場合の進行が早い」ということです。
また治療が成功した場合も、その先の長い人生に渡って再発の心配をしなくてはなりません。
そのため本当に不安な人は、お守りという意味で入っておいてはいかがでしょうか。
保険会社によっては、0歳から加入できるプランも出ています。
また乳幼児の医療費に関しては、自治体の補助も受けられます。
まずはお住いの自治体に問い合わせて、医療費の補助が、何歳までどれくらい受けられるのかを確認してください。
そのうえで、安心材料としてがん保険に加入すればよいでしょう。
20代のがん保険、必要性を独身・既婚、男女別にシミュレーション
20代はまだまだ、がんの不安が少ない世代です。
しかし社会人になったらがん保険に加入することも無駄ではありません。
それは、がんで仕事を休まなくてはならなくなったときのためです。
20代で貯蓄が少ない場合、まとまったお金を出すことができないこともあるでしょう。
そのとき、両親に頼めたらいいのですが、それがムリな場合は金銭的な理由で治療や生活に制限が出てしまう可能性があります。
20代のがん保険を考えるときに必要なポイントをまとめてみましょう。
20代独身:頼れる人がいるかどうか。いなければがん保険の必要性は高い
20代既婚:貯蓄はあるか。パートナーに負担をかけたくないなら、加入検討はしてもいい
20代男性:自分の健康を過信せず、少しでも不安があれば加入を検討してもいい
20代女性:出産を考えているなら、結婚前の加入は必須
特に女性は20代から注意が必要です。
それは、女性特有の病気、たとえば子宮筋腫や子宮内膜症、子宮がんなどは若い世代からリスクが高く、もしがん保険に入らないままそのような病気にかかってしまったら、その後のがん保険加入が難しくなってしまうためです。
のちの結婚や出産時に、無保険のまま…では困りますよね。
20代女性は、まだ何も病気にかかっていないからこそ、がん保険に加入しておくことをおすすめします。
30代のがん保険、必要性を独身・既婚、男女別にシミュレーション
働き盛りの30代は、まだまだがんの可能性は低いですが、生活習慣が一番乱れる年代でもあります。
また、会社の健康診断での不安も出てくる年代です。
30代のがん保険を考えるときに必要なポイントをまとめてみましょう。
30代独身:貯蓄はあるか、働けなくなってもしばらく治療に専念できるかで必要性を判断
30代既婚:治療で収入が減ったとき、家族にかかる負担を計算すること
30代男性:生活習慣に注意する。健康診断を受ける前に加入を検討すること
30代女性:子宮がん検診、乳がん検診を受ける前に加入を検討すること
これは当たり前のことですが、がんになってから、がん保険に入ることはできません。
つまり、次の検診で「何か見つかった…」となったときには、もう遅いのです。
がん保険とはあくまで「絶対にがんではない状態」でしか加入できませんから、がんに関わらす病気リスクの高まる30代からは、元気なうちに検討をすることをおすすめします。
40代のがん保険、必要性を独身・既婚、男女別にシミュレーション
40代にもなると、上司が…両親が…と、がんにかかる人が身近に増えてきますし、「亡くなった」というニュースに今まで以上に不安を覚えるようになるでしょう。
また、40歳あたりから、がん保険の新規加入の保険料がグッと高くなっていきます。これは当然ながら、「かかる危険性が上がってきた」ということでもありますから、まだ未加入の場合は、まずはしっかり自分の健康状態や保険の内容と向き合ってみる必要があるでしょう。
40代のがん保険を考えるときに必要なポイントをまとめてみましょう。
40代独身:長期入院をしても仕事に復帰できるか、また貯蓄額に合わせて検討すること
40代既婚:万が一のとき家族に残せる保険があるか、がん保険以外も含めて総合的に検討すること
40代男性:がんにならないような生活を心がけること、また毎年検診を受けること
40代女性:乳がんのリスクが上がる年代なので、未加入なら早めに加入を検討すること
40歳になると、女性の乳がん検診などのチケットを配布する自治体も増えています。
不安があるなら、検診を受ける前にがん保険に加入を。
そして、自営業や主婦など、会社でしっかりした検診を受けられない場合は、自治体の補助を使ってがんを早期発見しましょう。
50代のがん保険、必要性を独身・既婚、男女別にシミュレーション
いよいよがんのリスクが高まる50代では、がんに関わらず何らかの病気治療を受けている人も多いことでしょう。
50代では、家族の有無や貯金額で、必要性は大きく変わってきます。
50代のがん保険を考えるときに必要なポイントをまとめてみましょう。
50代独身:貯蓄はあるか、無いなら検討してもいい
50代既婚:子供が大きく、万が一のときの不安が減っていたら、がん保険以外での備えも検討可能
50代男性:両親や親族にがんが多いなら、環境遺伝の可能性も考え、加入を検討
50代女性:がん以外の病気リスクも高まるため、まずは医療保険を充実させる
がんは環境遺伝の要素も大きいため、もし両親や親族にがんが多いなら、同じような生活習慣を送っている場合はがんにかかりやすくなります。
その逆もしかりです。周囲を見て、自分ががんにかかりそうだな…と思うのであれば、加入を検討してください。
ただし50代からの加入は、保険料が高くなっていくケースがほとんどです。
掛け捨てのがん保険に加入するか、別の方法で備えるかは、総合的な判断が必要です。
60代のがん保険、必要性を独身・既婚、男女別にシミュレーション
60歳からは、がんの罹患率がグッと上がります。
そのため、新規で加入するときの保険料も高くなります。
さらに60代でのがん保険で忘れてはいけないのは、「定年後は収入がなくなってしまう」ということ。
それまでは収入もあり、大きな病気で会社を休んでも手当金がもらえた…という人も、定年以降はすべての治療費を自分で賄うことになります。
また、歳を取ると身体も衰え、がん以外の病気を併発して長期入院をする…という可能性も出てきます。60歳になっても、がん保険に入っておくことは、無駄とはいえません。
60代のがん保険を考えるときに必要なポイントをまとめてみましょう。
60代独身:がん保険以外の医療保険の内容を確認、ひとりで乗り切れるかの総点検を
60代既婚:がんになったらどうするか、家族と話し合いを。そのうえで不足部分をがん保険で補う
60代男性:会社で受けられていた保障がなくなっても、大丈夫かを考える
60代女性:女性特有のがんのリスクは減る、代わりに男性と同じ種類のがんにかかる可能性が上がる
70代以上〜高齢者のがん保険、必要性を独身・既婚、男女別にシミュレーション
70歳を超えると、がんにかかるリスクは高くなりますが、治療費という観点で見ると、不安要素は減っていきます。
それは、70歳以上では医療費が2割負担に、75歳の後期高齢者からは、1割負担になるからです。
(現役時代と同じような所得がある場合は3割負担のままです)
また高額療養費の制度を見ても、70歳以上の自己負担限度額は抑えられていきますので、そのような制度を活用することで、がん治療の経済的な負担は思ったよりも低くなるケースがほとんどです。
70歳からがん保険に新規加入を検討するときは、それ以外に加入している医療保険や、貯蓄額を総合的に計算し、本当に必要かどうかを考えてみましょう。
がん保険が必要な人2つの特徴
これまで年代別に見てきましたが、ガンのリスクはすべての年代にあるものです。
がん保険が必要な人の特徴をまとめてみましょう。
貯蓄が少ない人
がんと聞くと、治療費のことばかり頭に浮かびますが、仕事ができない時期の収入減にも備える必要があります。
入院の準備に必要なお金や治療費、そしてしばらく働けないことをイメージして、「しばらくは大丈夫」と思えますか?
月に少しの保険料を払うことで、経済的不安を払しょくできるのであれば、がん保険は必要です。
がんに対する不安が大きい人
がんにかかるかどうかは分かりません。
しかし、かかったあとに「やっぱり、がん保険に入っておけばよかった…」と後悔するくらいなら、加入しておくことをおすすめします。
かからなかった人にとっては不要な保険でも、かかったあとに「要らなかった」と思う人はいないからです。
家族のがん闘病で大変さを知っている、また、病気になったら最先端の治療がしたい、という方は加入しておいてもいいのではないでしょうか。
がん保険の必要保障と特約〜最低限の必要金額と安心できる保障内容
ここまでがん保険について必要性を考えてきましたが、今一度、「がん保険」で何が保障されているかを再確認しましょう。
まず、「がん保険」と一般的な「医療保険」は違います。
これは混同されがちなのですが、医療保険とは分けて考える必要があります。
一般の医療保険の特徴
・さまざまな種類のケガや病気の入院と手術に対応、もちろんがんも含まれる
・通算の入院日数の上限がある
がん保険の特徴
・がんにしか保険金はおりない
・理由ががんである限り、入院保障は無制限
お分かりになりますか?
たとえば、一般の医療保険にしか加入していない人が胃ガンで入院した場合、もちろん医療保険から保険金を受け取れます。
しかし入院が長期化したり、再発を繰り返し、入院日数の上限を超えてしまったとき、それ以後の保険金を受け取ることができなくなってしまいます。
一般の医療保険に加入するときは、入院の日数を60日か120日のどちらかにすることが多いと思いますが、がんの再発のケースでは、「60日入院、2年後に転移が見つかってまた入院」などのケースも多くあります。
医療保険には「入院日額給費の支払い限度の日数」が定められており、現在販売されている商品では1000日か1095日が主流です。
これは、がん以外の理由も含め、何度も入院を繰り返してこの日数に達してしまったら、保険金の支払いが終了した時点で保険契約自体が消滅するということです。
では、この人が医療保険に加えてがん保険に加入していたらどうでしょうか。
再発を繰り返し、通算の支払い限度日数を超えてしまったとしても、がんで入院している限り、がん保険からは無制限に保険金を受け取ることができます。
また、がん保険には、がんに関する特約をセットすることが可能です。
特約には主に以下の種類があります
・ガン通院特約
・がん診断一時金特約
・抗がん剤、放射線治療特約
・がん先進医療特約
これらをセットするかしないかは、本人のがん治療に対する考え方によって異なるでしょう。
たとえば先進医療を受けてでも早く社会復帰がしたいなら、先進医療特約をつけてもいいでしょうし、自然療法や民間治療など保険が効かない治療法に興味がある場合は、一時金を受け取るプランに加入し、使い道を自由にしておくことも可能です。
なんにせよ、内容をしっかり確認し、保険料と相談して決めてください。
ただし、「通院特約」についてはなるべくセットすることをおすすめします。
医療の進歩にともない、がんの入院日数は年々短くなっています。
もし、定期的に通院をしながら、会社で仕事をする…という治療法を選んだとき、通院給付金は大きな助けになるからです。
がん保険が不要な人2つの特徴
もちろん、がん保険が不要な人もいます。
そのような人は、ムダな保険料を払う必要はないでしょう。
それでは、がん保険が必要な人にはどのような特徴があるでしょうか。
高収入かつ貯蓄がしっかりある人
がんにかかっても、当面の治療費をすぐに捻出でき、また収入が多少減っても生活に支障が出ないのなら、わざわざがん保険に加入する必要はありません。
今がんにかかっても、治療費と収入減のために500万円を用意できる!という人には、不要といえるでしょう。
保険はあくまで「経済的な不安に備えるため」ですから、その不安がないのなら加入は不要です。
がん以外の病気のリスクが高く、他の病気にも備えたい人
がんも怖いけど、糖尿病や心疾患のリスクもある…また趣味や仕事の関係で、病気よりケガに対する不安が大きい…という方は、ピンポイントでがんにだけ備えるのではなく、医療保険を充実させた方がいいでしょう。
そのとき、医療保険に「がん診断一時金」などをセットできるのであれば、検討してみてください。万が一がんになったときの収入補てんとして、役に立つでしょう。
がん保険が必要か不要かは人によって様々
2人に1人がかかるがん。
しかし、これこそ「神のみぞ知る」結果です。
だからがん保険に入るかどうかは、必要か不要かという条件的な問題に加え、「自分ががん治療に対してどう考えているか」で決めるしかありません。
たとえば300万の貯蓄があっても、それは本来楽しみのために使いたい…と考えているか、がんになったときの治療費に充ててもいい…と考えているかで、その人にとっての保険の必要性は大きく変わりますよね。
がんは再発のリスクもあり、長引く病気です。
しかし昔のように、すぐに死に直結するものでもありません。
だからこそ、治療費をどうするかということは、がんになったあとに「どう生きるか」に関係します。
人からいわれて加入して助かった…というケースもありますし、たくさん加入していてもがんにならずに終わることもあります。
それを踏まえたうえで、自分が納得できる選択をするようにしましょう。
まとめ
がんの治療には、公的な制度からの補助もあるため、意外と少ない治療費で済むことが分かりました。
そうはいっても、再発や転移のリスク、そして治療による収入減のことを考えると、がん保険は不要とはいいきれません。
年代別の考え方やリスクを十分知ったうえで、自分ががんになったらどのように治療がしたいかを考えてみましょう。
また、現在加入の一般の医療保険があるならば、不足している部分をうまくカバーできるよう、がん保険を検討してみることをおすすめします。