シルバーハウジングとは~生活援助員がしてくれることや家賃をFPが解説
今回は、シルバーハウジングについて解説していきます。
「シルバーハウジング」という言葉を聞いたことがある方はもしかしたら多くはないかもしれません。
シルバーハウジングとは、バリアフリー化され、ライフサポートアドバイザーという生活援助員が高齢者の日常生活の支援をしてくれる高齢者向けの公営賃貸住宅のことです。
入居対象者は、自治体で異なりますが、高齢者単身世帯や高齢者夫婦世帯、障害をお持ちの方などで自立している人となっています。
家賃は自治体などでバラつきがあり、月々の家賃の他に、敷金や共益費、緊急通報装置利用料がかかります。
メリットは、民間の賃貸住宅よりも安く入所できたり、バリアフリー化されライフサポートアドバイザーが日常生活を支援してくれるため、安心して生活することができる点です。
一方で、この制度は医師の治療や介護サービスを受けられるわけではなく、自治体によっては抽選をするところもあります。
高齢者向けの住宅には、他にも民間企業が運営するサービス付き高齢者向け住宅がありますし、施設であれば、介護老人保健施設や有料老人ホーム、軽費老人ホームなどがあります。
それぞれの特徴がありますので、その特徴を確認していってみてください。
目次
シルバーハウジングの特徴
シルバーハウジングの特徴について、解説していきます。
シルバーハウジングとは、国土交通省と厚生労働省が管轄し地方公共団体や都市再生機構などが供給している、高齢者向けの公営賃貸住宅です。
この住宅は、高齢者が住みやすいようにバリアフリー化されており、ライフサポートアドバイザーという生活援助員が高齢者の日常生活の支援をしてくれます。
シルバーハウジングができた背景には、高齢者社会が進行していることが挙げられます。
日本の平均寿命は厚生労働省によると、平成29年で男性が81.09歳、女性が87.26歳となっており、年々伸びています。
平均寿命が延びていることは医療技術の進化も理由に挙げられます。
長生きできることは素晴らしいことです。
ただ、それは高齢になるにつれて家族などの周りの人の助けがないと生活しにくくなったりすることに対して、どうすべきか考える必要も増えてくるということです。
さらに、高齢者は在宅で過ごしている人が多く、厚生労働省によると、在宅で介護または要支援者向けの介護予防サービスを受けた人は約3,730,000人であるのに対し、施設でサービスを受けた人は約940,000人となっています。
在宅が多い理由は、住み慣れた自宅でサービスを受けたいといったことや、施設に入所するお金の負担ができないといったことが挙げられます。
在宅だと階段でつまづいてケガをする可能性もありますし、浴槽へ転落してしまうことも考えられます。
シルバーハウジングは、そういった高齢者の在宅での日常生活を支えるためにできました。
ただし、シルバーハウジングは特別養護老人ホームではありませんので、介護が必要な方は他の人と同様自己負担で介護サービスを受ける必要があります。
参考サイト⇒一般財団法人高齢者住宅財団「シルバーハウジング、LSA」、公益財団法人生命保険文化センター「日本人の平均寿命はどれくらい?」、公益財団法人生命保険文化センター「介護を受けている人はどれくらい?」
どんな設備?
次に、シルバーハウジングの具体的な設備について、解説していきます。
自治体によって設備が異なる部分はありますが、公営賃貸住宅は、手すりや段差が少なくなるようバリアフリー化されています。
さらに、緊急通報システムも装備されており、緊急時にはライフサポートアドバイザーが対応してくれたりします。
いずれも高齢者が安心して生活できるような設備となっています。
参考サイト⇒一般財団法人高齢者住宅財団「シルバーハウジング、LSA」
どんな人が入所できるのか?
次に、どんな人が入所できるのかについて、解説していきます。
気になるので入所したい!と思っていても誰でも入所できるわけではありません。
収入基準を設けているなど、自治体によって入所の申し込み条件は異なります。
高齢者単身世帯や高齢者夫婦世帯、障害をお持ちの方などで自立している人が申し込めるということは共通条件となっています。
例えば、大阪のシルバーハウジングでは65歳以上の高齢者単身者や高齢者夫婦世帯などが対象となっています。
他に、収入等の条件や、申込者本人が大阪府内に住んでいるか通勤しているかといった条件もあります。
参考サイト⇒大阪府住宅供給公社「申込資格」
シルバーハウジングの費用
次に、シルバーハウジングの費用について、解説していきます。
費用については皆さんが気になるところだと思います。
家賃についてはバラつきがあり、例えば、都市再生機構のシルバーハウジングの場合だと、申込者本人の平均月収額が基準月収額以上ある人が条件となっています。
具体的には、単身者の場合だと、申込者本人の平均月収額が25万円以上の方の家賃は62,500円以上200,000円未満となります。
以下、世帯で申し込む場合と単身者で申し込む場合の家賃額です。
・世帯
家賃額 | 基準月収額 |
82,500円未満 | 家賃額の4倍 |
82,500円以上200,000円未満 | 330,000円(固定) |
200,000円以上 | 400,000円(固定) |
・単身者
家賃額 | 基準月収額 |
62,500円未満 | 家賃額の4倍 |
62,500円以上200,000円未満 | 250,000円(固定額) |
200,000円以上 | 400,000円(固定額) |
申込者本人の平均月収額が基準月収額に満たない場合は、特例などを受けれる場合もあります。
さらに、月々の家賃の他に、敷金や共益費、緊急通報装置利用料がかかります。
各供給主体によって、家賃は変わってきますので、お住まいの自治体などに問い合わせてみましょう。
参考サイト⇒UR賃貸住宅「高齢者向け賃貸住宅」
生活支援のサービスとはどのようなものか?
次に、生活支援のサービスについて、解説していきます。
シルバーハウジングでは、ライフサポートアドバイザーという生活援助員が高齢者の日常生活の支援をしてくれます。
ライフサポートアドバイザーは市町村からの委託で、居住者の日常の生活指導や安否確認、緊急時の連絡などのサービスをしてくれます。
特に、1人暮らしの高齢者にとっては、安否確認などは非常に助かるかと思います。
具体的なサービスを挙げると、例えば、大阪のシルバーハウジングではライフサポートアドバイザーが、健康相談に乗ってくれたり、必要に応じて関係機関に連絡を取ってくれたり、行政サービスなどの情報を提供してくれたりします。
特に、高齢者は健康について気になることが多いので、そういった相談ができて解決できるという点は大きいかと思います。
自分の地域のシルバーハウジングではどういったサービスをしてくれるのかについて知りたい方は、自治体に問い合わせてみましょう。
参考サイト⇒大阪府住宅供給公社「シルバーハウジング・車いす常用者世帯向け住宅について」
各地のシルバーハウジング事業
次に、各地のシルバーハウジング事業について、ご紹介していきます。
各自治体のシルバーハウジングの詳細については、各自治体の市政だよりなどに掲載されているところが多いようです。
ホームページで調べてみると、大阪府と神戸市の入居対象者(申込の資格がある方)については、詳しく記載されていますので、ご紹介します。
大阪府 | 神戸市 |
65歳以上の親族からなる高齢者2人の世帯(配偶者は60歳以上で可能)か、65歳以上の単身者世帯の方で、以下のすべての条件を満たした方。
・入居予定者全員の収入が収入基準に合う方(例えば、給与所得者で単身者の場合は2,967,999円を超えない方) ・現在、住宅に困っている方 ・申込者本人が大阪府内に住んでいるか、勤務をしている(または勤務することが確実な)方 ・過去に府営住宅に居住していた方で、不正な使用をしたことがない方 |
<神戸市営住宅の場合>
神戸市営住宅の入居基準を満たす65歳以上の方で、(1)単身者(2)配偶者または中度以上の障害者と同居する方(3)65歳以上の親族とのみ同居する方、のいずれかに該当する方。 市営住宅の入居基準とは、現在、神戸市内に居住している世帯または神戸市内に通勤先がある方や、阪神・淡路大震災により神戸市内で被災し、市外に居住している世帯などの基準となってます。 <兵庫県営住宅の場合> 県営住宅の入居基準を満たす60歳以上の方で、(1)単身者(2)配偶者または中度以上の障害者と同居する方(3)60歳以上の親族とのみ同居する方、のいずれかに該当する方。 県営住宅の入居基準にも、収入基準などがあります。 |
大阪府では、過去に府営住宅に居住していた方で不正な使用をしたことがない方としっかり記載しています。
神戸市では、市営住宅と県営住宅に分かれて記載されており、市営住宅の場合だと65歳以上なのに対し、県営住宅の場合は60歳以上とハードルが低くなっています。
前述したように、すべての自治体がホームページで詳細を公表していないため、シルバーハウジングについて気になるかたは、自治体に問い合わせてみましょう。
参考サイト⇒大阪府住宅供給公社「申込資格」、神戸市すまいの総合窓口すまいるネット「高齢者向け住まいを知る」、神戸市「申込資格」、兵庫県住宅供給公社「県営住宅をお探しの方へ」
シルバーハウジングを利用するメリット・デメリット
次に、シルバーハウジングを利用するメリットとデメリットについて、確認していきましょう。
メリット | デメリット |
①民間の賃貸住宅よりも家賃が安い。
→家賃も安いところもあり、基準を満たせば特例などを受けれる自治体もあります。 ②バリアフリー化されており、安心して居住できる。 →足腰が弱くなる高齢者にとっては生活しやすくなっています。 ③ライフサポートアドバイザーが日常生活を支援してくれる。 →健康相談などができるので、心強い。 |
①ライフサポートアドバイザーはあくまで支援してくれるのであり、介護サービスではない。
→医師から治療を受けたり、介護サービスを受けたりできるわけではないため、そういった場合は自己負担で受けなければならないことになっています。 ②人気のある住宅は抽選や空室待ちがある。 →これは、自治体によります。 ③入居前に勉強会のある自治体もある。 →例えば、大阪府では当選した方は共同生活の仕組みについての勉強会に必ず参加しなければなりません。 |
メリットとデメリットを考えて、よく検討してから申し込みましょう。
参考サイト⇒大阪府住宅供給公社「申込資格」
シルバーハウジングに入所するまでの流れ
次に、シルバーハウジングに入所するまでの流れについて、確認していきます。
例えば、大阪府のシルバーハウジングでは、入所するまで以下の流れとなっています。
①入居予定者として登録される。
申し込んで合格したら、入居予定者に登録されます。
合格したらすぐに入居できるというわけではありません。
②入居案内が郵送される。
入居のあっせんが決まったら、入居案内が郵送されます。
届いたらよく中身を確認しましょう。
③入居手続きをする。
入居案内が発送されてから2~3週間後に手続きをします。
その際に、敷金を納入するので注意しましょう。
手続きが完了すると、入居承諾書と鍵が渡されます。
④入居する。
手続き完了後、2週間以内に入居します。
以上、流れをとります。
ただ、入所するまでの流れは自治体によって異なる可能性があります。
敷金の納入時期や家賃がいつから発生するかなどは重要なので、その点は問い合わせてみましょう。
参考サイト⇒大阪府「大阪府営住宅平成31年度第1回総合募集のご案内」
サービス付き高齢者向け住宅とはどう違うのか
次に、サービス付き高齢者向け住宅との違いについて、解説していきます。
サービス付き高齢者向け住宅とは、2011年の「高齢者住まい法」の改正によってできた高齢者単身・夫婦世帯のための賃貸等の住宅です。
略して「サ高住」といいます。
サービス付き高齢者向け住宅は、シルバーハウジング同様、バリアフリー化された住宅で安否確認や生活相談のサポートもついています。
それではシルバーハウジングとどこが違うのかというと、シルバーハウジングは前述したように地方公共団体や都市再生機構などが供給していますが、サービス付き高齢者向け住宅は民間企業が運営しているのです。
登録基準や申請する際の提出物については、各自治体ごとに独自の基準が設けられているところがあり、例えば、山形県では「山形県みんなにやさしいまちづくり条例の規定を遵守することを強化する」などの基準が定められています。
さらに、サービス付き高齢者向け住宅は民間企業の運営であるため、家賃も高くなります。
参考サイト⇒サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「制度について」
多種多様化する高齢者住宅
次に、その他の高齢者住宅について、解説していきます。
高齢者向けの住宅は、シルバーハウジングやサービス付き高齢者向け住宅だけではありません。
まず、国の介護保険のサービスで利用できる公的な施設として、「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」の3つがあります。
介護老人福祉施設は「特別養護老人ホーム」とも言われ、3つの中で一番利用者が多い施設となっています。
さらに、有料老人ホームや軽費老人ホームもあり、それぞれ対象者等が異なります。
介護老人保健施設 | 有料老人ホーム | 軽費老人ホーム |
65歳以上の身体上または精神上著しい障害があるために常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な人が入所できます。 | 老人の入浴や排せつ、食事の介護、洗濯、掃除等をする施設のことです。
入所できる年齢は特に定められていません。 |
身体機能が低下することなどにより自立した生活を営むことが不安であると認められ、家族による援助が困難な60歳以上の人が利用できます。無料または低額な料金で食事の提供などをしてくれる施設です。
現在では、ケアハウスと言われます。 |
参考サイト⇒厚生労働省「施設・居住系サービスについて」
シルバーハウジングの今後の課題
最後に、シルバーハウジングの今後の課題について、見ていきましょう。
日本ではさらに高齢化が進んでいくとされており、シルバーハウジングの必要性も高くなってくる可能性もあります。
高齢者が増えるということは、単身世帯の高齢者の孤独死の増加などにより24時間体制で管理する声が上がってくることが考えられます。
医療機関との連携の強化も声として上がってくるかと思います。
さらに、高齢者が増え、このようなシルバーハウジングに入居する人が増えることで、今までになかったニーズが出てくることも考えられます。
そういったニーズ、声を拾って、細かく対応していくことで、高齢者が安心して過ごしていけるのではないでしょうか。
まとめ
以上、シルバーハウジングについて解説してきました。
高齢化が進行しているということで、今後もシルバーハウジングも含めた高齢者向け住宅、施設というものは増加していくでしょう。
それぞれ対象年齢が異なったり、その他条件があります。
今後の課題でも前述しましたが、今後が利用者も増えることが予想されるので、さまざまなニーズ、声が出てくると思います。
行政はそのニーズ、声を拾って活かしてほしいですし、利用する側もマナーをも守って皆さんが気持ちよく生活できるように心がけていきたいものです。
ぜひこの機会に、高齢者向け住宅、施設、その他の国の施策についても目を向けてみましょう。