医療保険に2つ入るのはあり?いざという時、複数加入した保険会社に請求はできるのかFPが解説
実は生命保険と医療保険であれば複数の保険会社や保険に加入する事ができます。
予め設定しておいた保障内容も加入した分だけきちんと満額受けられるのが一般的です。
なぜ複数の医療保険に加入できるのか、どんなケースであれば複数請求に該当するのか、具体的なメリットとデメリットにも触れた上で、詳しい保険金の請求手続きについてまとめました。
この記事を読めばどんな医療保険が複数加入に向いているのか、加入から請求までの流れを具体的に理解できる内容になっています。
目次
医療保険は2つ以上、複数加入し請求することができる
日々の暮らしの中で病気をしたり怪我をしてしまうリスクは誰にでも付きまとうものです。
病気の治療は自分一人に向けた保障を想定しておけばいいですが、不慮の事故を含む怪我の治療をする場合は他人への保障も視野に入れる必要があります。
病気や怪我で家計を支える人物が働けなる事も考えると、治療費の他に家族の生活費など、十分なお金を確保しておく術も考えなければなりません。
そんな日々のリスクに対する備えとして医療保険は存在します。
そして、医療保険の場合は複数加入して万が一の時に保険金を請求する事ができるようになっています。
どうして医療保険は複数加入する事ができるのでしょうか?
業態や保障内容によって保険会社・保険にはいくつかの種類がある
保険会社には株式会社と“相互会社”の2パターンあるのはご存知でしょうか。
株式会社は株主による出資によって支えられ株主の持ち物と定義されますが、相互会社は相互扶助の考え方から保険加入者一人一人が社員として扱われ(働いている人は社員ではなく職員として定義されている)相互会社はその社員の持ち物と定義されています。
保険には大きく分けて生命・損害・医療の3種類があります。
それぞれ保障してくれる対象物や内容が違っていて、公的に制度化されているものと民間の保険会社が運営しているものがあります。
それぞれの特徴を下記にまとめました。
生命保険
被保険者が病気や怪我で死亡した場合は死亡保険金が支払われて、同等の状態として高次脳機能障害に陥った場合は以後の保険料の払い込みは免除されて保障が継続されるのが生命保険です。
保障の対象は人のみになります。
支払い条件を満たして支払いの対象となれば生命保険に加入する時に予め設定しておいた保険金が満額支払われるのも特徴です。
家計を支える人物(父や母)が亡くなってしまった場合、子供がいる家庭には遺族年金という公的保障制度が適用されるます。
これは公的な生命保険にあたる制度と言えるものです。
損害保険
偶発的な何らかの事故や災害による損害を補填してくれるのが損害保険になります。
保障の対象は建物や車、火災や地震による被害(建物はもちろん家財も含む)、旅行中の自身の怪我や病気など多岐に渡っています。
生命保険とは違い実際に損害が出た分を補填してくれる実損補填形式で保険金が支払われる点と、免責といって一定金額まで損害保険金が支払われない(免責金額が5万円であれば例え保険金がおりる損害であっても5万円までは保険金がおりない)点が特徴です。
医療保険
病気や怪我によって治療・入院・通院した時の費用の準備や、病気の治療をしている間の生活費の保障をするものとして用意されているのが医療保険です。
民間の保険会社が販売している医療保険を想像しがちですが、実は日本は公的医療保険に全員加入していて健康保険証を持っている人であれば誰でも医療機関を受診した時に3割負担(受診した人の年齢によっては0や1割負担の場合もある)で済むのはこのおかげです。
会社に勤めている人であれば健康保険(社会保険)・自営業者や年金を受給している人であれば国民健康保険という名称で加入しています。
この他にも老後の生活資金となる年金保険や健康状態によって必要となる費用を保障してくれる介護保険、何らかの理由で働くのが困難になった場合に適用される就業不能保険など、時代のニーズに合わせて多様な保険が存在しています。
公務員や特定の会社に勤めている人だけが入れる保険もある
公務員しか加入できない保険や、ある特定の会社に勤めている人しか加入できない保険もあります。
これらは共済や団体生命保険もしくは団体医療保険と呼ばれていています。
共済であれば都道府県の職員や公立学校の教員や教育委員会などの職員・警察・指定された都市や市町村の職員が対象で、準備されている保険の種類は主に生命保険と医療保険と年金保険になります。
団体生命保険と団体医療保険は勤めている会社が保険会社と契約を結んでいて、その会社の従業員だけが入れる保険です。
生命保険と医療保険が扱われています。
共済組合が別に存在している事や、勤めている会社が保険会社と直接契約しているおかげでこれらの保険は民間の保険会社よりも保険料が安く済むというメリットがあります。
ただし、退職した場合は被保険者から外れる事になるので別の保険に再度加入しなおさなければならない点は留意しておいてください。
生命保険と医療保険に関しては複数加入する事ができる
生命保険・損害保険・医療保険の大まかな保障対象の違いや、保険を取り扱っている組織にも違いがあるのが分かっていただけたところで、保障を充実させるという観点から複数加入について考えます。
まず、生命保険と医療保険に関しては2つ以上の保険に加入する事が可能です。
これは生命保険と医療保険にある給付条件が所定の状態になった場合のみになるので、保障額に上限がないからです。
損害保険に関しては基本的に1つの保障対象(建物や人身)につき1つの契約しか締結できません。
同じ内容の保険に入っていても重複して保険金が支払われる事はなく、ただ保険料が無駄になってしまうだけです。
考え方としては実際に起きた損害を補填するタイプの保険は、保障対象となるモノがおった損害が回復できればそれで保障終了となります。
複数加入していても保険金がおりないのはそのためです。
死亡や病気にかかるなど所定の状態になれば保険金がおりるタイプの保険は、所定の状態である事が支払いの要件になっているので複数加入していても保険金がおりるようになっています。
複数加入ができる生命保険と医療保険も無限に加入できる訳ではない
ただし、生命保険や医療保険でも保険金がいくらでも支払われるという事ではありません。
保険は基本的に加入する時、保険会社に対して被保険者の年収を申告します。
この時に保険を掛けられる被保険者の年収に応じた保障額が設定されるのが一般的なので、例えば年収700万円の会社員であれば死亡保障も高くて5,000万円程度です。
1億円以上の保険金が設定されるような事はまずありません。
医療保険は所定の状態や要件に該当した場合に予め決めておいた、定められた保険金や給付金が受け取れるシステムになっています。
自身が会社員であるのか、公務員であるのか、自営業者であるのかによって違いはありますが、医療保障は必要な分だけ加入して自分で保障の充実度をアップする事ができるという点をおさえておきましょう。
医療保険に2つ以上入る4つのメリット
それでは実際に医療保険に複数加入した場合のメリットにはどんなものがあるのでしょうか?具体例をあげてまとめてみました。
それぞれの医療保険が持つ保障内容のいいところどりができる
医療保険で特に注意しておきたいのは、保険会社や保険商品によって支払われる要件が若干違ってくるという点です。
例えば同じガン保険でも、ある会社では入院する前の通院治療も保障の対象となるのに対し、ある会社は入院した後の通院しか保障してくれない場合があります。
入院も何日以上・期間はいつ~いつまでではならないという細かな条件も沢山あり、これらの穴をカバーしあえる点でも医療保険の複数加入にはメリットがあるのです。
また特定の病気に強いのがウリになっている保険会社や保険商品も少なくないので、備えておきたい病気に対して会社ごとでピンポイントに保障を準備する事も可能になります。
利回りを意識したハイリスクな保険と堅実な保険の2つに加入する事もできる
外資系の保険会社や国内生命保険会社にはドル建ての医療保険も存在します。
医療保障と一緒にちょっとした利回りを期待する事が出来ますがその分、為替運用のリスクも付きまとうので、本来受け取れるはずの保険金が減ってしまう場合もあります。
そんな時に備えて単純な掛け捨てタイプの一定額の保険金を保障している医療保険を合わせて加入しておくという事もできます。
通院費や治療費は医療保険に入っていた分だけ保険金が受け取れる
私たちが医療保険に加入するのは公的保障制度だけではどうしても保障に不安を感じるからです。
現代は医療も進歩し、寿命も長くなっている分、病気や怪我のリスクに備える必要性は高まっていると言えます。
当然ですが、医療保険は加入した分だけ保険金を受け取る事が出来るので、充実した保障を準備したい場合や、一社だけでは万が一の場合不安だなと感じている人は予め給付金をいくら欲しいか計算して、足りない分を複数加入で埋めておくのも一つの手です。
保険会社の破綻(倒産)リスクを回避する事ができる
保険会社は前章で触れた株式会社の形態を取っていれば株式のやり取りで保険金の原資を稼ぐ事もできますが、相互会社の場合はそうはいきません。
相互会社の保険金を支払う元手は基本的に保険加入者が納める保険料と会社の自己資本のみになります。
つまり保険会社の資金調達が保険料にしか拠り所がないため、運用などに失敗した場合、保険金が満額おりないリスクがあるのです。
複数の保険会社で医療保険に入っていればこういった破綻リスクは軽減されます。
医療保険に2つ以上入る3つのデメリット
物事は表裏一体でメリットもあれば必ずデメリットも存在します。
見方を変えるだけでも捉え方が変わるという視点で、しっかりとデメリットについてもどんなものがあるのか具体的に見ていきましょう。
保障内容が重複してしまう事がある
医療保険は生命保険に比べるとフレキシブルで自分の入りたい保障を自分で選んで特約という形で自由に付け替える事がしやすい保険です。
なので、メリットの所でも説明したように保障内容のいいところどりができる訳ですが、当然、基礎中の基礎のような保障内容は複数社加入すれば複数社分になります。
保障を手厚くしようと複数の医療保険に加入すればするほど、保障内容の重複も避けられないのでデメリットに感じてしまう事もあるでしょう。
入っている保険の数だけ月々の保険料もかさんでしまう
入っている保険に対してそれぞれ保険料を納めるので当然ですが毎月の保険料は上がります。
欲しい保障を家族の人数分入っていればきりがありませんし、貯蓄でもない毎月数万円の固定費はそれなりに家計を圧迫してしまいます。
それこそ、公的医療制度を使って医療費のリスクがどの程度軽減されるのかを事前に考えて、自分で準備する医療保険に対して保険料を毎月どのくらい払えるのかを精査しておく必要がありそうです。
保険加入時・保険金請求時・書類管理などの手間も倍になってしまう
一時の事ではあるものの、身分証明書を準備したり保険料の引き落とし口座の準備をしたり、書類を書いたりと保険に加入する時はそれなりの手間がかかります。
また、保険金の請求時には保険会社所定の用紙に必要事項を記入するだけではなく医療機関が発行する診断書が必要になります。産労総合研究所の調べによると病院が発行する診断書は簡易なもので全国平均額は2,265円でしたが、最高で5,250円かかる地域もあるようです。
また、保険会社に提出するための診断書は全国平均が4,727円、関東や沖縄、東北地方でも5,000円前後と高く、後遺障害診断書ともなると5,379円もの費用がかさむ事が分かります。
参考サイト⇒いくらかかる?医療機関が発行する各種診断書の料金
つまり診断書を入っている保険の数だけ準備するのにも手間とお金がかかる事は明白です。
さらに複数の保険に入ればそれだけ契約関係の書類も増えます。
どの保険からどんな保険金がいくらおりるのか、請求手続きは会社によってどう違うのかをきちんと把握し書類も管理しなければならないのでとにかく手間がかかるというのもデメリットの一つです。
複数の保険に加入すればおのずと保険会社も複数社、担当してくれる保険の担当者も複数つく事になります。
好みの問題でもありますが、意見はもちろん会社的立場も違う複数の担当者から意見を聞く事でより幅広い情報収集ができるのも事実です。
しかし保険に加入する以上、タダではないという事もきっちりと頭に入れておいた方がよさそうですね。
同じ医療保険に2つ入ることはできる?
それでは同じ医療保険に2つ加入する事はできるのでしょうか。
今までは同じ医療保険でも他社に加入した場合の話でしたが、同じ医療保険に2つ入る事が可能なのかを調べました。
同じ医療保険に2つ入るのはどんなケースが該当する?
民間の保険会社が運営している生命保険・医療保険や共済で入れる保険が他社どうしてあれば複数加入が可能というのは前章でご説明した通りです。
同じ保険会社の同じ医療保険にもこれは該当します。
保険会社で扱われている医療保険は保険金や給付金にも幅があるため加入時に自身が欲しい保障額をきちんと準備しやすいですが、共済に関しては少額の保険料で民間に比べて少額の保障内容となっているケースが多いため、この保険金や給付金を増やすために複数(つまり同じ医療保険を2つ以上)加入して口数を増やすという事が可能だからです。
生命保険・医療保険のいずれにおいても他社で複数加入の場合と同様、被保険者の収入やモラルの範疇を超えた保険金や給付金が設定される事はないという点はおさえておきましょう。
複数の医療保険を請求する手順と方法
一つであっても複数であっても保険金請求の大まかな流れは同じです。
しいて言えば必要書類の量が違ってくるので労力に違いが出てきます。
きちんと整理していざという時のために備えましょう。
加入している保険会社に連絡をして必要書類を取り寄せる
まず保険金請求事案が発生した時はすみやかに担当者や代表窓口に電話して保険会社に保険金を請求したい旨を伝えましょう。
その時、医療保険の証券番号が必要になるので予め手元に用意しておくとスムーズです。
入院した日や治療した病院、退院日や手術の項目など詳細を電話する前に事前にまとめてメモなどにしておくといいでしょう。
保険会社に書類を提出して審査を受ける
請求手続きの連絡をすれば保険会社から手続きに必要な書類一式と、被保険者側で準備すべき書類などの案内を送ってもらえます。
医療保険であれば必ず診断書の提出が必要になるので、請求手続きの連絡を入れるタイミングは通院している間などにできると病院に足を運ぶ手間が省けますね。
請求には時効があるので手続きは早めに済ませよう
一般的には保険金の請求には時効があり、それは3年と約款に定められています。
ご自身や家族が体調を崩している中、手続きの手間はとても大変なものになりますが、きちんと請求漏れや請求権が失われてしまうのを防ぐためにもなるべく早めに保険金の請求にはとりかかりましょう。
まとめ
医療保険には複数の会社や一つの保険であっても重複して加入できる事がご理解頂けたかと思います。
医療保険に限らず保険はいざという時のための心強い味方です。
より充実した保障をコスト的にも損することなく準備できるよう、今一度きちんと理解しておきましょう。