医療保険の受取人は本人、配偶者、親、通常誰がいい?FPが教える贈与税と確認方法

2024.07.16

医療保険(入院保険)

医療保険は、自分が入院した場合や所定の手術を受けた場合に給付金を受け取れる保険ですが、給付金の受取人は誰にした方が良いのか迷ったことはありませんか?

誰を受取人でも同じように感じるかもしれませんが、実は受取人を誰にするかによって注意点などが存在します。

そこで今回は、医療保険の受取人を本人や配偶者、親など様々な人にした場合のメリットや注意点をまとめてみました。

この記事を読むことで、医療保険の受取人を誰にしたら良いかがわかるようになるのでぜひ最後までご覧ください。

医療保険の受取人は通常、契約者本人!

医療保険の保険金や給付金の受取人は、通常は契約者本人となるケースがほとんどです。

特に現在販売されている医療保険は、受取人が被保険者しか選択できないように、保険の約款で指定されている保険も多数あります。

そして、指定できるのは死亡給付部分のみで場合もあるので、注意しましょう。

そもそも保険を契約するときは、医療保険も含めて「契約者」「被保険者」「受取人」をそれぞれ設定する必要があります。

●契約者:保険契約を保険会社と結ぶ人で保険料も負担する場合が多い

●被保険者:保険の対象となる人で被保険者が入院した場合に給付金が支払われる

●受取人:保険金や給付金を受け取る人

医療保険は自分が病気やケガをして、入院した場合や手術を受けた場合に給付金を受け取るケースが多いため、契約者と被保険者と受取人が全て同じ人物であることが多いです。

一方で生命保険は、自分が亡くなった場合に保険金が受け取れるので、受取人は配偶者や子供、親などの親族となります。

医療保険の給付金や保険金は非課税

医療保険で受け取れる保険金や給付金には税金がかかりません。

非課税となる給付金は具体的に以下の通りです。

●入院給付金
●手術給付金
●通院給付金
●疾病(災害)療養給付金
●障害保険金(給付金)
●特定損傷給付金
●がん診断給付金
●特定疾病(三大疾病)保険金
●先進医療給付金
●高度障害保険金(給付金)
●リビング・ニーズ特約保険金
●介護保険金(一時金・年金) など

出典:生命保険文化センター「Q.入院給付金などには税金がかからない?また、医療費控除とはどんなもの?」

また、これらの給付金や保険金が非課税となるのは、受取人が本人や配偶者、2親等以内の親族に限られます。

そして、これらの保険金や給付金を非課税と受け取っても、相続財産として遺族に引き継がれる場合は、相続税の対象となるため注意しましょう。

医療保険の受取人を親にするメリットと注意点

医療保険の受取人を親にしている場合は、子供向けの医療保険に加入している方で、被保険者が小さい子供というケースで見られます。

そして医療保険の受取人を親にした場合も、2親等以内の親族を受取人にしているため、給付金や保険金や非課税。

注意点は、被保険者である子供が成人している場合は、受取人をあえて親にする理由が見当たらないという点です。

例えば、被保険者がガンの告知を受け、本人に知らせずに保険金の請求をしたい場合は、受取人をあらかじめ親にしておくことも考えられます。

しかし医療保険には指定代理請求特約があるため、このような状況では、受取人が被保険者と同じであっても、指定代理請求者が親だった場合は、代わりに保険金を請求可能です、

医療保険の受取人を配偶者にするメリットと注意点

医療保険の受取人を配偶者にしているケースは、家計の管理を配偶者が行なっている家庭にみられます。

受取人を親にした場合と同じく、受け取る給付金に税金がかかりません。

注意すべき点は、受取人を親にした場合と同様に、本人に告知せずに給付金を受け取りたいと考えている場合は、代理請求特約で解決できる点です。

さらに、離婚した場合には、受取人を忘れずに変更するようにしましょう。

受取人を変更せず、前の配偶者のままにしていると贈与税の対象となってしまうので注意しましょう。

医療保険の受取人を子供にするメリットと注意点

医療保険の受取人を子供にしているのは、ご自身が高齢で配偶者が既に亡くなっているようなケースが挙げられます。

ご自身が高齢で、子供以外の身寄りがいないなどは、あらかじめ受取人を子供にすることで、保険金や給付金を受け取っても管理してもらえるでしょう。

子供はご自身にとって2親等以内の家族ですので、税金もかかりません。

医療保険の受取人を家族以外の他人にするメリットと注意点

基本的に保険金や給付金の受取人は家族以外の他人にすることはできないと思っておいた方が賢明でしょう。

医療保険に限らず、保険金や給付金の受取人は、本人や配偶者、2親等以内の親族(子・親・兄弟・孫・祖父母)などと約款で定められていることがほとんどだからです。

なぜ、受取人を他人にできないかというと、「保険金目当ての殺人などの事件」を防ぐ目的があるから。

このため、どれだけ仲が良くて家族並みの関係であったとしても、友達や恋人を受取人にすることはできません。

ただし、2親等以内の親族が死亡している場合は、叔父や叔母などの3親等以内の親族を受取人にできるケースもあります。

また、婚姻関係のない「内縁の妻」でも、特定の条件(お互いに他の婚姻関係がない、特定の年数以上同居しているなど)を満たせば、受取人として認められる場合があります。

医療保険の受取人と贈与税について

医療保険において、契約者と被保険者、受取人がそれぞれ異なる場合は「贈与税」の対象となります。

贈与税の対象となる所得を求める計算式は以下の通りです。

受け取った保険金・給付金額−110万円(基礎控除額)=贈与税の対象となる所得

そして対象となる所得の額に応じた税率がかけられて、贈与税が計算されます。

※贈与税の税率表はこちらのサイトを参照してください。

このため、受け取った保険金や給付金の額が110万円を超えていると、支払った保険料の額に関係なく税金の支払いが発生するため注意しましょう。

医療保険の給付金は、死亡保険の保険金と比べて少額のため、保険金や給付金の額が110万円を超えない場合も多いです。

しかし、がん保険に加入していた場合の、診断給付金などは200万円や300万円と高額になるため、贈与税の対象となってしまいます。

例えば、保険金を200万円受け取った場合の贈与税を計算すると以下の通りです。

【贈与税の対象となる所得】

200万円−110万円=90万円

対象の所得が200万円以下の場合の税率は10%なので、

【贈与税の額】

90万円×10%=9万円

となります。

このように場合によっては、高額の税金が発生する場合があるので注意しましょう。

医療保険の受取人と年末調整、保険料控除について

医療保険は、生命保険料控除の対象のため、年間で支払った保険料に応じた額が所得から控除されて、所得税や住民税の負担を減らすことができます。

生命保険料控除を受けるためには、「保険金受取人が、契約者かあるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)」でないといけません。

しかし、医療保険金の受取人は基本的に本人や配偶者、親族ですので、心配する必要はないでしょう。

生命保険料控除を受ける方法は「確定申告」もしくは「年末調整」

医療保険で生命保険料控除を受けるには、確定申告や年末調整で申告する必要があります。

このため、ただ保険に加入して保険料を支払っているだけでは、生命保険料控除を受けることができません。

生命保険料控除を申請するときは、保険会社から送付されてくる「保険料控除証明書」を元に申告書類を作成していきます。

保険料控除証明書はハガキや手紙のような形をしているため、誤って捨てないように大切に保管してくださいね。

確定申告や年末調整の対象者や、申請方法などは下表を参照してください。

対象 時期 申請方法 申請先
確定

申告

自営業や

フリーランス

翌年2月16日〜

3月15日

確定申告書を作成し郵送、もしくは持参 お住まいの住所を管轄している税務署
年末

調整

会社員や

公務員

年末11月ごろ 給与所得者の保険料控除申告書を作成し提出

※勤務先により申請方法は異なる

勤務先

医療保険は介護医療保険料控除の対象

医療保険は、契約した年月日によって、適用される生命保険料l控除の枠がことなります。

これは、契約の年月日によって、適用される生命保険料控除が「新制度」か「旧制度」のどちらかに分かれるためです。

平成24年1月1日以降に契約した医療保険

医療保険で支払った保険料は、「新制度」の生命保険料控除が適用されるため、「介護医療保険料控除」の対象となります。

所得から控除される額は、以下の通りです。

●所得税:最大で4万円(年間保険料が8万円を超える場合)
●住民税:最大で2.8万円(年間保険料が5.6万円を超える場合)

新制度の生命保険料控除は、他にも「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」などの合計3分野に分かれているため、死亡保険と医療保険やがん保険の控除枠が分かれています。

このため、加入の仕方によっては、旧制度に比べてより多くの税金が減らせる可能性があります。

平成23年12月31日以前に契約した医療保険

この場合は「旧制度」の生命保険料控除が適用されるため、「一般生命保険料控除」の対象です。

旧制度の控除額は以下の通りです。

●所得税:最大で5万円(年間保険料が10万円を超える場合)
●住民税:最大で3.5万円(年間保険料が7万円を超える場合)

これだけを見ると新制度よりも控除枠が大きいように感じますよね。

しかし、旧制度は医療保険と死亡保険や積立保険などの枠が同じなので、これらの保険料が全て合算されます。

このため、すでに大きな死亡保障に加入しており、たくさん保険料を支払っている場合は注意が必要です。

医療保険の受取人が誰か分からない場合の確認方法

医療保険の受取人が誰かわからないときは、以下の方法で確認できます。

●「保険証券」を確認する
●保険会社に問い合わせる

保険証券は、保険を契約した時に必ず発行されるものですので、捨てない限りは必ずあります。

もし見当たらない場合は、保険会社に問い合わせることで教えてくれますが、生年月日を聞かれるのなどの本人確認が行われ、時間がかかる可能性があるので注意しましょう。

とくに年末調整で必要書類を記入する時に、受取人を記載する欄があるため、分からない場合は事前に確認しておきましょう。

医療保険の受取人が死亡した際や変えたい時の変更方法

医療保険の受取人が死亡した場合は、受取人がどなたかによって対応が変わります。

医療保険の受取人が被保険者本人の場合

医療保険の受取人を本人にしていた場合、入院後に容体が悪化し給付金を受け取ることなく、受取人が亡くなってしまうケースがあります。

このときは、受取人が受け取るはずだった給付金は相続財産となり、相続税の課税対象です。

相続税は相続した財産全てに課税されるわけなく、一定の額には税金がかかりません。

ただし、事前に遺言状にて保険金の受取人を変更することができます。

このとき、遺言状が本当に本人の意思で作成されたものと認められなかった場合は、変更できません。

このため、遺言状は法律に則って正しく作成するようにしましょう。

医療保険の受取人が被保険者以外の場合

医療保険の受取人が亡くなってしまった場合は、速やかに変更の手続きを行いましょう。

受取人を変更していないと給付の手続きがスムーズに行かない場合もあります。

そして、自分は病床で変更の手続きができない可能性もあるため、注意しましょう。

まとめ

この記事では、医療保険の受取人について解説してきました。

医療保険の受取人は基本的に、被保険者と同じ人物にしなければいけないため、受取人を選択することはあまりないのかもしれません。

特に2親等以内の家族でなければ、死亡保険金の受取人にする設定できないため、家族以外の人を受取人にしようと考えている人は注意しましょう

しかしなんらかのこだわりがあって、医療保険の受取人を被保険者以外にしたい場合は、保険会社に引き受けてもらえるかどうかの確認をする必要があります。

受取人をなぜ本人以外にしたいのか、を明確にして自分にあった医療保険の受取人を設定するようしましょう。

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