老齢基礎年金とは~FPが教える手続きと繰り上げ・繰り下げシミュレーション

2024.07.16

個人年金保険

年金と聞けば誰でもどんな制度かだいたい説明ができますが、詳細な仕組みや細かな種類などをきちんと把握できているという人はごくわずかです。

この記事ではそんな年金の中でも“老齢基礎年金”と“老齢厚生年金”について詳しく解説していきます。

これらの年金と合わせて知っておきたい用語や受給制度についても触れているので、年金の制度そのものを詳しく知り、将来自分が年金を受給する時に損したくないという人は是非読んでみてください。

目次

老齢基礎年金って何?老齢基礎年金の概要

老齢基礎年金とは日本における公的年金制度(現役で働いている世代と国が一丸となって社会全体の働けない高齢者、障害者、遺族を保障する制度)で保障している『老齢年金・障害年金・遺族年金』の老齢年金として受け取れる年金の一種です。

日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人なら誰でも国民年金(基礎年金ともいう)への加入が義務付けられています。

これを国民皆保険と言い、加入者=被保険者はそれぞれの職業や扶養の有無で3種類に分けられています。

第1号被保険者は自営業者・農業従事者・学生・無職の人など/第2号被保険者が公務員・会社員/第3号被保険者が第2号被保険者に扶養されている配偶者(男女問わず)です。

この誰でも加入している国民年金から65歳以上になった時に一生涯、毎年受け取れる老齢年金の事を老齢基礎年金と呼びます。

受給額は基本的に物価の変動や社会情勢などで前後しますが満額の支給額が決まっていて、そこから保険料納付を免除された期間や未納期間などが加味されて個人に支給される金額が決まります。

老齢基礎年金の受給資格は?

日本年金機構のサイトを見てみると老齢基礎年金の受給資格は次のように書かれています。

20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。

引用_老齢基礎年金の要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構

この国民年金は20歳になったら自動的に加入されるものではありません。

あくまでも任意での加入になるのでまず最初に加入手続きが必要になります。

20歳を迎える月かその前月に『国民年金被保険者関係届書』というものが手元に届き、必要事項を記入して市・区役所や町村役場、年金事務所に提出します。

すると手元に年金手帳と合わせて保険料の納付書も届くので保険料を納めていきましょう。

いつから支給される? ⇒どんな条件を満たせば受給できる?

老齢基礎年金は昭和16年4月2日以降に生まれた人と、昭和16年4月1日以前で生まれた人とで年金額が若干変わります。

年金の支給要件(支給されるのに絶対必要な条件)は変わりません。

基本的には20歳になってから国民保険料を納めた納付済みの期間と、一般的に学生身分であるような人が申請する免除期間が合計で10年以上であれば原則65歳になれば支給されます。

保険料納付済み期間+保険料免除期間を合算しても10年にならない場合でも、合算対象期間も含んで10年以上になれば支給要件を満たしたと判断されます。

この合算対象期間は様々な理由で国民保険の任意加入をしていなかった人でも支給要件を満たせるよう考えられているもので、海外に移住していた・国民保険に加入しているのに保険料が未納になっていた・船員保険に入っていたなど様々な期間が対象となっています。

この期間は昭和61年4月1日以降、昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間、昭和36年3月31日以前の3つで対象となる期間が異なりますので注意が必要です。

参考_合算対象期間|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/jukyu-yoken/20140421-05.html

老齢基礎年金はいくらもらえる?

老齢基礎年金の平成31年4月分からの年金額は78万100円が満額となっています。

これをもとに実際いくらの年金がもらえるのかを計算式とともにご紹介していきましょう。

老齢基礎年金の受給金額を求める計算式は満額の78万100円を分母が加入可能年数×12ヶ月の480ヶ月、分子が保険料納付済み月数で割ったものになります。

この保険料納付済み月数は保険料を全額納付している月は一月としてカウントされますが、全額免除・4分の1納付・半額納付・4分の3納付と保険料を免除されていた月に関しては最大で半月としてカウントされるような計算式です。

この計算式に当てはめて計算する事で満額の年金額から保険料が免除された期間の年金額を減らして計算できるようになっています。

全額免除された月は4/8、4分の1納付した月は5/8、半額納付した月は2/3、4分の3納付した月は7/8です。

※分母にあたる480ヶ月は年金制度の開始に基づいて決まっている固定の部分ですが、大正15年4月2日~昭和2年4月1日生まれの人は25年、それ以後昭和16年4月1日までは毎年26年~39年と短縮されていて、その分、受給額が増えるようになっています。

20歳~60歳までの40年間、免除期間もなく国民保険料を払った場合は

78万100円×480ヶ月(保険料を納付した月数)÷480ヶ月(加入可能月数)となり満額の78万100円を毎年、老齢基礎年金として受け取れるようになるのです。

22歳の大学卒業までの期間を免除してもらった場合(誕生月が1月の人と仮定)

780万100円×456ヶ月(保険料を納付した月数)+32ヶ月(全額免除月数)×4/8=472ヶ月

472ヶ月÷480ヶ月(加入可能月数)で約0.98になるので減額率が求められました。

そしてこれを年金額に乗ずると76万4,498円となりこれが受け取れる年金額となります。

ちなみに老齢基礎年金の支給は原則65歳からです。

ただし申請すれば60歳から年金が受給できるよう開始時期を早める事も、66歳~70歳までの間に受給が開始されるよう開始時期を遅くする事も可能です。

これを年金の繰り上げ受給・繰り下げ受給と言います。

これは何歳から年金を受け取ろうとも支給金額が変わらないという訳ではなく、繰り下げ受給をした場合は年金が減額されますし、繰り上げ受給をした場合は年金が増額されます。

こちらも老齢基礎年金は昭和16年4月1日以前に生まれた人と、昭和16年4月2日以降に生まれた人とで年金額にかかる計算式が変わります。

例えば、繰り上げ受給もしくは繰り下げ受給をした場合、昭和16年4月1日以前に生まれた人は一律で減額率が決まっています。

一番早い60歳から受給開始をすれば減額率は42.0%、一番遅い64歳で11.0%と60歳~64歳の5段階で減額率が設けられています。

昭和16年4月2日以降に生まれた人は細かく加入月数も加味され受給額が計算されます。

0.5%×繰り上げた受給開始月から65歳になる月(誕生日月)の前月までの月数です。

どのくらいの減額率になるかというと、一番早く受け取り開始する60歳0ヶ月で30.0%~一番遅くて64歳11ヶ月の0.5%になります。

老齢基礎年金をもらうための手続き

年金は受給開始年齢になれば勝手に振り込まれ始めるものではなく、自らの手で手続きを進めていく必要があります。

まず、男性であれば昭和16年4月2日以降~昭和36年4月1日に生まれた人・女性であれば昭和21年4月2日以降~昭和41年4月1日に生まれた人は支給年齢が段階的に引き上げられている年代にあたるので、該当する人は必ずご自身の支給開始年齢を確認しておくといいでしょう。

そして支給開始年齢に達する3ヶ月前に手元に『年金請求書』というものと、請求手続きの案内が書面で届きます。

戸籍謄本・戸籍妙本・戸籍の記載事項証明・住民票・住民票の記載事項証明書のいずれかを準備し、本人名義の年金受け取りに使用する金融機関の口座番号が分かるもの(支店番号や口座番号も必要)と認印でかまわないので印鑑を準備します。

また下記の3つに該当する人は加給年金に該当します。

加給年金とは養う家族がいる場合や障害を抱える子を持つ人に対する家族手当のようなもので、本人やご家族の体調や状況次第で年金の受け取り額がプラスになります。

どんな要件があるのかチェックしましょう。

本人の厚生年金加入期間が20年以上で配偶者もしくは18歳未満の子供がいる場合

戸籍謄本(配偶者か18歳未満の子供がいる事を確認するため)・世帯全員が記載されている住民票・誰が生計を維持しているかを確認するための配偶者の収入証明・子供がはたいている場合は収入が分かる書類、高等学校に在学しているのであれば学生証などの在学が証明できる書類が必要です。

本人が20年未満、配偶者が20年以上厚生年金に加入している場合

配偶者と本人(請求者)の続柄が分かる戸籍謄本・世帯全員が記載されている住民票・生計維持者を確認するため、本人の収入が確認できる書類が必要になります。

その他、状況によって必要になってくる書類

基礎年金番号以外の年金手帳を持っている場合はその年金手帳・雇用保険に加入した事があるのであれば雇用保険被保険者証・共済組合に加入していた期間があるのであれば年金加入期間確認通知書・1級もしくは2級の障害を持つ子供がいる人は医師または歯科医師の診断書・合算対象期間がある人はその期間が確認できる書類を準備しておきましょう。

参考_支給開始年齢になったとき|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/20141128.html

老齢基礎年金の振替加算って?

振替加算とは老齢厚生年金の(障害厚生年金もこれに該当)上乗せ分にあたる加給年金が何らかの理由で打ち切られた場合でも、形を変えて支給されるという仕組みの事です。

加給年金の要件の部分でも触れたように、配偶者や子供を持つ年金請求者本人には基本的に加給年金が支払われるようになっています。

しかし配偶者が65歳になると本人に支払われていた加給年金は打ち切られます。

それでも一定の基準を満たして配偶者に老齢基礎年金を受給する資格があれば配偶者側の基礎年金に加算がされます。

これを老齢基礎年金の振替加算と言います。対象者となるのは次のような人です。

まず大正15年4月2日~昭和41年4月1日までの間に生まれている人は無条件で対象者となります。

次に配偶者が老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合(つまり過去に企業や公務員として働いていた)は厚生年金保険もしくは共済組合などの加入期間が240ヶ月未満である事が条件です。

そして配偶者の共済組合などの加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の加入期間が15~19年間であること

※生年月日で加入期間が決まっています。昭和22年4月1日以前に生まれた人は加入期間が180ヶ月以内、昭和22年4月2日~昭和23年4月1日に生まれた人は192ヶ月以内、昭和23年4月2日~昭和24年4月1日に生まれた人は204ヶ月以内、昭和24年4月2日~昭和25年4月1日に生まれた人は216ヶ月以内、昭和25年4月2日~昭和26年4月1日に生まれた人は228ヶ月以内となります。

参考_振替加算の対象者|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html

受け取れる振替加算の金額についても生年月日に基づいて細かく分けられています。

昭和61年4月1日に59歳になっている大正15年4月2日~昭和2年4月1日生まれの人については配偶者加給年金と同額の22万4,500円が振替加算として支給されます。

それ以降に生まれた人については年齢が若くなるごとに加算される金額が減額されていき、昭和61年4月1日に20歳未満となる昭和41年4月2日以降に生まれた人は加算金額がゼロになるように決められています。

参考_振替加算の額|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html

「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の違いを解説

それではここで今一度、老齢基礎年金と老齢厚生年金の違いについて解説していきましょう。

普段の生活で使わない用語が沢山出てくる上に、似た漢字で書かれた専門用語が沢山出てくると理解するのに躊躇してしまいがちですが、年金の仕組みを理解する上でも大変重要なポイントになる部分なのできちんと押さえておきましょう。

老齢基礎年金と老齢厚生年金をまとめて老齢年金と言います。

いずれも生年月日に基づいて受給できる金額が変わってくるものです。

老齢基礎年金は全員一律の保険料であるのに対し、老齢厚生年金は人によって納めている保険料も違うので将来受け取れる年金額も違います。

具体的に老齢厚生年金にはどのような特徴があるのかを解説します。

老齢厚生年金の特徴

老齢厚生年金はまず大前提として老齢基礎年金の受給資格がある事が求められます。

きちんと国民年金保険料を納めていて企業に勤めるなり公務員として働いていた時に厚生年金の保険料を納めている人は65歳になった時に老齢基礎年金に上乗せされる形で老齢厚生年金が受給できるという仕組みです。

先ほどもお伝えしたようにこの厚生年金保険の保険料というのは人によって金額が違います。

理由は簡単で貰っているお給料に比例して保険料が上がるようになっているので年金の原資となるトータルの保険料に差が出るからです。

毎月のお給料=標準報酬月額と、賞与=標準賞与額に共通の保険料率をかけたものが保険料となり、事業主と本人(被保険者)とで折半して負担しています。

この時計算に用いられる標準報酬月額はお給料の額に応じて1~31等級の区分に分けられています。

通勤手当や事業主から提供されている宿泊費や食事代などの現物給与もこの標準報酬月額として加味されます。

毎年9月に4月~6月のお給料を基に標準報酬月額を改定していて、大きな変動がない限りこの標準報酬月額を軸に計算されます。

他にも賞与は加味されるのが年3回分迄で金額も150万円以内、基本給の他に能力給や資格給、残業手当といった毎月のお給料に上乗せ分が発生した場合はそれらも加味されます。

その全てが標準報酬月額として扱われ、老齢厚生年金の計算に用いられます。

特別支給の老齢厚生年金

老齢厚生年金も例にもれず年齢によって段階的に支給開始年齢の引き上げ措置と、支給される金額のそのものの改定が行われています。

まず特別支給の老齢厚生年金についてですが、老齢厚生年金は65歳から受給できるとご説明しましたが、当分の間は60歳~65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金というものが支給されます。

この特別支給の老齢厚生年金は定額部分+報酬比例部分の2つを合わせた金額で構成されていて、それぞれの部分で支給額の計算方法が異なり、支給額が違っています。

昭和16年(女性は昭和21年)4月2日以降に生まれた人からは定額部分の支給開始年齢が引き上げられていて、昭和24年(女性は昭和29年)4月2日以降に生まれた人については報酬比例分のみの支給となります。

年金額は定額部分と報酬比例部分、加給年金額の3つで構成されており、定額部分は一律で1,626円×生年月日に応じた率×被保険者期間の月数です。

報酬比例部分は標準報酬月額に生年月日に応じた料率をかけ、過去の賃金水準をならすために再評価率で計算されたものを用います。

加給年金額も一定の要件があるものの基本的には配偶者と子供の数で決まるようになっており、本人(被保険者)の生年月日によっては特別加算もされるような仕組みになっています。

参考_老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-01.html

働きながら老齢年金を受け取っている人は受給額が減る?在職老齢年金の仕組み

前章では老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを詳しく掘り下げてみてきました。

この章では様々な生活スタイルによって受け取れる年金の受給額がどのように変化するのかを解説します。

結論からお伝えすると働きながらでも老齢年金を受け取る事は可能ですが、もらっている給与の額に応じて受給額が変動するような仕組みです。

この場合でも60歳~65歳までの期間と、65歳以上とでまた年金額の計算方法が細かく異なってくるので詳細を見ていきましょう

60歳~64歳で在職老齢年金を受け取る場合

まず、2つ押さえておくべき用語があります。

一つは基本月額…これは加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金を意味します。

二つ目が総報酬月額相当額…その月の標準報酬月額+その月以前1年に受け取った賞与額の合計を12で割った額です。

この基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以内であれば全額、在職中でも老齢年金を全額受け取る事ができます。

総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円以内の場合と超える場合、総報酬月額相当額が47万円を超えた場合の基本月額の28万円を超えるか超えないかの4パターンでも計算方法が変わってきます。

65歳以上で在職老齢年金を受け取る場合

65歳を超えると基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超えるか超えないかで大きく分けられ、超えた場合でも一部もしくは全額の支給になるかの計算もシンプルに一つの計算式で求められます。

いずれにしても老齢年金を働きながら受け取る場合は、お給料と賞与をどの程度もらっているかで受け取れる在職中の老齢年金が決まります。

金額によっては一部または全額支給が停止されてしまう場合もあるので、きちんと年金を受け取りたいという人は給与の額も予め調整しておく必要があるという点を押さえておきましょう。

年金を繰り上げ受給、繰り下げ受給した場合の受給額をシミュレーション

実際に年金を繰り上げ受給、繰り下げ受給をした場合どのくらい受給額が変わってくるのかを具体的にシミュレーションしました。

老齢基礎年金と老齢厚生年金とでは繰り上げ受給でも繰り下げ受給でも別の計算式で求められます。

一度繰り上げ支給を請求するとその時点での年齢(月単位)に応じて年金の受取額が変わり、その減額率は一生涯継続されるので繰り上げ・繰り下げ受給の手続きをする場合は予め自分がいくら年金を受給できるのかを把握しておきましょう。

昭和16年4月2日以降に生まれた人の老齢基礎年金の繰り上げ受給額

基本的には特別支給の老齢厚生年金を受け取っていても繰り上げ受給をする事ができます。

老齢基礎年金の繰り上げ受給は全部繰り上げにするか、一部繰り上げにするかを選ぶ事ができますが、人によって可能な範囲が異なります。

女性で昭和16年4月2日~昭和21年4月1日までに生まれている人であれば全部繰り上げの請求がきます。

特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が61歳~64歳になっているという人は老齢基礎年金の一部繰り上げもしくは全部繰り上げをする事ができます。

参考_老齢基礎年金の繰上げ受給|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20150313.html

全部繰り上げした場合

昭和16年4月2日以降に生まれた人が年金を全部繰り上げにした場合、減額率は0.5%×繰り上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数です。

ただし全部繰り上げをする際にはいくつかの注意点があります。

まず、前章でもお伝えしたように一度減額した年金額は元には戻りません。

繰り上げ受給の申請をすると翌月分から支給されますが、繰り上げ受給申請をあげた時点で受給権が発生します。

この受給権が発生した後では繰り上げ申請そのものを取り消す事ができません。

更に国民年金に任意加入中の人は繰り上げ受給そのものができませんし、繰り上げ請求をした後に任意加入する事もできず保険料を追納する事もできません。

繰り上げ請求した後に事後重症などによって障害年金を受け取れるような状態になったとしても請求そのものができなくなります。

寡婦年金については、寡婦年金を受け取っていた人が年金の繰り上げ受給を申請すると寡婦年金は支給停止されますし、将来的に寡婦年金を受け取れる状態になった人であっても寡婦年金を請求する事ができません。

老齢基礎年金の繰り上げ受給を請求すれば65歳になるまでは遺族厚生年金と遺族共済年金を併せて受給する事ができません。

年金が減額されようとも早期に年金が受け取れる事にメリットはあります。

しかし、繰り上げ受給したにもかかわらず極端に受給期間が短くなってしまうと、トータルの受給額が減ってしまうので結果的に損をしてしまうので注意が必要です。

一部繰り上げした場合

男性で昭和16年4月2日~昭和24年4月1日の間、女性であれば昭和21年4月2日~昭和29年4月1日の間に生まれた人については、特別支給の老齢厚生年金の定額部分が段階的に引き上げられている世代になります。

このため、定額部分が支給開始される前に申請すれば老齢厚生年金の一部を繰り上げ受給する事ができます。

昭和16年4月1日以前に生まれた人の老齢基礎年金の繰り上げ受給額

昭和16年4月1日以前に生まれた人の老齢基礎年金は繰り上げ受給した場合の減額率はシンプルに年齢ごとに決まっています。

60歳0ヶ月~60歳11ヶ月で42%・61歳0ヶ月~61歳11ヶ月で35%・62歳0ヶ月~62歳11ヶ月で28%・63歳0ヶ月~63歳11ヶ月で20%・64歳0ヶ月~64歳11ヶ月で11%となり、昭和16年4月2日以降に生まれた人よとは違い一律でわかりやすい減額率になっているのが特徴です。

老齢厚生年金の繰り上げ受給額

老齢厚生年金は男性で昭和28年4月2日~昭和36年4月1日・女性で昭和33年4月2日~昭和41年4月1日の間に生まれた人は、報酬比例部分の支給開始年齢が61歳~64歳と生年月日に応じて段階的に引き上げられます。

つまり特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢になる前であれば老齢厚生年金の報酬比例部分について繰り上げ請求をする事ができるという事です。

これも受け取れる金額は60歳~65歳に達するまでの請求した時点での年齢に応じて、政令によって決まった額から減額された金額となります。

この経過的な年齢の引き上げがされている老齢厚生年金を繰り上げ受給する場合は、老齢基礎年金も併せて繰り上げ受給する申請をする必要があります。

更に男性で昭和36年4月2日以降・女性で昭和41年4月2日以降に生まれた人については60歳~65歳に達するまで(達するとは誕生日の前日を意味する)の期間に老齢厚生年金を繰り上げ受給する事ができます。

受け取れる年金額は政令によって定められた減額率により減額された金額となります。

ただし加給年金は別で、65歳になるまで加算される事はありません。

この年代に生まれた人たちでも同様に老齢厚生年金の繰り上げ受給をする場合は、老齢基礎年金も一緒に繰り上げ受給しなければなりません。

もらえる年金額を増やす2つの方法

ここまで老齢基礎年金と老齢厚生年金の基本的な構造を解説してきました。

ここからは、基本的な年金に加えて別の保険料を納める事でもらえる年金を活用してトータルの年金額を増やす方法について解説していきましょう。

老齢基礎年金に上乗せ分をプラスしてくれる国民年金基金

年金の受け取り手となる被保険者には第1号~第3号の3つの種類分けがされているのは冒頭で解説した通りです。

特に第1号被保険者(自営業者・農業従事者・学生・無職の人など)については第2号被保険者となる会社員や公務員とは違って厚生年金の上乗せ分の年金がありません。

そんな第1号被保険者と他の被保険者の年金額を埋めるためにあるのが国民年金基金です。

国民年金基金は任意で加入するものであり、最低一口から掛け金を納め、希望すれば二口目以降も納める事が可能です。

この掛け金は社会保険料控除の対象となるので自営業者の人にとっては納めていて損のない保険料と言えます。

付加保険料を納める事でもらえる付加年金

第1号被保険者や任意加入の被保険者が月額400円の付加保険料を定額保険料に上乗せして納めていると老齢基礎年金に付加年金というものが上乗せされて支給されます。

付加保険料を納めていた場合の年金額は200円×付加保険料を納めた月数で、市区町村の役場で手続きするだけで申し込みが可能です。

物価に応じてもらえる年金額が変動する事もありません。

ただし国民年金基金に加入している人についてはこの付加保険料を納める事はできないので付加年金を受け取る事ができないので注意が必要です。

夫に先立たれたら?妻は老後に遺族年金だけで暮らしていけるか

多くの家庭では夫がメインで働き手となって生計を維持していると思います。

そんな夫が亡くなってしまった場合、残された妻やその家族が受け取れるのが遺族基礎年金と遺族厚生年金で公的年金制度の一種です。

これらについても受給するための要件や支給されるタイミング、支給額の計算方法について見ていきましょう。

遺族基礎年金を受給できるのはどんな状況?支給開始と支給額の計算方法

まず大前提として遺族基礎年金を受け取れるのは子供がいる夫婦の配偶者、そしてその子供です。

子供のいない配偶者は遺族基礎年金をもらう事はできません。

子供は18歳を迎えた年の年度末(3月31日)迄、障害等級1または2級の子であれば20歳未満迄であれば受給の対象者となります。

保険料を25年以上納めていた被保険者、または既に老齢基礎年金を受給している人が亡くなった場合に受け取る事ができます。

※保険料納付済み期間は加入期間の3分の2以上である必要があるのと、平成38年4月1日よりも前に65歳未満で亡くなった場合、亡くなった月の前々月までの1年間に保険料を滞納していない事が条件です。

年金額は平成31年4月分からは78万1,000円で、第一子・第二子は各22万4,500円、第3子以降は各7万4,800円が加算されて支給されます。

配偶者もおらず子供だけが遺族基礎年金を受給する時は子供の加算は第2子以降について行われ、子供1人あたりの年金額は年金額を子供の数で割った金額となります。

参考_遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html

遺族厚生年金を受給できるのはどんな状況?支給開始と支給額の計算方法

遺族厚生年金は遺族基礎年金よりも受け取れる対象者の幅が広く設定されています。

まず、被保険者もしくは既に受給を開始していた保険料を25年以上納めていた人が対象者とる点は遺族基礎年金と同じです。

こちらも加入期間の3分の2以上保険料を納めている事、平成38年4月1日までは65歳未満で死亡した場合は死亡月の前々月からさかのぼった1年間に保険料を滞納していない事が条件となります。

障害等級1もしくは2級の障害厚生年金(障害共済年金)を受けられる人が亡くなった場合も対象となります。

更に子供や孫(ともに18歳を経過した年度末を超えていない、もしくは20歳未満で障害年金の投球が1・2級である人)や55歳以上の夫、父母、祖父母が対象者となり、子供のいない妻も対象者となります。

ただし、祖父母に関しては支給が開始されるのは60歳~、子供のいない30歳未満の妻は受給できる期間が5年未満と決まっています。

老齢厚生年金は定額部分と報酬比例部分の2つで構成されていますが、年金額は報酬比例部分について決められた計算式に当てはめて計算されます。

本来水準と従前額保障とで計算式が若干違っていて、平成6年よりも前の収入がある人について標準報酬を再評価する事で賃金水準や物価水準を均すようにできている計算式です。

遺族厚生年金には更に中高齢の加算というものがあります。まず対象となるのは夫が亡くなった時40歳以上~65歳未満で生計をともにする子供がいない妻です。

今まで遺族基礎年金をもらっていた子供を持つ妻も、子供が対象者から外れる年齢に達して遺族基礎年金がもらえなくなった場合に該当します。

※この場合、妻が40歳の時点で子供が受給対象年齢である事が条件です。

平成19年3月31日以前に夫が亡くなり遺族厚生年金を受け取っている人は40歳以上ではなく35歳以上~対象者となります。

もう一つ遺族厚生年金に加算されるのが経過的寡婦加算です。

遺族厚生年金を受給している妻が65歳になって自分の老齢基礎年金を受け取り始めた時に、老齢基礎年金の金額が中高齢寡婦加算の金額を下回っていると受給額が下がってしまうのを防止するためのものになります。

65歳までの中高齢寡婦加算と同じような金額になるよう決められた年金額が支給され、65歳で初めて遺族厚生年金を受給し始めた妻でも夫が20年以上保険料を納めていれば受給する事ができます。

なお、遺族厚生年金と障害基礎年金も一緒に受給している場合、経過的寡婦加算は支給されません。

自分で納めた老齢厚生年金を受給する事ができる人は平成19年4月1日以降、遺族厚生年金の老齢厚生年金部分にあたる金額については支給停止されるようになっています。

遺族厚生年金の金額についても、亡くなった被保険者の老齢厚生年金の4分の3、もしくは亡くなった被保険者の老齢厚生年金の2分の1+自身の老齢厚生年金の2分の1の2通りの計算がありますが、計算し多い額となった方の計算式で遺族厚生年金の金額が決まります。

更に平成19年4月1日よりも前に65歳以上である遺族厚生年金受給権者についても取り扱いが詳細に決まっています。

老齢基礎年金にプラスされるのが遺族厚生年金・老齢厚生年金・遺族厚生年金の3分の2+老齢厚生年金の2分の1のいずれかの組み合わせから1つを選択するよう取り決められています。

まとめ

日本における公的年金制度は福祉の行き届いた社会を実現する上でとても重要な役割を担っています。

少子高齢化で受給できる年金額は減ってきていると言われていても、サラリーマンのような一般的な生活を送っている人からすれば、受給できる年金額は十分生活の足しになる、相当な受給額になるという事はご理解頂けたかと思います。

実際に、過去には年金の受給するための要件の一つに25年間保険料を納めた実績が必要でしたが、それも必要期間が10年以上に短縮されるなど、私たち被保険者に不利な改定ばかりではない事も分かりました。

自分たちが暮らしている国の公的な制度にはどういったものがあるのかを把握しておく事はとても重要です。

豊かな人生を送るために欠かせないお金をきちんと確保するには、自身が納めた社会保険料を将来的に損する事なく年金として受け取る事が重要です。

しっかりとした知識を身に付けておきましょう。

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