女性保険は出産や妊娠関連の入院や通院でも保障される?FPが気になる保障を解説
出産に対して女性保険ではどのような保障となっているのでしょうか。
出産に対して保障している女性保険といえば医療保険が代表的な保険となります。
医療保険に加入していた場合には、出産時の状況によって保障対象か否かが分かれることになります。
今回は具体的な状況ごとに女性保険の保障対象となるのか否かについてわかりやすく説明していきたいと思います。
目次
女性保険は妊娠・出産でも保障対象?ケース別にシュミレーション
女性保険は妊娠・出産時において、どのような保障となっているのでしょうか。
ケース別に保障の対象となるのかどうかについて確認をしていきましょう。
自然分娩は保障の対象になる?
自然分娩は自然の陣痛発来を待って、特段の医療処置を行わずに経膣分娩となるものです。
自然分娩は通常分娩といわれることもあるとおり、女性保険では保障対象とはなりません。
なぜなら、女性保険で入院や手術の対象となるのは、あくまでも医療機関での治療を目的とした入院・手術であることが前提であるからです。
こうした観点でいうと自然分娩は病気ではなく、治療を要しないため、女性保険の対象とはならないのです。
帝王切開は保障の対象になる?
帝王切開は自然分娩(経膣分娩)が難しい場合に妊婦の腹部を切開して胎児を出産させる方法です。
自然分娩が難しいということは通常分娩ではない(異常分娩である)ということになり、これは女性保険の入院・手術の対象となります。
無痛分娩は保障の対象になる?
無痛分娩とは自然分娩での苦痛を和らげるために麻酔などの処置をして出産を行うことです。
この無痛分娩は欧米でポピュラーなため日本においても無痛分娩を望む方が徐々に増えてきています。
ではこうした無痛分娩で入院・手術をした場合は女性保険の対象となるのでしょうか。
結論からいうと、ほとんどの場合で対象とはなりません。
理由は、無痛分娩はというのは妊婦の意思による任意の選択になるため、医師の治療には該当しないという考え方が前提としてあるためです。
計画分娩は保障の対象になる?
計画分娩とは、自然な陣痛発来を待つということではなく、事前に出産予定日をきめておき、その日程にそって分娩されるようにしていくことです。
出産を誘発させるという意味から誘発分娩といわれることもあります。
計画分娩は無痛分娩と併用して実施されることが多いのですが、こちらも任意で選択する分娩のため、基本的に女性保険の保障対象とはなりません。
ただし、計画分娩といっても自然分娩での出産予定日を超過して早期に出産させた方がよいということで医師の判断により分娩を起こした場合には医療処置となる場合があります。
こうした場合には計画分娩であったとしても女性保険の対象となる可能性がありますので注意をしてください。
吸引分娩は保障の対象になる?
吸引分娩とは、胎児があと少しで出産という場合に産道からなかなか出てこられない場合に胎児を吸引することで出産を促進させる方法です。
この吸引分娩は自然分娩が困難である状況下において医師の判断により実施される医療処置であることから、異常分娩の区分に整理されることになります。
したがって女性保険の入院や手術の保障対象となります。
鉗子分娩は保障の対象になる?
鉗子分娩(かんしぶんべん)とは吸引分娩と同じく、自然分娩で胎児がなかなか出てこられない場合に、鉗子という器具を使って胎児の引き出す方法です。
近年では鉗子分娩よりも吸引分娩の方が多く実施されているようですが、この鉗子分娩も医師の判断により実施される医療処置のため、基本的には女性保険の保障対象となるのです。
会陰切開は保障の対象になる?
会陰切開ですが、状況に応じて女性保険の保障の対象になるかどうかが別れます。
自然分娩の一環として出産しやすくするために会陰切開を行う場合は公的医療保険の対象とならず医療処置とはならず、分娩介助費用として扱われます。
そうすると、女性保険の入院・手術の対象にもなりません。
しかし自然分娩ではなく異常分娩となった医療処置のなかで行われた会陰切開であれば、医療処置となり、女性保険の保障対象となるのです。
妊娠・出産でも保障される女性保険のメリット
ここまで確認してきたとおり、帝王切開、吸引分娩、鉗子分娩などの医療処置が必要な異常分娩となった場合に女性保険の入院・手術の対象となります。
こうした入院・手術には治療費の自己負担がかかりますので、女性保険の給付金を受け取ることで経済的な負担が軽減されるメリットがあるのです。
妊娠・出産でも保障される女性保険のデメリット
一方で女性保険のデメリットですが、妊娠・出産したとしても自然分娩であれば医療処置とはならず、女性保険の保障対象とはなりません。
また無痛分娩や計画分娩などの任意に選択した出産方法も費用がかかったとしても、女性保険の対象とはならないので注意が必要です。
妊娠・出産に必要な費用
妊娠・出産でかかる費用は一体どれぐらいになるのでしょうか。
統計データ(詳細は参考サイト参照)によると、「正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)」では平均505,759円となっています。
そんな費用がかかるの?!と思われた方がいらっしゃるかもしれませんがご安心ください。
この後ご説明する公的な支援制度によって自己負担額は軽減されています。
参考サイト⇒公益社団法人 国民健康保険中央会
妊娠・出産でもらえる公的支援制度
妊娠や出産においてもらえる公的支援について紹介をしていきます。
こうした支援制度を利用することで妊娠や出産に関する負担額を軽減することができますので、必ず活用するようにしてください。
妊婦検診の助成制度
妊娠後、医療機関や助産院で検診を受けた場合(14回分)に、各自治体から検診自己費用の助成があります。
助成の金額は自治体によって異なっています。
具体例として東京都港区における妊婦健診の助成制度を参考に引用しましよう。
未使用の受診票の提出(返却)枚数の相当分について、下記の金額(都内の妊婦健康診査委託医療機関で受診票を使用した場合の公費負担額と同額)を上限に助成します。実費が上限額に達しない場合は、実費が助成額です。助成対象は、原則、受診票に記載されている項目で、受診の際に要した費用のうち保険適用外の自己負担額です。(助産院の場合は、妊婦健康診査 2 回目から 14 回目のみが助成対象です。)
引用_港区ホームページ
上記引用のなかで「下記金額を上限に助成します」とありますが、港区の場合は1回目の女性の助成金上限金額は10,850円、2回目以降は5,070円となっています。
お住まいの地域の助成制度は必ず確認しておきましょう。
健康保険の支援制度
健康保険(組合)からの支援制度を紹介します。
出産育児一時金制度といわれるものです。
こちらも具体的な例として全国健康保険協会(協会けんぽ)から引用して説明しましょう。
子どもが生まれたときは出産育児一時金が受けられます。
出産育児一時金は、被保険者及びその被扶養者が出産された時に協会けんぽヘ申請されると1児につき42万円が支給されます。(産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は39万円(平成27年1月1日以降の出産は40.4万円)となります。)
※多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。
これまで通常分娩(正常分娩)では医療処置とはならず女性保険の支払対象にならないと説明してきましたが、この出産育児一時金は通常分娩であっても支給されます。
なお、出産育児一時金の受け取り方には、出産した医療機関がかわりに請求をしてくれて医療費と相殺をしてくれる場合もあります。
(直接支払制度、受取代理制度といわれます。)
出産を経験された方で「私は請求していなかった!」という方でも、医療機関が請求をしてくれていたということが多いので、落ち着いて医療明細や領収書を確認するようにしてください。
女性保険は妊娠前に入った方がいい?妊娠が発覚した後でも加入できる保険はあるの?
女性保険は女性特有の病気やケガの場合に手厚い保障をすることを前提に設計されています。
そして妊娠や出産はまさに女性特有の病気やケガに該当するイベントとなります。
もし妊娠が発覚した後に女性保険に加入しようとなるとどうなるでしょうか?
妊娠をしている場合は加入することができないか、出来たとしても特別条件が付く場合が多いです。
妊娠後の加入は特別条件がついてしまう
特別条件とは、妊娠した人が加入した後に、妊娠や出産で病気やケガになった場合は給付金を支払わないという条件です。
せっかく女性保険に加入しても妊娠や出産で病気やケガになったとしても給付金が受け取れないというのでは保障として不十分だと思われることでしょう。
こうしたことから、女性保険には妊娠前に加入をしておくことが重要です。
妊娠・出産に必要な費用と女性保険に加入していた場合のシミュレーション
妊娠・出産をした場合に必要な費用と、支払の対象となるようなケースが発生した場合に女性保険がどのように役立つのかをシミュレーションしてみましょう。
初産となる女性のモデルケース
33歳女性のAさんは結婚4年目で旦那さんと共働き、ご自身は一般企業に勤めています。
結婚された時に女性保険の一つである医療保険に加入して現在も継続しています。
10ヶ月ほど前に妊娠が発覚し、自然分娩で初産を迎える予定でしたが、出産時に胎児が産道からでにくいため医師の判断により吸引分娩を行ないました。
無事出産となりましたが、吸引分娩を行ったこともあり、産後の療養だけではなく治療も含めて医師の指示で入院7日間となり、その後無事に退院となりました。
妊娠・出産で必要な費用と女性保険の給付金
妊娠と出産でかかる費用は先ほど確認したとおり約50万円です。
一方、妊婦健診での助成金合計額は約6万円、勤務先での健康保険から出産育児一時金42万円となります。
結婚時に加入していた女性保険は、入院一日につき5,000円ですが女性特有での入院では倍額となって10,000円となる保障となっていました。このため7日間の入院では7万円の支払いとなります。
費用は50万円に対して支援や女性保険の給付金で合計55万円となり、妊娠・出産に関する費用が手当てでてたことになります。
妊娠や出産の際に保障される女性保険3選
妊娠や出産の際に保障される女性保険を具体的に紹介していきましょう。
これから紹介する3つの女性保険はいずれも異常分娩など、妊娠や出産での医療処置にともなう入院や手術の場合に保障される保険となります。
東京海上日動あんしん生命のメディカルKitNEO女性プラン
最初にご紹介するのは東京海上日動あんしん生命のメディカルKitNEO女性プランです。
この女性保険は、女性特有の病気、三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)の場合に給付金が上乗せされます。
また、乳がん(乳房の悪性新生物)で乳房切除し、乳房再建手術をうけたときに給付金が支払われるという充実した保障となっています。
妊娠・出産時の保障
メディカルKitNEO女性プランの場合、出産時の異常分娩がしっかりと保障されています。
具体的にメディカルKitNEO女性プランのご契約のしおり・約款から該当部分を抜粋しますのでご確認ください。
別表8 異常分娩
「異常分娩」とは、平成6年10月12日総務庁告示第75号に定められた分類項目中、次の基本分類コードに規定される内容を伴う分娩とし、分類項目の内容については、厚生労働省大臣官房統計情報部編「疾病、傷害および死因統計分類提要ICD-10(2003年版)準拠」によるものとします。
・妊娠、分娩および産じょく<褥>における浮腫、たんぱく<蛋白>尿および高血圧性障害
・主として妊娠に関連するその他の母体障害
・胎児および羊膜腔に関連する母体ケアならびに予想される分娩の諸問題
・分娩の合併症
・分娩(単胎自然分娩(O80)は除く)
・主として産じょく<褥>に関連する合併症
・その他の産科的病態、他に分類されないもの
引用_東京海上日動あんしん生
参考サイト⇒東京海上日動あんしん生命
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命のフェミニーヌ
次に紹介するのは損保ジャパン日本興亜ひまわり生命のフェミニーヌです。
女性保険の先駆的医療保険であり、ロングセラーとなっています。
特徴としては、女性特有の病気の場合に手厚い保障となっている他に、一入院の限度が180日となっておりしっかりと長期入院が保障されていることです。
また3年毎に15万円の生存給付金が受け取れるのも特徴です。
その分保険料が割高となっていますが貯蓄も兼ねて加入したいというニーズにも応える女性保険となっています。
出産時の保障は?
フェミニーヌの場合も異常分娩の場合にしっかりと保障がついています。
公的医療制度の支払対象となった場合(いわゆる医療行為、医療処置)に、異常分娩という位置づけになり、フェミニーヌとしての支払いの対象となります。
別表2
1.異常分娩
異常分娩とは、分娩のうちつぎの2.に定める公的医療保険制度による「療養の給付」の対象となる分娩をいいます。
2.公的医療保険制度
「公的医療保険制度」とは、健康保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、船員保険法または高齢者の医療の確保に関する法律のいずれかの法律に基づく医療保険制度をいいます。
参考サイト⇒損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
メットライフ生命の終身医療保険 フレキシィS[女性専用タイプ]
最後に紹介するのはメットライフ生命の終身医療保険 フレキシィS[女性専用タイプ]です。
フレキシィS[女性専用タイプ]も女性特有の病気やがんの場合などに倍額の入院保障となっている他に、短期入院定額保障ということで入院日数が短期(10日以内)であった場合でも一律10万円が支払われるといった点が特徴です。
妊娠・出産時の保障一覧
フレキシィS[女性専用タイプ]の妊娠・出産時の保障をご契約のしおり。
約款から引用すると以下の通りとなっています。
終わった妊娠
妊娠、分娩および産じょく〈褥〉における浮腫、たんぱく〈蛋白〉尿および高血圧性障害主として妊娠に関連するその他の母体障害
胎児および羊膜腔に関連する母体ケアならびに予想される分娩の諸問題
分娩の合併症
単胎自然分娩のうち
・自然骨盤位分娩
・鉗子分娩および吸引分娩による単胎分娩
・帝王切開による単胎分娩
・その他の介助単胎分娩
・多胎分娩主として産じょく〈褥〉に関連する合併症
その他の産科的病態、他に分類されないもの
引用_メットライフ生命
参考サイト⇒メットライフ生命
まとめ
妊娠・出産の具体的なケースにおいて女性保険が対象となるのか、ならないのかについて確認をしてきました。
妊娠・出産に対しては公的な支援制度があるため経済的なサポートは充実していますが、異常分娩にともなう医療費の自己負担額やその他の費用を手当てするために女性保険の活用を検討されることをお勧めします。