障害児福祉手当とは~診断書や支給日、認定基準をFPが解説
今回は、障害児福祉手当について解説していきます。
20歳未満の児童に限らず、身体障害者、精神障害者の方のための経済的制度は手厚く、充実しています。
例えば、後ほどご紹介しますが、医療費の負担が軽減される自立支援医療制度や障害年金もあります。
今回のテーマである障害児福祉手当とは、20歳未満の精神障害または身体障害を持つ人に対して国から支給される手当のことで、さらに日常生活で常に介護を必要としており在宅の方という条件もあり、所得制限もあります。
支給額は月14,790円となっており、ご本人やご家族を経済的に、そして精神的にサポートしてくれます。
この制度の他にも、20歳未満の精神障害者または身体障害者を家庭で監護、養育している父母などに支給される特別児童扶養手当もあります。
ご自身が障害者にあたる方やそのご家族の方、そしてこの制度について知っておきたい!という方はぜひ参考にしてください。
目次
障害児福祉手当の概要
初めに、障害児福祉手当はどういったものなのかについて、詳しく解説していきます。
障害児福祉手当は、20歳未満の精神障害または身体障害を持つ人に対して国から支給される手当のことであり、厚生労働省のホームページには、その目的を以下のように記載しています。
重度障害児に対して、その障害のため必要となる精神的、物質的な特別の負担の軽減の一助として手当を支給することにより、特別障害児の福祉の向上を図ることを目的としています。
障害をお持ちの方は、生活していく上で不便さを感じると思います。
例えば、思ったように仕事ができなかったり、思ったように食事や排せつなどの日常生活を送ることが難しかったりする場合があります。
そうすると、経済的に厳しくなったり、精神的に思い悩んだりすることも考えられます。
この手当は、その中でも重度の障害児に限った手当なのです。
国は、障害のある人も安心して暮らせる社会作りを目指しています。
その中の1つの制度なのです。
障害児福祉手当の内容については、厚生労働省のホームページに記載されていますが、各自治体のホームページにも詳しく記載されています。
支給される条件
障害児福祉手当の支給される条件は、以下のとおりです。
・重度の精神障害または身体障害を持つ方
・日常生活で常に介護を必要としており在宅の方(施設に入所していない方)
・20歳未満の方
以上の条件を満たすと支給されます。
ただ、これらはこの他にも後ほど述べる所得制限の審査がありますので、上記の3つを全て満たして手続きをしても、必ずしも認定されるわけではありませんので、その点は覚えておきましょう。
重度の精神障害または身体障害と言っても、どの程度なのか疑問に思う方はいるかと思います。
厚生労働省のホームページにはその点記載されていませんが、自治体によっては基準、目安といったものを示しているところもあります。
例えば、横浜市のホームページでは、基準を①両目の視力の和が0.02以下のもの、や②両耳の聴力が補聴器を用いても音声を識別することができない程度のもの、などといった障害のうち、1つ以上あてはまれば、この制度のいう重度の精神障害または身体障害児となるとしています。
以下、記載されている障害をそのまま引用してご紹介します。
①両目の視力の和が0.02以下のもの(矯正視力による)
②両耳の聴力が補聴器を用いても音声を識別することができない程度のもの
③両上肢の機能に著しい障害を有するもの
④両上肢のすべての指を欠くもの
⑤両下肢の用を全く廃したもの
⑥両大腿を 2 分の 1 以上失ったもの
⑦体幹の機能に座っていることができない程度の障害を有するもの
⑧ ①~⑦のほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が①~⑦と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
⑨精神の障害であって、①~⑧と同程度以上と認められる程度のもの
⑩身体の機能の障害もしくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が①~⑨と同程度以上と認められる程度のもの
引用_横浜市「障害児福祉手当」
視力や聴力の障害、上肢や下肢の障害、身体の障害と精神の障害が重複するなどの基準となっています。
横浜市では、目安としては、身体障害者手帳1級・2級程度等としています。
参考サイト⇒厚生労働省「障害児福祉手当について」、横浜市「障害児福祉手当」
支給額
次に、支給額について解説していきます。
平成31年4月からの月の支給額は、14,790円となっています。
つまり、1年間17,480円になります。
さきほど各自治体のホームページにもこの制度について紹介されていますが、自治体間で支給額が異なるということはありません。
ただ、平成3年3月末までは、14,650円と140円現在より少ない支給額でした。
今後もこの額は変動する可能性もありますので、厚生労働省や各自治体のホームページで時々確認した方が良さそうです。
参考サイト⇒久喜市「障害児福祉手当」
支給時期
次に、支給時期について、解説していきます。
支給時期は、毎年2月、5月、8月、11月に支給されます。
つまり2月であれば前年の11月分と12月分とその年の1月分の3か月分の計44,370円が支給されます。
毎月支給されるわけではないので、その点は注意しましょう。
参考サイト⇒久喜市「障害児福祉手当」
所得制限
次に、この制度の所得制限について、解説していきます。
障害児福祉手当では、受給者もしくはその配偶者または扶養義務者に対する所得制限があり、一定額以上だとこの制度は利用できません。
扶養親族等の数 | 受給者本人の所得額 | 配偶者および扶養義務者の所得額 |
0 | 3,604,000円 | 6,287,000円 |
1 | 3,984,000円 | 6,536,000円 |
2 | 4,364,000円 | 6,749,000円 |
3 | 4,744,000円 | 6,962,000円 |
4 | 5,124,000円 | 7,175,000円 |
5 | 5,504,000円 | 7,388,000円 |
例えば、扶養親族等の数は2人の場合は、受給者本人の年間の所得額が4,364,000円以上だと、障害児福祉手当は利用できないということです。
ここで注意点がいくつかあります。
①所得の審査は毎年8月に行われるため、その審査で限度額以上だとされた場合は、その年の8月から翌年の7月まで支給停止となります。
②受給者本人の所得について計算するときは、非課税の年金等も含まれます。
③扶養義務者とは、この制度を利用する本人と生計を同じくする直系血族、兄弟姉妹のことをいいます。
以上3つの点に注意しましょう。
参考サイト⇒厚生労働省「障害児福祉手当について」、久喜市「障害児福祉手当」
受給資格が喪失するのはどんな時か
次は、受給資格が喪失する場合はどんな時かについて、解説していきます。
重度の障害児の方やそのご家族等の方にとって、国からの支給は非常に経済的にも精神的にも助けになるものですが、いつどんな時に受給資格がなくなってしまうのかは知っておきたいことです。
そもそもの障害の程度が軽くなった場合は受給資格がなくなることは想像できると思いますが、他にも受給資格がなくなる場合があります。
仙台市のホームページには、以下のとおり記載されています。
1.児童福祉法で定める障害児入所施設などに入所されたとき
2.障害を支給事由とする公的年金を受けることができるとき
3.障害の程度が支給基準に該当しなくなったとき
4.日本国内に住所を有しなくなったとき
5.死亡されたとき
引用_仙台市「障害児福祉手当」
1の障害児入所施設には、福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設があり、児童相談所や市町村の保健センター、医師等に必要性が認められたものが入所できる施設です。
障害児福祉手当は、あくまで在宅の障害児が対象となっています。
2の障害の支給事由とする公的年金とは、障害年金のことです。
例えば、障害基礎年金だと、1級で年975,125円、2級で年780,100円(平成31年4月分から)となります。
もし上記に該当したら、お住まいの自治体の役所に速やかに届け出ましょう。
過払いをした場合には、過払い分の手当を返金することになります。
参考サイト⇒独立行政法人福祉医療機構「障害児入所施設」、日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
障害児福祉手当受給における認定基準は?
次に、障害児福祉手当の受給における認定基準について、解説していきます。
障害児福祉手当の障害の程度の認定基準は、厚生労働省が作成し、平成30年4月1日からはその基準が改正されました。
厚生労働省が各都道府県に通知した認定基準の文書は全27ページにも及び、認定基準が事細かく記載されています。
例えば、「肢体不自由」の「両上肢の機能障害」の認定基準の1つには、「食事と洗面と便所の処理と衣服の着脱が介護なしでは自立できない状態にあり」という部分がありますが、これは以下のことをいいます。
左右の上肢を用いてもその用を弁ずることができないものをいい、診断書に記載のその他の日常動作、つまむ、にぎる等の個々の基本動作が可能であっても、自助具を含む補装具等を自ら装着使用して他の総合動作を行うことができないものについては、個々の基本動作不能に該当するものとする。
このように、非常に細かく決められているのです。
詳しく知りたい方は、引用先をご覧ください。
障害児福祉手当の手続き
次に、障害児福祉手当の手続きについて、確認していきます。
手続きをお住まいの役所の窓口で手続きをします。
その際の必要書類は申し込む方の状況によって異なりますが、共通して必要なものは以下のものです。
・障害児福祉手当認定請求書
・印鑑
・診断書
・本人名義の通帳の写し
・所得証明
・身体障害者手帳、療育手帳または精神障害者保健福祉手帳のいづれか
・児童および保護者などのマイナンバーが確認できるもの
診断書に関しては、障害により書類が異なり、医師に書いてもらうものなので、診断書代がかかることも覚えておきましょう。
診断書代は病院によって異なります。
参考サイト⇒久喜市「障害児福祉手当」
特別児童扶養手当との違い
次からは、障害児福祉手当とは離れて、障害をお持ちの方のための別の制度について、解説していきます。
障害児福祉手当に似た制度として、「特別児童扶養手当」があります。
特別児童扶養手当は、20歳未満の精神障害者または身体障害者を家庭で監護、養育している父母などに対して支給されるものです。
障害児福祉手当と同様、役所の窓口で申請します。
両者の違いは以下のとおりです。
特別児童扶養手当 | 障害児福祉手当 | |
支給される条件 | 20歳未満の精神障害者または身体障害者を家庭で監護、養育している父母など | 20歳未満の重度の精神障害または身体障害を持ち、日常生活で常に介護を必要としており在宅の方(施設に入所していない方) |
支給額 | 1級 52,200円
2級 34,770円 |
14,790円 |
支給時期 | 毎年4月、8月、12月 | 毎年2月、5月、8月、11月 |
所得制限 | 例えば、扶養親族等の数が2人の場合、本人の年間の所得額が5,356,000円以上だと支給されない。 | 例えば、扶養親族等の数が2人の場合、本人の年間の所得額が4,364,000円以上だと支給されない。 |
主な違いは上記のとおりです。
大きな違いは、支給の対象が特別児童扶養手当の場合は養育している父母等で、障害児福祉手当の場合は障害を持つ本人である点でしょう。
さらに、支給額も特別児童扶養手当の場合は高く、1級、2級で異なります。
支給時期と所得制限も異なりますので、しっかり確認しましょう。
参考サイト⇒厚生労働省「特別児童扶養手当について」
障害のある子どものためのその他の制度
次に、障害のある子どものためのその他の制度について、ご紹介していきます。
子どもに限らず、障害をお持ちの方のための制度は多くあります。
その中でも子どもで障害のある方でも利用できる制度を2つご紹介します。
①自立支援医療制度
1つ目は自立支援医療制度です。
これは障害をお持ちの方のための制度で、簡単に言うと、医療費が軽減されるというものです。
対象者は、以下のように精神疾患で心療内科や精神科に通っていたり、更正医療、育成医療の場合も対象となります。
精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
更生医療:身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)
手続きは、お近くの役所の窓口で申請することになります。
②身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳
2つ目は、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳です。
これは身体障害者、精神障害者の方で基準を満たした方が申請すれば交付される手帳です。
身体障害者手帳の交付の対象者は、視覚障害や聴覚または平衡機能の障害などがあり、一定以上で永続することが要件となっており、程度は1級から6級まであります。
一方、精神障害者保健福祉手帳の対象者は、精神障害のために長期にわたり日常生活や社会生活(家事や仕事など)に制約のある方となっており、程度は1級から3級まであります。
手帳を持っていると、障害者控除という所得控除を受けられたり、バスの運賃や観光地の入場料が割引になったりします。
参考サイト⇒厚生労働省「身体障害者手帳」、東京都福祉保健局「精神障害者保健福祉手帳」
他の手当てと併用はできるか
最後に、他の手当と併用はできるかについて、確認していきましょう。
・障害児福祉手当と特別児童扶養手当は併給できる。
・自立支援医療制度と身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳は併用できる。
まとめ
以上、障害児福祉手当についてでした。
その他の制度も含めて、障害児に対する制度は充実していることがお分かりいただけたかと思います。
いつ自分がそしてご家族が、大切な人が障害を持つことになるかは誰にも分かりません。
ぜひこれらの制度を知って、いざとなったら有効に活用できるようにしましょう。