がん保険の受取人は本人・配偶者誰にする?FPが教える年末調整や税金と受取人の関係

2024.07.16

がん保険

がん保険の受取人とは、給付金を受け取る人物のことで、家族ならば誰でもなれます。

一般的に、一時金や治療給付金は税金の対象となりませんが、死亡保険金は契約者・受取人・被保険者の組合せによっては課税対象となってしまいます。

また、がんは精神的負担が大きい病気のため、受取人を誰にするのか慎重に決めなければいけません。

そこで記事では、がん保険と受取人の関係について詳しく解説していきます。

具体的には、がん保険の契約基礎知識、受取人と税金の関係とシュミレーション、受取人を本人・配偶者・子供にするメリットデメリットなどです。

それではさっそく見ていきましょう!

目次

がん保険の受取人は誰にする?まずはがん保険の契約について理解しよう!

保険契約をする時、契約者・被保険者・受取人を決める必要があります。

加入者が全てになる必要はなくて、例えば契約者は親、被保険者は子どものようにも加入できるのです。

そして、がん保険では受取人を慎重に選ばなければいけません。

がんはデリケートな病気であり、受取人を被保険者にすると、被保険者は望まなくてもがんを告げられるからです。

ここからは、がん保険の契約について理解し、そして受取人を誰にするのか考えていきたいと思います。

がん保険における契約者とは

がん保険における契約者とは、保険の名義人のこと。

保険料の支払いをしたり、解約などの各種手続きができる人です。

また、解約返戻金があるがん保険だと、解約返戻金の受取人は契約者となるのが一般的。

成人の場合だと、契約者=被保険者となるケースがほとんど。

しかし、まだ子供が成人していなければ、親が代わりに契約者となることもあります。

がん保険における被保険者とは

被保険者とは、保障対象となる人物のことです。

がん保険では、がんが原因で被保険者が入院や手術を経験すると、給付金が支払われます。

例えば、契約者と被保険者が異なる人物で、契約者に何か起きても給付金は受け取れません。

契約者はあくまでも保険の名義人であり、被保険者こそが保障の対象だからです。

がん保険における受取人とは

すでにお分かりだと思いますが、受取人とは保険金を受け取る人のこと。

被保険者に何かあれば、保険会社から「受取人」に給付金が支払われます。

がん保険において、受取人を決めるポイントは以下の通り。

・被保険者はがんの告知をされても平気かどうか
・死亡一時金があるかどうか

特に、保障内容に死亡一時金が含まれていれば、契約者・被保険者・受取人の組み合わせにより税金の対象となるので要注意です。

がん保険の受取人になれる人の条件は基本的に二親等以内の親族

がん保険の契約者・受取人になれるのは、基本的に被保険者の二親等以内の親族に限られます。

二親等以内とは、被保険者の親や配偶者、祖父母、兄弟、子ども、孫などのことです。

そのため、たとえ数十年来の付き合いの親友だとしても、契約者や受取人にはなれません。

あくまでも、近い関係の親族だけが契約に関われます。

がん保険の受取人、契約者、被保険者と税金の関係

ここからは、契約者・被保険者・受取人の組み合わせと税金の関係性について解説します。

結論から言えば、どの組み合わせになろうと、一般的ながん保険では税金は発生しません。

しかし、死亡保険金のあるがん保険なら、税金の対象となる可能性があります。

まずは、税金がかかる保険金とそうでない保険金を見て、その後に3つのケースで税金のシュミレーションをしたいと思います。

税金がかかる保険金とかからない保険金

がん保険で受け取れる一時金は主に以下の通り。

・診断一時金

がんと診断された時点で受け取れるまとまった給付金。

・入院給付金

がん治療を目的とした入院をした時に支払われる給付金。

・手術給付金

がん治療を目的とした手術を受けた時に支払われる給付金。

・通院給付金

がん治療を目的に通院した時に支払われる給付金。

・がん治療給付金

抗がん剤治療や放射線治療、先進医療などを受けた時に支払われる給付金。

まだまだ様々な給付金がありますが、一般的なものは上記の通り。

これらの給付金で、受け取った時に税金のかかるものはありません。

一般的に、入院や手術など治療を目的に支払われる給付金は、非課税なのです。

それは、がん保険の大きな魅力である一時金も例外ではありません。

では、がん保険で税金がかかる給付金はないのでしょうか?

いくつかの商品には、被保険者が死亡した時に支払われる死亡保険金があったり、解約した時に解約返戻金が支払われるものがあったりします。

死亡保険金と解約返戻金は、課税の対象となるのです。

そして、契約者・被保険者・受取人の組み合わせでかかる税金が異なります。

そのため、死亡保険金もしくは解約返戻金のあるがん保険に加入する際は、注意して組合せを決めなければいけません。

ここからは、よくある組合せのケースでシュミレーションをしていきます。

契約者:夫・被保険者:夫・受取人:妻のケースでシュミレーション

まずは契約者と被保険者が同じで、受取人だけ異なる組合せ。

このケースだと、解約返戻金の受取人は契約者である夫、死亡保険金の受取人は妻となります。

まずは、解約返戻金から見ていきましょう。

解約返戻金は契約者が受け取るため、所得税の対象となります。

しかし、解約返戻金額が支払った保険料よりも少ない場合は、課税の対象とはなりません。

がん保険の解約返戻金で、解約返戻金額>総支払保険料とは絶対にならないので、解約返戻金にかかる税金は発生しません。

では、死亡保険金はどうでしょうか?

まず注目ポイントは、契約者と被保険者が同一人物になっています。

そのため、このシュミレーションでは、贈与税ではなく、相続税が該当するのです。

そして、受取人は配偶者の妻となっているため、生命保険の非課税が適用されます。

生命保険金の非課税とは、「500万円×法定相続人の数」が非課税限度額となる制度のことです。

例えば、法定相続人が妻と子の2人だとしましょう。

すると、500万円×2の1,000万円までが非課税となります。

例えば、900万円の死亡保険金なら無課税で、1,200万円なら200万円が課税の対象となるのです。

がん保険の死亡保険金はそれほど多くはないので、このケースで税金を心配する必要はないように思われます。

ただ、加入前に死亡保険金額を確認して、税金が発生するかどうか調べてみるのがおすすめです。

【相続税の納付期限】

相続税の申告と納付は、相続が判明した日の翌日から10か月以内に行う必要があります。

申告書の提出は、被保険者の死亡時の住所を管轄する税務署です。

契約者:夫・被保険者:妻・受取人:夫の場合のケースでシュミレーション

次は、契約者と受取人が同じで、被保険者が異なるパターンです。

これは、夫が妻ががんになった時のために保険に加入した組合せですね。

契約者と被保険者が異なり、契約者と受取人が同一人物のため、所得税がかかります。

所得税の計算方法は以下の通りです。

1.総収入金額ー保険料総支払額ー特別控除額50万円=一時所得金額

2.一時所得金額×2分の1=一時所得として課税される金額

具体的な金額で見ていきましょう。

保険料300万円を支払って、1,500万円の死亡保険金を受け取ったとしましょう。

すると、一時所得金額は1,500万円ー300万円ー50万円の1,150万円となります。

一時所得金額の2分の1が課税金額となるため、575万円が所得税として課税されるのです。

所得税の税率は課税される所得金額によって異なります。

575万円の場合は税率20%で控除額は63万6千円なので、税額は以下の通りです。

575万円×0.2ー63万6千円=514,000円

このシュミレーションでは、51万4千円が所得税となります。

【所得税の納付期限】

所得税の納付期限は、死亡保険金を受け取った翌年の2月1日から3月15日までです。

申告書は、提出時の住所を管轄する税務署となります。

契約者:夫・被保険者:妻・受取人:子供の場合のケースでシュミレーション

最後に見ていくのは、契約者・被保険者・受取人が全て異なるパターンです。

契約者と被保険者が異なり、契約者と受取人が異なるため、贈与税がかかります。

贈与税の控除額は110万円で、1月1日から12月31日までに取得した贈与財産を合わせて計算されます。

例えば、その年に受け取ったのが死亡保険金1,000万円だけなら、1,000万円ー110万円の990万円が課税対象となるのです。

贈与税の税率と控除額もまた、基礎控除後の課税価格によって異なります。

990万円の場合は税率40%、控除額125万円となるため贈与税は以下の通りです。

990万円×0.4ー125万円=271万円

支払い贈与額は271万円となります。

【贈与税の納付期限】

贈与税の納付期限は、死亡保険金を受け取った翌年の2月1日から3月15日までです。

申告先は、贈与を受けた人が住む地区を管轄する税務署。

がん保険の受取人によって年末調整の生命保険料控除も変わる?

がん保険の保険料は、生命保険料控除の対象となります。

そのため、会社員の方は年末調整の時期に、所得控除を受けられるのです。

実は、生命保険料控除と受取人の関係は重要であり、受取人によっては控除を得られない可能性があります。

ここからは、年末調整とがん保険受取人の関係性について解説します。

年末調整とがん保険の受取人の関係

生命保険料控除と言っても、一般生命保険料控除・介護医療保険控除・個人年金保険控除の3種類があります。

がん保険は介護医療保険控除に含まれ、最大で年4万円の控除を受けられるのです。

介護医療保険控除の場合、控除を受けるためには受取人が本人もしくは配偶者、その他親族である必要があります。

一般的にがん保険の受取人は、親族しかなれないため、保険料控除は受けられるでしょう。

がん保険の受取人を本人にするメリットとデメリット

がん保険の受取人は、本人にするのが一般的です。

ただし、それにはメリットもあれば、デメリットもあります。

まずは、がん保険の受取人を本人にした時のメリットを見ていきましょう。

がん保険の受取人を本人にするメリット

1.給付金の受取がスムーズ

受取人を本人にすることで、給付金の申請がスムーズになります。

受けた治療法が分かるため、必要な給付金を即座に申請可能。

がん治療は高額な費用が必要となります。

そのため、すぐに給付金を申請できるのは大きなメリットとなるでしょう。

2.各生命保険会社の無料サービスを利用できる

生命保険会社の中には、がん保険加入者のための無料サービスを用意しているところがあります。

ほとんどのサービスは、がん罹患者を対象としているため、被保険者ががんであることを知っている必要があるのです。

受取人を本人以外にしても利用可能ですが、もしがんを本人に告げるつもりがないのならば、無料サービスは利用できないでしょう。

3.家族にがんだと知られない

もしかすると、家族に心配かけないために、がんを隠しておきたいという方もいるでしょう。

そのような方は、受取人を本人にする必要があります。

がん保険の受取人を本人にするデメリット

がん保険の受取人を本人にするデメリットは、本人ががんを知ってしまうことです。

がんの生存率は高くなっているとはいえ、がん宣告されると精神的負担が大きくなるでしょう。

特に、がん診断を受けた時点でもらえる一時金は重要です。

そのため、頃合いを見て本人にがんを告げるということはできません。

がん保険の受取人を配偶者にするメリットとデメリット

がん保険の受取人を配偶者にするメリット

がん保険の受取人を配偶者にするメリットは、被保険者と子どもに負担をかけないということです。

がんの罹患率は50歳代から本格化します。

そのころは、子どもは成人して家庭を持っていることも多いでしょう。

仕事や育児をこなしつつ、被保険者の治療内容を把握し、がん保険の請求をするのは大変です。

特に、遠方に住む場合は、なかなか骨の折れることになるでしょう。

その点、配偶者は常に被保険者と一緒にいるため、保険金の請求もそれほど大変ではありません。

被保険者と子どもに大きな負担をかけないのが、配偶者を受取人とする最大のメリットです。

がん保険の受取人を配偶者にするデメリット

あまり考えたくはありませんが、配偶者と離婚した場合、保険金の受け取り手続きが少しややこしくなります。

もちろん、契約中でも受取人の変更は可能です。

しかし、変更手続きのややこしさなどを考慮すると、離婚の可能性があるのはデメリットと言えます。

がん保険の受取人を子供にするメリットとデメリット

がん保険の受取人を子供にするメリット

がん保険の受取人を子どもにすることで、相続税の負担が軽くなる可能性があります。

例えば、被保険者が亡くなって死亡保険金が配偶者に支払われたとしましょう。

この時、配偶者は死亡保険金にかかる税金を支払うことになります。

そして、配偶者が死亡保険金を使い切らずに亡くなると、残った死亡保険金は子どもが受け継ぐのです。

その時にまた、子どもは相続税の支払いをしなければいけません。

つまり、同じ財産を受け継ぐのに、2回も相続税を支払う必要があるのです。

それに対して、子どもを受取人にすると、相続税の支払いは1回となります。

ただし、これは死亡保険金のあるがん保険での話です。

一般的な治療給付金だけのものなら、このメリットは得られません。

がん保険の受取人を子供にするデメリット

がん保険の受取人を子供にするデメリットは2つあります。

まずは、すでに述べたように保険金請求が負担になる可能性があること。

働きながら、家庭を持ちながら、遠方に住みながら、毎月のように保険金請求するのは大きな負担となります。

2つ目のデメリットは、未成年は保険金請求ができないということ。

原則的に未成年者が受取人で、保険金請求の必要性に迫られたら、親権者や後見人などの法定代理人が代わりに行います。

請求書のほか、公的書類などの提出も必要となるため、手続きが複雑になってしまいます。

がん保険の受取人の確認方法と変更方法

がん保険の受取人は確認できれば、変更もできるのです。

そのため、記事を読んで受取人の確認や変更がしたくなっても、安心して行えます。

ここからは、アフラックとチューリッヒ生命を例に、がん保険受取人の確認方法と変更方法を紹介しましょう。

がん保険の受取人の確認方法

どの生命保険会社のがん保険に加入していようと、簡単に受取人を確認する方法があります。

それが保険証券、もしくは生命保険料控除証明書を見るというもの。

保険証券とは、保険契約内容の詳細が記されたもので、保険に加入したら必ず受け取ります。

生命保険料控除証明書とは、10月頃から12月にかけて生命保険会社から送られてくる、保険料控除を受けるために必要な書類です。

これらのどちらかを見るだけで、受取人の確認ができます。

その他にも、各保険会社は受取人の確認方法を用意しているのです。

アフラックの場合は、スマホやパソコンからアクセスできる、契約者専用サイトを用意しています。

そこにログインすると、がん保険の受取人だけではなく、保険種類や保険料などの確認も可能。

チューリッヒ生命もまた、My Zurichという契約者専用サイトを用意しています。

そこにログインすると、契約照会が行えます。

がん保険の受取人の変更方法

受取人の変更方法は各保険会社によって異なります。

ここでは、アフラックとチューリッヒの受取人変更方法を紹介しましょう。

アフラック

アフラックで受取人を変更する方法は、インターネット・店頭・コールセンターのいずれかで手続きをする必要があります。

インターネットの手順は以下の通り。

1.契約者専用サイトへログイン

2.「各種お手続きページ」から「給付金・保険金受取人変更」をクリックし、必要事項を記入

3.送られてきた書類に必要事項を記入して返送

4.手続き完了

コールセンターの場合は、電話をすると必要書類が送られてきます。

書類に必要事項を記入して、返送すると完了です。

チューリッヒ生命

チューリッヒ生命で保険金受取人の変更をする場合は、契約者専用サイトもしくはフリーダイヤルで手続きをする必要があります。

番外編:法人契約のがん保険、受取人は誰がなれる?誰にする?

法人がん保険とは、その名の通り企業や経営者向けのがん保険です。

個人がん保険とは異なり、保障額や保険料が数千万円にもなるほど、高額となります。

また、法人がん保険は解約返戻金があるという大きな特徴もあるのです。

法人保険は保険料が全額損金となるため、高い節税効果を期待できるうえ、解約返戻金は従業員の退職金としても活用できます。

基本的には、契約期間の前半は2分の1損金で、後半は全額損金となるのがほとんど、

例えば、年間保険料が400万円の法人がん保険に、40年間加入したとしましょう。

すると、最初の20年間は200万円が節税の対象となり、残りの20年間は400万円が節税の対象となるのです。

法人契約のがん保険の給付金受取人は、法人・役員従業員・その家族がなれます。

以下が被保険者・給付金受取人の組合せと税金の関係をまとめた表です。

被保険者 役員・従業員 役員・従業員 役員・部課長・その他特定の従業員
受取人 法人 役員・従業員 役員・従業員
税金 一度法人の雑収入として計上され、見舞金として支払えば損金算入される。 受取人が被保険者本人、もしくは親族の場合は非課税 受取人が被保険者本人、もしくは親族の場合は非課税

法人がん保険は、保険料と保険金額も大きくなるため、加入前に法人保険の専門家と相談するのをおすすめします。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

がん保険の一時金や治療給付金は税金の対象となりませんが、死亡保険金があるものは組合せによって課税対象となるので要注意です。

基本的に受取人は、本人もしくは配偶者にするのがおすすめ。

各保険会社は指定代理人請求という、あらかじめ指定された代理人が保険金請求できる制度もあります。

そのような特約保障を活用するのも1つの手です。

がんはデリケートな病気となるので、家族と話し合って受取人を決めてください。

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