自殺で保険金は支払われる?自殺をしたら死亡保険金は家族に支払われるのか※自殺はダメ絶対!
自殺や他殺の場合には生命保険の保険金は支払われるのでしょうか?
支払われる場合と支払われない場合とがありますが、これは生命保険の本来の主旨や約款といわれる生命保険の契約上の取り決めによって判断されています。
自殺をすることで生命保険金が支払われる場合も確かにありますが、自殺して保険金支払いをしてもらおうなどと安易な考えは起こさず、社会的なセーフティーネットの利用を検討するようにしましょう。
目次
自殺で保険金が支払われないのはどんな時か
自殺で生命保険が支払われない場合はいくつかのケースに分かれています。
これらのケースについて順番に説明していきましょう。
免責期間内の場合
契約してから2年以内(3年とする場合もあり)の場合は、自殺での保険金支払いは免責となっています。
免責とは、保険会社が保険金を支払う責任から免れている、という意味で、保険金の支払いはありません。
この契約してから2年間は免責期間となり、自殺では保険金は支払われないのです。
保険金目当ての場合
保険金目当てとは、万が一の場合に備えた保険加入ではなく、ギャンブルで借金が返済できなくなり、保険金での返済を目当てとして自殺したと判断される場合などが当てはまります。
告知義務違反をしていた場合
告知義務違反とは、保険加入時に実際とは異なる健康状態を告知書などで記載していた場合です。
例えば吐血をしていたような健康状態であったにも関わらず告知せずに保険に加入して、そのあと不治の病であることを苦にして自殺したようなケースが想定されます。
こうした場合には告知義務違反と自殺理由に関係があるとみなされるため、保険金が支払われないことがあるのです。
犯罪行為をしていた場合
犯罪行為をしていた場合とは、例えば覚せい剤などの薬物を乱用して自殺した場合などが該当します。
こうした場合の自殺には保険金は支払われません。
生命保険約款での定め
自殺で保険金が支払われない場合を説明してきましたが、生命保険の契約上の取り決めを記載した生命保険約款ではこれらの支払われない場合をどのように記載しているのでしょうか。
生命保険約款は各社で異なるため、まとめて整理されている公益社団法人生命保険文化センターから引用して紹介しましょう。
保険金・給付金が受け取れない場合は、
(1)支払事由に該当しない場合、
(2)免責事由に該当した場合、
(3)告知義務違反による解除の場合、
(4)重大事由による解除・詐欺による取消に該当する場合や保険金等不法取得目的による無効の場合
の4通りが考えられます。
生命保険会社によって若干、取り扱いが異なりますが、主に次のとおりです。
(1)支払事由に該当しない場合
保険金・給付金が受け取れるのは、約款所定の支払事由に該当した場合です。支払事由に該当しない場合には保険金・給付金は受け取れません。
〔1〕支払事由の原因が責任開始前に生じている場合
高度障害保険金や入院給付金など(死亡保険金は除きます)について、保障の責任開始期(日)前に生じた病気やケガを原因とする場合は、約款に特に定めがない限り、保険金・給付金は受け取れないのが一般的です。
(中略)
(2)免責事由に該当した場合
約款所定の「免責事由」(支払われない事由)に該当した場合、保険金・給付金は受け取れません。
《死亡保険金(給付金)の免責事由の例》
契約した保険の責任開始期(日)または復活日から一定期間内(1~3年)に被保険者が自殺したとき。
契約者または死亡保険金(給付金)の受取人の故意によるとき。
戦争その他の変乱によるとき。ただし、その程度によっては全額または一部を受け取れる場合があります。
(中略)
(3)告知義務違反による解除の場合
現在の健康状態、過去の傷病歴、職業などについて事実を告げなかったり、偽りの告知をしたなどの「告知義務違反」があった場合は、営業職員などから告知を妨げられたり、告知をしないことを勧められたときなどを除き、告知義務違反により契約・特約が解除となり、保険金・給付金が受け取れないことがあります。
告知義務違反があった場合、責任開始日(復活の場合は復活日)から2年以内であれば、生命保険会社は契約を解除することができます。
ただし、責任開始日(復活の場合は復活日)から2年を経過していても、支払事由が2年以内に発生していた場合には、契約が解除されることがあります。
(中略)
(4)重大事由による解除、詐欺による取消、不法取得目的による無効の場合
「保険金や給付金などをだましとる目的で事故を起こした」などの重大事由で契約が解除となった場合、また、契約の加入や復活に際して詐欺行為や保険金を不法に取得する目的の行為があり契約が取消・無効となった場合には、保険金・給付金は受け取ることができません。
自殺でも保険金が支払われるのはどんな時か
それでは逆に自殺でも保険金が支払われる場合はあるのでしょうか。
結論から言いますと、自殺でも保険金が支払われる場合はあります。
以下に支払われる可能性があるケースを紹介していきたいと思います。
免責期間を過ぎている場合
さきほど契約から2年以内は免責期間として自殺した場合には保険金が支払われないことを説明しました。
これは逆に言えば、契約から2年を超えれば免責期間を過ぎることになるので自殺であっても保険金は支払われることになります。
精神的疾患などで意思能力がなかったと判断される場合
精神的疾患で自殺をするという意思能力がなく、結果的に死亡してしまったと判断される場合は、外観としては自殺ですが自殺ではないと判断して保険金が支払われることがあります。
保険金目的ではないと立証される場合
先ほど保険金目当ての自殺では保険金は支払われないと説明しましたが、突発的な衝動での自殺など、保険金目当ての自殺ではなかったと立証されることがあります。
こうした場合には保険金が支払われることがあります。
保険会社が自殺への保険金支払いを判断する基準は?
それではここで生命保険会社が自殺への保険金支払いを判断する基準を整理しておきましょう。
最初のポイントは免責期間です。
免責期間である2年以内の自殺は保険金の支払いとなりません。
例外として精神疾患の場合に自殺と判断されない死亡には支払いの対象となる場合があります。
次のポイントは自殺の理由や状況です。
2年の免責期間を過ぎていたとしても、保険金目当てや犯罪行為の場合には保険金は支払われないことになります。
しかしながらそれ以外の理由であれば通常と同じく保険金は支払われることになります。
保険金の支払いに関する手続き
保険金の支払いに関する手続きについて確認しておきましょう。
手続きは次の3ステップに分けて考えていきます。
(1)保険契約をすべて確認する(保険証券を探す)
(2)保険会社の問い合わせ先(コールセンター)に連絡して手続き書類を送ってもらう
(3)手続き書類を準備して保険会社に提出し、後日入金を確認する
保険契約をすべて確認する
最初のステップは保険契約を確認することから始めます。
亡くなった方が契約者として保険契約を管理していることも多いため、遺族の方にとってはどのような保険契約を取り交わしていたのかが分からないことがあります。
保険証券という形で保険契約の存在を調べるとともに、故人の銀行通帳の口座振替の履歴などを確認しましょう。
保険証券がなくとも、こうした口座振替の履歴から保険に入っていたことが判明する場合があるのです。
保険会社に連絡して手続き書類を送ってもらう
保険契約がすべて洗い出せたら、各保険会社のコールセンターなどの問い合わせ先に連絡して、保険金の支払いに必要な手続き書類を送ってもらいます。
その際に気を付けたいのが、複数契約の存在です。
ある保険だけではなく、期間をあけて別の保険に加入していた、ということもよくある話です。
保険会社に連絡した際には他の契約の存在有無を必ず確認するようにしてください。
手続き書類を準備して提出、入金確認をする
手続き書類が送られてきたら、記入する書類と、遺族の方が公的機関などにいって手配する書類とを整理します。
複数の保険会社に契約がある場合は、それぞれに公的機関の書類が必要になりますので、二度手間にならないよう、整理してから手配に動くとよいでしょう。
ここで参考として、死亡保険金の支払い請求で必要とされる書類一覧を引用しておきましょう。
死亡保険金の請求書類
(1)当会社所定の請求書
(2)医師の死亡診断書または死体検案書(ただし、当会社が必要と認めた場合は当会社所定の様式による医師の死亡説明書)
(3)被保険者の死亡事実が記載された住民票(ただし、当会社が必要と認めた場合は戸籍抄本)
(4)死亡保険金受取人の戸籍抄本
(5)死亡保険金受取人の印鑑証明書
(6)最終の保険料払込を証する書類
(7)保険証券
保険金目的の自殺を防ぐために~金銭に行き詰まった時に考える3つの方法
「自分が自殺することで保険金が支払われるのであれば自殺しよう。」
決してこんな風には考えないでください。
ここでは金銭的なトラブルや生活困窮になった場合などに利用できるセーフティーネットを紹介していきます。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、社会福祉法人全国社会福祉協議会が運営する制度です。
生活に困窮しているが通常の金融機関からは借入することができない対象の支援を目的としています。
この後ご紹介する生活困窮者自立支援制度とも連動している制度となります。
概要について以下の通り引用しますのでご確認ください。
生活福祉資金について
「生活福祉資金貸付制度」は、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉及び社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。
本貸付制度は、都道府県社会福祉協議会を実施主体として、県内の市区町村社会福祉協議会が窓口となって実施しています。低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯等世帯単位に、それぞれの世帯の状況と必要に合わせた資金、たとえば、就職に必要な知識・技術等の習得や高校、大学等への就学、介護サービスを受けるための費用等の貸付けを行います。
また、本貸付制度では、資金の貸付けによる経済的な援助にあわせて、地域の民生委員が資金を借り受けた世帯の相談支援を行います。
平成27年4月から施行された生活困窮者自立支援制度は、生活上のさまざまな課題を抱えた方に、包括的な相談支援を継続的に行うことにより、自立の促進を図ることを目的としています。
この生活困窮者自立支援制度の施行に伴って、本貸付制度においても、より効果的に低所得世帯等の自立支援を図るために、生活困窮者自立支援制度と連携した貸付を行うこととして、その見直しが行われました。総合支援資金と緊急小口資金の貸付にあたっては、就労支援をはじめ包括的な支援が必要であることから、就職が内定している者等を除いて生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の利用を貸付の要件とすることになりました。
(1)貸付対象
生活福祉資金の貸付けの対象となる世帯は下記のとおりです。
低所得世帯…資金の貸付けにあわせて必要な支援を受けることにより独立自活できると認められる世帯であって、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)。
(後略)
生活困窮者自立支援制度
平成27年から開始された制度で、生活保護を受ける手前で自立できる生活者を支援する制度として設立されました。
制度概要は以下の通りです。
新制度においては、全国の福祉事務所設置自治体が実施主体となって、官民協働による地域の支援体制を構築し、自立相談支援事業、住居確保給付金の支給、就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業その他生活困窮者の自立の促進に関し包括的な事業を実施します。また、都道府県知事等は、事業者が、生活困窮者に対し、就労の機会の提供を行うとともに、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等を行う事業を実施する場合、その申請に基づき一定の基準に該当する事業であることを認定する仕組みを設けます。
自立相談支援事業は、生活困窮者からの相談に早期かつ包括的に応ずる相談窓口となります。ここでは、生活困窮者の抱えている課題を適切に評価・分析(アセスメント)し、その課題を踏まえた「自立支援計画」を作成するなどの支援を行います。また、関係機関との連絡調整や支援の実施状況の確認なども行います。
なお、自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給については、福祉事務所設置自治体が必ず実施しなければならない必須事業として位置付けられている一方、その他の事業については、地域の実情に応じて実施する任意事業とされています。
引用_厚生労働省
生活保護制度
生活福祉資金貸付制度や生活困窮者自立支援制度でも生活が困難な場合には生活保護制度を利用することができます。
制度の趣旨
資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。(支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なります。)
保護の種類と内容
以下のように、生活を営む上で必要な各種費用に対応して扶助が支給されます。
生活を営む上で生じる費用 扶助の種類 支給内容 日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等) 生活扶助 基準額は、 (1)食費等の個人的費用
(2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。
特定の世帯には加算があります。(母子加算等)
アパート等の家賃 住宅扶助 定められた範囲内で実費を支給 義務教育を受けるために必要な学用品費 教育扶助 定められた基準額を支給 医療サービスの費用 医療扶助 費用は直接医療機関へ支払
(本人負担なし)介護サービスの費用 介護扶助 費用は直接介護事業者へ支払
(本人負担なし)出産費用 出産扶助 定められた範囲内で実費を支給 就労に必要な技能の修得等にかかる費用 生業扶助 定められた範囲内で実費を支給 葬祭費用 葬祭扶助 定められた範囲内で実費を支給
引用_厚生労働省
自己破産
生活保護を受けるだけではどうにもならない借金がある、という場合もあるかもしれません。
そうした返済が困難な場合の最終手段として自己破産という制度があります。
自己破産とは、裁判所を通じて自分が保有する財産を清算し、借金を免除してもらう手続きです。
返済も出来ず逆に借金が雪だるま式に増えていくような状況で、借金を整理する方法の一つが「自己破産」です。
自己破産を検討する場合は弁護士事務所に相談をすることになります。
事故死や他殺などの場合保険金は支払われるのか
先ほどまでは自殺の場合について説明をしてきましたが、事故死や他殺などの場合に保険金は支払われるのでしょうか。
これらの場合についてもいくつか場合分けをして順番に説明していきましょう。
事故死の場合について
まず事故死の場合について確認していきましょう・
不慮の事故であれば支払われる
不慮の事故であれば保険金の支払いの対象となります。
これはまさに生命保険本来の主旨である偶発的な事由(ここでは事故死のこと)によるものなので、支払いの対象となるのです。
もちろん自殺を目的とした事故死では対象となりませんので注意が必要です。
酒気帯び運転など法令違反での事故死は支払い対象外
酒気帯び運転などの法令違反での事故死は犯罪行為での自殺と同じく、支払い対象となりません。
生命保険は公序良俗に反する行為に対しては保険金の支払いはないと理解しておきましょう。
戦乱、地震、噴火などは支払われない
戦乱、地震および噴火では保険金は支払われないのでしょうか。
戦乱や地震・噴火などによる事故死は生命保険が本来の主旨としている偶発的な事由であることは間違いありません。
しかしながら、交通事故での事故死のような通常の生活における偶発的な事由が生命保険で前提としている対象です。
戦乱・地震・噴火などの非日常的で多数の死傷者が発生するような事態は生命保険の仕組みそのものを破たんさせてしまうため、保険金の支払いは免責となっているのです。
他殺の場合について
次に他殺の場合について確認してみましょう。
犯罪行為によって他殺された場合は支払われない
他殺された人が犯罪行為をしていた場合には保険金は支払いの対象となりません。
これは先ほどの酒気帯び運転などの犯罪行為で事故死した場合と同様に、公序良俗の原則に反することになるからです。
契約者や受取人による他殺では支払われない
他殺された人に犯罪行為がない場合でも保険金が支払われない場合があります。
それが、その保険の契約者や受取人による殺害の場合です。
これはまさに他殺された人が亡くなることによって保険金が受取人に支払われることを知っていることが前提となっているため、保険金目当ての他殺と判定されるためです。
【番外編】海外では安楽死の場合、保険金は支払われるのか
安楽死とは、一般的には医師などが患者に致死薬を投与することなどによって患者の命を能動的に終わらせること、とされています。
ここに患者の意思がどのようにかかわるかで、患者の自殺の意思があった場合に、医師による患者に対する自殺ほう助(自殺を助けること)と呼ばれることもあります。
ただし、欧米では自殺という言葉にはネガティブな意味合いが含まれているということで、医療的に補助された死亡(Medical Assested Dying)と呼ばれることが多いです。
カナダやオーストラリア(ビクトリア州)などは安楽死および医師自殺ほう助も法的に整備されており、その法的な範囲内での医師の行為は罪に問われることはありません。
実態としては不治の病での病死の前に安楽死を望むケースが多いため、こうした安楽死による死亡であったとしても、保険金の支払いは通常と同様に処理されることになります。
まとめ
自殺や他殺において、どのような場合に保険金は支払われて、どのような場合に支払われないかを確認してきました。
生命保険会社の保険金支払いの判断は、生命保険の本来の主旨や約款といわれる生命保険の契約上の取り決めに基づいています。
自殺で生命保険金が支払われることはありますが、安易な考えは起こさず、社会的なセーフティーネットの利用を検討するようにしましょう。