医療保険はいくらくらい必要?FPが教える年代・性別・職業別月々の平均支払保険料

2024.07.16

医療保険(入院保険)

医療保険はいくら必要なのでしょうか。

旦那さん、妻、子それぞれの医療保険の必要額を具体的にシミュレーションしながらご説明をしていきます。

加えて出産時の必要額、ご家庭の状況による違いや月々負担する保険料の相場についてもご紹介していきます。

本記事を読んでいただくことで、ご家庭での医療保険の必要額や保険料負担額の相場を知ることができます。

医療保険はいくら必要?適正額をシミュレーション

医療保険はいくら必要なのでしょうか。

適正額をどのように考えたらよいのかを知る前に、まずは医療保険の仕組み(基本的な保障内容)について確認しておきましょう。

医療保険の仕組み

医療保険の仕組みのうち、基本的な保障内容についてここで確認をしておきましょう。

医療保険の適正額を考える際に、この基本的な保障でどれぐらい備えればよいかを考えることになるからです。

<医療保険の基本的な保障>

・入院保障(例:入院したら1日につき5千円受け取れる)
・手術保障(例:対象となる手術1回につき10万円受け取れる)
・通院保障(例:入院後、その治療のための通院で1日につき3千円受け取れる)

もちろん上記以外にも医療保険の保障はありますが副次的または特殊な保障であることが多いため、今回のように医療保険の適正額を考える際には上記の基本的な保障で考えるのが良いでしょう。

モデルケース①

それでは医療保険はいくら必要なのかを考えていきたいと思います。

以下の通り具体的な人物像と疾病を設定して、想定される費用と必要なお金をシミュレーションしてみましょう。

40歳男性のAさんは会社員(年収450万円)で独身・一人暮らしをしています。

このAさんが会社の健康診断で再検査をすすめられ、病院で胃がん(ステージⅠ)との診断を受けたとしましょう。

治療方法は、内視鏡(胃カメラ)の先からワイヤーを出してがんの部位と周辺の粘膜をはぎ取るという「視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」で、治療に約1ヶ月間を要したとします。

この場合の医療費総額は約560,000円(詳細は参考サイトを参照)となります。

公的医療制度と自己負担額

ただし、この560,000円がそのままAさんの負担となるわけではありません。

上記の「視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」は公的医療制度の適用を受けています(いわゆる保険がきく)ので、会社で健康保険に加入しているAさんの自己負担は3割となり、3割を計算すると168,000円になります。

高額療養制度

しかしながら、Aさんの場合は1ヶ月に560,000円の医療費総額であり、その3割の自己負担は168,000円と計算されましたが、ここで高額療養制度が適用されることになり、さらに自己負担は減ることになります。

高額療養制度とは、

医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する 引用_厚生労働省

という制度です。

Aさんの場合年収450万円であることから、1ヶ月の自己負担額上限は以下の通り計算されることになります。

計算式:1ヶ月の自己負担限度額=80,100円+(医療費総額-267,000円)×1%

Aさんの場合は80,100円+(560,000円-267,000円)×1%という計算式となり、自己負担額は83,030円となります。

治療に要する平均日数

今回のモデルケース①では1ヶ月で治療を終えた前提となっていますが、当然ながら複数月にまたがっての治療となることもありえます。

当然ながら医療費も複数月にわかれての請求・支払となることがあるでしょう。

そこで次に、疾病ごとにどれぐらいの治療に要する日数がかかるのかを確認していきましょう。

具体的には、治療のコア期間となる平均入院日数を調べることで、最低限治療にかかる日数を押さえることが出来ます。

Aさんは胃がんでの治療ということでしたので、胃がんでの平均入院日数を調べてみると35歳~64歳という区分で平均13.9日、男性という区分では平均17.8日(詳細は参考サイトを参照)であることがわかります。

参考サイト⇒生命保険文化センター「入院した場合、入院日数は何日くらい?」

月をまたぐことを考慮しても2ヶ月間程度の治療期間であり、先程の高額療養制度を適用したあとの自己負担額で考えると、約8万3千円の2ヶ月分で約17万円程度、3ヶ月分で約25万円程度になることがわかります。

上記の参考サイトでは、胃がん以外の代表的な疾病での平均入院日数も記載されていますので、ぜひ参考にしていただき自己負担額の予測の参考にしていただければと思います。

モデルケース①から考える医療保険の適正額

モデルケース①を具体例として医療保険がどの程度必要なのか、その適正額を整理して考えていきましょう。

高額療養制度が適用されるという前提であれば、1ヶ月あたり概ね8万円から9万円の自己負担になることが予測できます。

これに保険の対象としておきたい疾病の平均入院日数を考慮して、1ヶ月8万円程度の自己負担を手当てできる医療保険の保障額を用意しておけばいいのか、3ヶ月25万円程度の保障額を用意しておけばいいのかを検討することが出来ます。

ちなみに先程と同じ生命保険文化センターの参考サイトでは、疾病全体の平均入院日数は31.9日で、ほぼ1ヶ月間となり、実際は複数月にまたがるので2ヶ月17万円程度の自己負担を準備しておけばよいでしょう。

これを医療保険の入院保障で手当てしようと考えると、1日につき1万円の入院給付金、もしくは対象手術で20万円の手術給付金があれば一定の備えになっているといえます。(もちろん両方の保障がある医療保険であれば重複で給付されることになります。)

・入院の保障で準備する場合:入院1日につき1万円程度の医療保険が必要

・手術の保障で準備する場合:対象手術1回につき20万円の医療保険が必要

高額療養制度の年収区分に注意

ここで高額療養制度についての注意点があります。

Aさんの場合は年収450万円で1ヶ月の限度額を先程計算しましたが、もし年収が約770万~約1,160万円の間の方の場合は、計算式が以下の通りに変わり、同じ治療をしても負担額は倍以上になります。

計算式=167,400円+(医療費総額-558,000円)×1%

したがって年収が高い方の場合には高額療養制度の限度額があがるため、モデルケース①よりも医療保険の適正額はあがることになります。

先進医療に注意

モデルケース①では治療方法が公的医療制度(高額療養制度を含む)の適用になる前提で自己負担額を確認してきました。

しかしながら先進医療といわれる公的医療制度が適用されない治療法での治療を医師から勧められる、もしくは患者・家族が望むケースが増えています。

理由は先進医療といわれるだけに効果的な治療法であることが多く、身体への負荷や副作用を減らす効果も期待できるためです。

先進医療は公的な保険制度が適用されないということは、先進医療の技術料にかかる費用全額が自己負担になる、ということです。

例えばがん治療などで利用されている陽子線治療の1件あたり平均額は2,760,022円(詳細は参考サイトを参照)となっており非常に高額であることがわかります。

参考サイト⇒生命保険文化センター「先進医療とは? どれくらい費用がかかる?」

こうした先進医療の自己負担に医療保険で備えるにはどうすればよいのでしょうか。

実はまさにこの先進医療の治療をした際に給付金がおりる「先進医療(特約)」という保障を医療保険に付帯することが出来るようになっています。

通常の疾病の適正額とは異なりますが、自己負担を軽減するのに重要な保障なのでここで紹介しました。

付随費用に注意

医療費やその自己負担についてはこれまで整理してきましたが、疾病による費用で発生するのは医療費だけではありません。

医療費以外にも差額ベッド代といわれる入院代の追加費用や病院での食事代、入退院や通院でのタクシー代など、通常であれば発生しない臨時の費用が必要になる可能性が高くなります。

こうした付随費用を考慮すると、通常のポケットマネーで賄うことも可能かもしれませんが、医療費が発生することに合わせて発生する必要なお金として医療保険で準備する適正額に含めても良いでしょう。

旦那の医療保険はいくら必要かシミュレーション

旦那さんの医療保険はどれぐらい必要なのかを確認していきましょう。

モデルケース②

50歳男性のBさんは自営業(年収500万円)でご家族(妻・子)と生活をしていました。

ある夜半に胸が苦しくなり、緊急搬送されたところ狭心症(虚血性心疾患)であることが判明しました。

狭心症のカテーテル治療をうけて10日間の入院後、自宅療養を続けて通院(合計30回)をしながら治療に5ヶ月を要したとします。

この場合の医療費総額は約735,800円(詳細は参考サイトを参照)となります。

モデルケース②から考える旦那の医療保険の適正額

Bさんは会社員ではないので健康保険ではなく国民健康保険となりますが、同じく高額療養制度の適用になります。

したがって高額療養制度の限度額から、医療費の自己負担は月8万円程度となります。

医療保険の入院または手術の保障で必要な適正額を考えると以下の金額の保障は備えておきたいところです。

・入院の保障で準備する場合:入院1日につき8千円程度の医療保険が必要

・手術の保障で準備する場合:対象手術1回につき10万円の医療保険が必要

・通院の保障で準備する場合:通院1日につき5千円程度の医療保険が必要

妻の医療保険はいくら必要かシミュレーション

奥さんの医療保険の適正額について確認していきましょう。

モデルケース③

38歳女性のCさんは結婚後も会社員を続けています。

生理不順などで体調が優れず病院で検査したところ子宮筋腫であると診断されました。

子宮温存手術である筋腫核出術(筋腫部分を取り除く手術)を行ない、入院日数は7日間となりました。

術後は良好で通院は5回程度、1ヶ月間以内の治療でおえることができました。

治療費の総額は約868,700円(詳細は参考サイトを参照)ですが、高額療養制度によりCさんの自己負担額は9万円程度となりました。

モデルケース③から考える妻の医療保険の適正額

これまで確認してきたモデルケース①と②と同様に、高額療養制度があることにより治療費自体の自己負担額は押さえることができています。

この自己負担額を医療保険で備えようとした場合には以下の保障を準備しておけばよいでしょう。

・入院の保障で準備する場合:入院1日につき1万円程度の医療保険が必要

・手術の保障で準備する場合:対象手術1回につき10万円の医療保険が必要

帝王切開や吸引分娩をする際の医療保険はいくら必要?

出産にともなう帝王切開や吸引分娩での費用はどれぐらいかかるのでしょうか。

それぞれの場合ごとに確認をしていきましょう。

帝王切開の場合

自然分娩を望まれていた場合でも、医師の判断により出産や妊娠中でも帝王切開となる場合があります。

帝王切開の手術については公的医療制度の対象となり、治療費は一律222,000円(32週未満の早産となる場合は一律242,000円)です。

この3割が自己負担額となります。

他の治療費とあわせて高額になる場合は、これまでのモデルケースと同様に高額療養制度の適用を受けることが出来ます。

そのため帝王切開での医療保険の必要な適正額は、以下の通り手術の保障で備えておけばよいでしょう。

・手術の保障で準備する場合:対象手術1回につき5~10万円の医療保険が必要

吸引分娩の場合

出産にともない医師の判断で吸引分娩が必要となった場合には公的医療制度の対象となります。

ただし公的医療保険の対象となっても、異常分娩として診断書の記載がないと民間の医療保険の支払い対象とはならない場合があります。

実際に個別の医療保険を検討される際には、吸引分娩での手術が対象となるかどうかを確認しておく必要があるでしょう。

・手術の保障で準備する場合:対象手術1回につき10万円の医療保険が必要

出産育児一時金

出産をすると、ご自身の加入している健康保険(ご自身が配偶者の扶養に入っている場合は配偶者の健康保険)から出産育児一時金の給付を受けることが出来ます。

この出産育児一時金は42万円となり、所定の制度を導入していれば出産に関わった医療機関に直接支払いもできるため、医療機関に支払う総費用からこの出産育児一時金を除いた費用を支払えばよいことになります。

子どもの医療保険はいくら必要かシミュレーション

子どもの医療保険はいくら必要なのかを考えていきましょう。

モデルケース④

D君は小学5年生の11歳です。

貧血とめまいが続いたのでかかりつけの病院にいったところ、精密検査をすすめられて総合病院で脳腫瘍との診断を受けました。

脳腫瘍は、こどもがかかる小児がんのうち2番目に多く22%を占めています。(詳細は参考サイトを参照)

医療費は公的医療制度の対象となるものは、自己負担の3割が住んでいる地域の医療費助成制度や小児慢性特定疾病医療費助成制度といわれる医療費の負担軽減制度により、ほとんど自己負担はありませんでした。

しかしながら公的医療制度の対象とならない先進医療となる陽子線治療を受けており、その費用はさきほどご紹介したとおり2,760,022円になったとしましょう。

参考サイト⇒国立がん研究センター小児がん情報サービス

モデルケース④から考える子どもの医療保険の適正額

モデルケース④から医療保険の適正額を考えていきましょう。

D君の場合は公的医療制度の対象となる医療費は、自己負担部分を含めて自治体や国の助成によりほとんど発生しないことがわかります。

もちろん自治体の助成制度には差がありますので、自己負担ゼロとは一概に言えませんが、そうした場合でも高額療養制度により上限の金額はあります。

一方で一番医療保険として考えなければならないのは公的医療制度の対象外となる先進医療の費用に備えることです。

今回のモデルケース④では陽子線治療の費用が全額自己負担となります。

こどもでも加入できる先進医療の保障(特約)がありますので、そうした医療保険で備えるようにしましょう。

・入院の保障で準備する場合:入院1日につき3千円程度の医療保険が必要

・手術の保障で準備する場合:対象手術1回につき10万円の医療保険が必要

・先進医療の保障で準備する場合:先進医療で上限額2,000万円までの医療保険が必要

支払い保険料の平均額は月々いくら?相場と無理のない支払額

医療保険(生命保険)に関して、平均してどれぐらいの保険料を払っているのでしょうか。

調査データをもとに平均的な支払い保険料と、どの程度の支払額が妥当なのかを確認してみましょう。

紹介するデータは「生命保険に関する全国実態調査」の「図表Ⅰ-59民保加入世帯における民保1社あたりの世帯加入件数、世帯普通死亡保険金額、世帯年間払込保険料」です。(詳細は参考サイトを参照)

参考サイト⇒生命保険文化センター平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」

このデータによると、平成30年における世帯平均加入件数は1.6件であり、各ご家庭で生命保険に平均1.6件加入されている、ということになります。

そして、同じく平成30年における世帯年間払込保険料は18.3万円となっています。ご家庭で生命保険に支払う年間の保険料は18.3万円だということです。

ここから保険1件あたりの年間保険料は11.4万円となり、毎月にすると9,500円ということになります。

ただしこの加入件数の保険には、貯蓄性保険や高額の死亡保険も含まれていますので、医療保険ということで考えれば、多く見積もっても1件あたり毎月5,000円~7,000円程度が相場の保険料と推測されます。

月収35万円のご家庭で考えると、毎月7,000円程度の保険料であれば月収の2%に収まることになり、過大な保険料とはなりません。

ただし無理なく継続していくという観点で考えたときには5,000円程度で収まるのが安心と言えるでしょう。

医療保険がいくら必要なのかは各家庭の状況によって異なる

ここまではモデルケースなどに基づいて医療保険がどの程度必要なのかを確認してきました。

しかしながら実際に医療保険がいくら必要なのかは、治療費や付随費用にかかるお金だけで決まるわけではありません。

必ず考慮すべきご家庭の状況には以下の項目があります。

・収入の多寡と働き手
・貯蓄の多寡
・扶養すべき人(子ども、高齢者)の有無
・他の生命保険との兼ね合い

まず収入の程度と働き手によって、誰に優先して医療保険が必要かを判断します。

特に自営業の場合には早期に治療しないと、その後の収入に大きく影響を受けることがあります。

収入を得ている割合が多い方から順番に医療保険の必要性を判断しましょう。

次に貯蓄の程度によって、医療保険の必要性を確認します。

貯蓄が少ない場合は高額療養制度があったとしても自己負担額の費用をすぐに用意することは難しい場合があります。

逆に貯蓄が多い方は医療保険がなくても自己負担分のお金は準備できるかもしれません。

しかしそのような場合であっても公的医療制度の適用外である先進医療の保障などは準備しておくのが望ましいでしょう。

扶養すべきお子さんいる方については、お子さんに対する医療保険の検討と、お母さんが病気になったときの育児の代行費用などを考慮する必要があるため、医療保険の必要な金額は手厚くしたほうがいいでしょう。

最後に、ご家庭で加入している他の生命保険の存在です。

何年か前に進められて加入していた生命保険をよくよく見てみると医療保障(医療特約)がついていた、というようなことがよくあります。

現在検討している医療保険と過去に加入した生命保険との保障内容が重複していないか、念の為確認されとよいでしょう。

まとめ

医療保険はいくらくらい必要なのかについて、モデルケースを使いながら確認をしてきました。

公的医療制度の適用となる医療費については原則3割負担となり、さらに1ヶ月の限度を超えるものは高額療養制度が適用されて更に負担が軽減されることがわかりました。

一方で先進医療などの全額自己負担となる費用や、病気治療にともなう付随費用などもお金も必要となります。

各ご家庭の状況をふまえながら、それぞれの医療保険の必要な保障を検討されることをお勧めします。

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