医療保険と生命保険の違いって?控除の対象になる?両方入る必要性はある?2つの違いをFPが解説

2024.07.16

医療保険(入院保険)

医療保険と生命保険の違いは、保険にあまり馴染みのない方にとっては難しく感じますよね。

しかし、医療保険と生命保険は内容だけでなく、選び方や必要性なども全く異なるため気をつけて選ぶ必要があります。

そこで今回は、医療保険と生命保険の違いをわかりやすくまとめてみました。

「医療保険と生命保険はどこが違うの?」

「両方入る必要はあるの?」

と疑問を感じている方が読んでいただくことで、医療保険と生命保険の違いが分かるようになり、自分にとってどちらが必要か判断できるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。

医療保険と生命保険の2つの違い

医療保険と生命保険の違いは「保険金や給付金が支払われるタイミング」と「保険金や給付金を受け取る人」の2つから説明できます。

それぞれ確認していきましょう。

保険金や給付金が支払われるタイミングが違う

医療保険と生命保険は、それぞれ保険金や給付金が支払われるタイミングが異なります。

医療保険の場合は、保険の対象となる人(被保険者)が病気やケガ等で、以下に該当した場合に保険金や給付金の支払いの対象です。

●入院や通院をした場合
●手術を受けた場合
●特定の重い病気にかかってしまった場合

例えば、入院をした場合は、病院に入院した日数分の入院給付金が、手術を受けた場合は、受けた手術の種類に応じた保険金や給付金が支払われます。

受け取れる保険金や給付金の額は数万円〜数百万円程度であるケースがほとんど。

一方で、生命保険は、自分が病気や交通事故などで亡くなったときや、所定の重い障害状態に該当した場合に保険金が受け取れる仕組みです。

保険金の額は設定にもよりますが、数百万円〜数千万円にもなるため、かなり高額。

このため、医療保険の方が生命保険に比べて、保険金や給付金が支払われるハードルが低いですが、受け取れる額が少ないといえるでしょう。

保険金や給付金を受け取る人物が違う

医療保険で保険金や給付金は、基本的に入院や手術を受けた人自身が受け取る場合が多いです。

一方で、生命保険は、亡くなった場合に保険金が支払われるので、受け取るのは残された家族(遺族)や身近なひとです。

医療保険と生命保険には以下のような違いがあるため、それぞれ以下のような性質が強いと言えます。

●医療保険:ほとんどの場合「自分のため」に加入する
●生命保険:多くの場合で「残された家族のため」に加入する

医療保険と生命保険に加入する時はこのような違いに着目すると良いでしょう。

医療保険は年末調整の控除対象?医療保険のメリットと特徴

違いを確認していただいたところで、医療保険と生命保険のそれぞれの特徴やメリット、さら年末調整の控除対象となるかどうか解説していきます。

その前に、生命保険料控除の仕組みついて少し解説しますね。

生命保険料控除は、1年間で支払った保険料の額に応じて、一定額が税金の計算対象となる年間の所得から控除されます。

このため、所得税や住民税の負担を減らすことが可能です。

そして生命保険料控除は、以下の3分野に分かれており、加入する保険によって適用される枠が異なります。

●一般生命保険料控除:死亡や生存した場合に保険金を受け取れる保険

●介護医療保険料控除:入院や手術、特定の疾病にかかった場合に保険金を受け取れる保険

●個人年金保険料控除:特定の条件を満たす個人年金保険

そしてそれぞれの枠に上限が設けられています。

対象となる保険料の上限 控除される額の上限
所得税 1分野:年間8万円まで

3分野合計:年間24万円まで

1分野:年間4万円まで

3分野合計:年間12万円まで

住民税 1分野:年間5.6万円まで

3分野合計:年間16.8万円まで

1分野:年間2.8万円まで

3分野合計:年間7万円まで

例えば、所得税を計算するときで考えてみましょう。

年間の保険料を24万円払っていた場合、一般生命保険料控除に分類される保険だけで年間24万円払っていても、所得される控除される額は4万円だけです。

しかし、一般・介護医療・個人年金の対象の保険それぞれに年間8万円ずつ加入していると、合計12万円が所得から控除されます。

このため、生命保険料控除を多く受けるためには、できるだけ多くの種類の保険に、分散して加入する必要があります。

医療保険の特徴

医療保険は、入院や手術したときや、特定の重い病気にかかってしまった場合に、給付を受け取れる保険です

入院や手術をした場合には、「診療報酬点数」によってあらかじめ決められた医療費が発生します。

しかし、医療費のうち7割は健康保険組合が負担してくれるため、3割のみの自己負担です。

逆にいうとどのような治療を受けても3割は自己負担しないといけないことになりますよね。

そこで医療保険に加入していると、入院した日数や受けた手術に応じて給付金が受け取れるため、自己負担の額が高額になっても安心できます。

医療保険のメリット

医療保険は、医療費が高額になっても自己負担をゼロにできるというメリットがあります。

入院日数が長くなったときや、高額な手術を受けた場合は、いくら自己負担が3割といえども、とても大きな出費です。

日本の健康保険制度はしっかりしていて、医療費の自己負担が3割になる他にも、1ヶ月の医療費で自己負担しなければいけない上限が決まっています(高額療養費制度)

上限額は、一般的な所得の方で月に9万円〜10万円程度ですが、治療を受ける期間が長くなると自己負担額は高額になりますし、この上限額が適用されない治療も存在します。

そこで、医療保険に加入して、給付金を受け取ることで、この自己負担額をゼロにして、貯金を減らしたり、生活を圧迫させたりする心配がなくなります。

医療保険は、介護医療保険料控除の対象

医療保険は生命保険料控除のうち「介護医療保険料控除」の対象です。

このため、医療保険は生命保険と別の枠が使えるため、さらに税金の負担を減らせるのです。

例えば、医療保険で年間の保険料を8万円以上支払っていた場合、所得税の計算対象となる年間の所得から4万円が計算の対象から除外され、税金の額がやすくなります。

平成23年12月31日以前に契約した医療保険は旧制度

医療保険の保険料が介護医療保険料控除の対象となるのは、平成24年1月1日以降に加入した医療保険です。

逆に平成23年12月31日以前に契約した医療保険は、旧制度の生命保険料控除の”一般生命保険料控除”の対象です。

同じく、平成23年12月31日以前に契約した生命保険と保険料が合算されて控除額が計算されるので注意しましょう。

生命保険は年末調整の控除対象?生命保険のメリットと特徴

次に生命保険の特徴などを解説していきます。

生命保険の特徴

生命保険は、被保険者が亡くなった場合や所定の重い障害状態になった場合に保険金や給付金が支払われる保険で、支払われる額も高額です。

生命保険のメリット

生命保険に加入すると、貯蓄などでは対応できない額の保障を準備できます。

例えば、自分が妻や小さい子供を残して亡くなってしまった場合、残された家族の生活費などを準備しておかないと生活していくことができません。

特に子供が小さいと、成人するまでの生活費や教育費などは高額になります。

亡くなったときに、残された家族がいると「遺族年金」が国から支給されますが、それだけで生活していける額ではありません。

そこで生命保険に加入することで、高額になる残された家族の生活費を準備することができます。

生命保険は、一般保険料控除の対象

生命保険は、一般・介護医療・個人年金の3分野に分かれている生命保険料控除のうち「一般」の対象です。

ちなみに一般の生命保険に分類される保険は種類が多く、学資保険や積立保険、所定の条件を満たしていない個人年金も一般に分類されます。

生命保険料控除の対象にできる保険料には上限があり、一般分野が一番上限を超えやすいので注意しましょう。

契約した年月日によって生命保険料の控除額が変わる

平成23年12月31日以前に加入した生命保険は、旧制度の生命保険料控除が適用され、計算式や適用される額が異なります。

また、旧制度が適用される医療保険と合算されるため、注意しましょう。

医療保険料と生命保険料、平均どれくらいかけるべき?

医療保険と生命保険は、具体的にいくらかけるべきという金額はありません。

なぜなら、人によって生活背景や年齢が違うため、適正な額は人によって異なるからです。

しかし1つ言えることは、保険料は生活を過度に圧迫しない額に設定すること大事です。

確かに保険は必要ですが、不測の事態に備えるよりも、現在の生活の方が何倍も大事。

保険料を高額にしてしまったために、生活が厳しくなり、結局保険料が払えなくなると本末転倒です。

ちなみに世間一般的に、生命保険に年間でいくらの保険料を支払っているかまとめると以下の通りです。

払込保険料-全生保(個人年金保険含む)                  単位:万円

平均 20歳 30歳 40歳 50歳 60歳
年間 13.2 17.5 21.1 24.3 13.2
月間 1.10 1.46 1.76 2.03 1.52

引用元:生命保険文化センター「生命保険の保険料は年間どれくらい払っている?」

上記のデータには、個人年金保険料の保険料も含まれているため、一概には言えませんが、どの年代の方も毎月1万円以上の保険料を支払っていることがわかります。

また男女で分けてみてみると以下のような結果となりました。

単位:万円

平均 男性 女性
年間 22.8 17.4
月間 1.90 1.45

引用元:生命保険文化センター「生命保険の保険料は年間どれくらい払っている?」

このように、男性の方が女性よりも多くの保険料を支払う傾向にあるようです。

ただし、これらの平均値はあくまで1つの目安ですので、ご自身が支払っている保険料が平均から乖離しているからといって慌てて見直す必要はありません。

あくまで参考程度にご覧ください。

医療保険と生命保険は両方必要か

医療保険と生命保険は、必ず両方に加入しないといけない訳ではありません。

先ほどもお伝えした通り、保険は自分が必要な分だけ加入しないと保険料の負担がとても高額になってしまいます。

そして医療保険や生命保険に加入する際は、以下の点に注意して加入しましょう。

国の保障を理解する

日本の公的保障はとても良くできているため、すでに最低限の保険に加入しているといえます。

このため、医療保険や生命保険に加入する際は、以下の公的な保障についてしっかり理解した上で加入することが何よりも大事です。

健康保険

病院などの医療機関で診察や入院、手術などの医療行為を受けた場合、支払い窓口で健康保険証を提示すると、かかった医療費のうち自己負担するのは3割のみです。

また、自己負担の額はその人の所得によって、上限が決まっており、それ以上は健康保険組合が負担してくれる「高額療養費」という制度があります。

このため、医療費の自己負担は、平均的な収入の方だと毎月9万円〜10万円程度となります。

ただし、以下の費用は健康保険の対象外のため注意しましょう。

●差額ベッド代:個室などに入院した場合の宿泊費用
●病院での食事代
●家族のお見舞いにかかる交通費など
●自由診療や先進医療

とくに先進医療は、数十万円〜数百万円程度の自己負担が発生する可能性があるため注意しましょう。

医療保険を選ぶ際は、これらの公的保障があることを前提に選ぶ必要があります。

公的年金

国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなってしまった場合、「遺族年金」が残された家族に支給され、所定の障害状態に認定された場合は「障害年金」を受給可能です。

年金と聞くと老後に受け取れる「老齢年金」が有名なのですが、亡くなった場合や障害状態になった場合も年金が受け取れます。

遺族年金の場合は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれており、自営業やフリーランスの方は、遺族基礎年金のみ、会社員や公務員の方は両方受給可能。

受け取れる額は、年齢や家族構成によって変わりますので、注意してください。

生命保険に加入する際は、このような公的年金がある点に気をつけて加入しましょう。

必要度合いは年齢などによって変わる

例えば、同じ年齢でも独身の場合は、生命保険は必要なく自分のための医療保険に加入する方が優先順位は高いでしょう。

逆に、結婚して小さい子供がいる場合は、自分がなくなったあとも家族が生活していけるように生命保険を優先すべきです。

また、両方必要なケースは、既婚者で子供の年齢も小さく、貯蓄もあまりないという方は、生命保険と医療保険の両方に加入する必要があるといえます。

医療保険と生命保険は別々の会社に分けるのと一体型どちらがいい?

医療保険と生命保険を別々の保険で加入するか、同じ保険で加入するかは、それぞれのメリットやデメリットを把握して選ぶことが重要です。

別々に加入するメリット、デメリット

メリット

医療保険と生命保険を別々に加入すると、それぞれの保障に強みのある保険会社を選ぶことができます。

例えば、医療保険はA社、生命保険はB社の条件がよかった場合、それぞれを選んで加入できるため、良いとこ取りできますよね。

このため、払い込む保険料の総額も少なくできる可能性があります。

デメリット

それぞれの保障を別々の保険会社で準備する場合、それぞれの保険契約を自分で管理しなければなりません。

医療保険や生命保険を単品で販売している会社は、保険契約者ごとに担当者がつかないため、保険金や給付金の請求、住所変更などは自分で保険会社に連絡して行う必要があります。

このため、自分や家族がどんな保険に入っていて、何かあった場合はどこに連絡すべきかをしっかり把握しておく必要があるので注意しましょう。

一体型に加入するメリット、デメリット

メリット

医療保険と生命保険が一体になっている商品は、大手国内生保や一部の外資系の保険に多く、契約者一人につき専任の担当者がアフターフォローを行ってくれます。

このため、住所変更などや保険金や給付金などの請求などは、担当者に連絡すると手続きが出来ます。

また、契約内容の確認も定期的に行ってくれるため、加入内容を完全に忘れてしまうことも少ないでしょう。

保障が1つの保険にまとめられていることもあって、管理しやすいのが一体型の特徴です。

デメリット

一体型の保険は、保険料が高額になりやすく、保障内容も複雑になりやすい点に注意しましょう。

保険料が高額になりやすい理由は、一体型の保険が「更新型」であることが多いからで、一定の年数が経過すると、保険料が跳ね上がり、負担がかなり増えてしまいます

また、一体型の保険で加入できる特約はとても多くの種類があるため、特約を付加すればするほど、内容が複雑になります。

たしかに保険会社の職員がアフターフォローを行ってくれるメリットはありますが、担当者に任せすぎて、自分は内容を把握できていない、ということがないようにしましょう。

医療保険と生命保険一体型セット保険おすすめ2選

この章では、医療保険と生命保険が一体型になっている保険のうち、おすすめの保険を紹介していきたいと思います。

オリックス生命「死亡保障付医療保険リリーフ・ダブル」

リリーフ・ダブルは、入院給付金日額の設定によって、死亡保障金額が変わる保険です。

保険料の払い込みを終身払にすることで、保険料が一生涯あがらずずっと負担を一定にできます。

また先進医療特約も付加できるため、先進医療を受けて自己負担が高額になった場合もしっかり保障を受け取ることが可能です。

そして、7大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中など)で入院した場合は、入院給付金の限度日数が無制限になるというメリットも。

ただし死亡保障の額が最大で500万円までしか設定できないため、小さいお子様いるかたの保障額としては少し心もとないため注意しましょう。

明治安田生命「ベストスタイル」

明治安田生命が販売する主力商品で、様々な特約を選択して組み合わせ、自分に応じた保障を構成します。

突筆すべきはその給付能力の高さ。

●医療保障は入院時発生した自己負担した額と同じ額の給付金が受け取れる

●がん保障は再発の場合でもなんども給付金が受け取れる

このため、他社の医療保険と違い、給付金を過不足なく受け取れるてんで優れています。

もちろん死亡保障に関する特約も付加でき、保険金を一括で受け取るタイプから、年金形式で毎年受け取るタイプまで柔軟に設定可能です。

ただし以下の2点に注意点しましょう。

●保険料が高額になりやすい
●更新型のため10年単位で保険料が高くなる
●特約を付加すると保障内容が複雑になる

しっかり理解して加入すればとても優れた保険といえます。

まとめ

このように医療保険と生命保険に大きな違いがあり、必要となるタイミングや理由なども異なります。

ただし、どちらの保険も国の公的保障で足りない部分を補うために加入するという点は変わらないので、まずは国からどんな保障を受けられるのか確認することがとても大事です。

自分にとってどの保障かをしっかり考えた上で、ご自身に合った医療保険や生命保険を見つけていきましょう。

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