タトゥーが入っていると保険に入れない?入れ墨と保険の関係をFPが解説
タトゥーがあると生命保険には加入できないと言われることがあります。
逆にタトゥーがあっても生命保険に加入できたという話を聞くこともあります。
果たしてどちらが本当なのでしょうか。
もしタトゥーがあっても加入できるとしたらどのような場合に加入できるのでしょうか。
今回はタトゥーがある方の生命保険の加入についてわかりやすく説明していきたいと思います。加えてタトゥーと生命保険にまつわる留意点について整理しました。
目次
なぜタトゥーが入っていると生命保険に入れない2つの理由
まず最初によく聞かれることとして「タトゥーが入っていると生命保険には加入できない」という観点について確認していきましょう。
結論からいうと、タトゥーが入っていると生命保険に入れない、というのはそのとおりであるということが出来ます。
ではなぜタトゥーが入っていると生命保険に入れないのでしょうか。
その理由は大きく2つありますが、順番に詳しく説明していきましょう。
病気のリスク
最初の理由は、病気のリスクです。
タトゥーを入れたことによって感染症のリスクが高まるとされています。
偶発的に感染症に罹患するのは仕方が無いのですが、タトゥーは自分の意志で行うものであり、それに感染症のリスクが付随していることで、保険会社としてはリスクが高い人を、それ以外の人と一緒に保険に加入させることは出来ない、という判断をしているのです。
では感染症のリスクを除いて加入を認めればいいのではないか、という疑問があると思います。
これはもっともな疑問で、実際に感染症のリスクを除く手段として、肝臓などを部位不担保として加入を一部認めることがあるようです。
しかしながら、こうした対応は例外中の例外で、ほとんどの場合は加入できない、とう判断になります。
反社会的勢力とのつながり
1つ目の理由は、感染症などの病気になりやすいという健康上のリスクが高いことが原因でした。これに対して、2つ目の理由は健康上のリスクではなく、モラルリスクといわれるリスクが高いことが原因です。
日本では歴史的に反社会的勢力に属している人はタトゥー(入れ墨とも呼ばれています)を入れていることが多かったのはご存知のとおりかと思います。
このため現在においてもタトゥーを入れていることで、反社会的な勢力とのつながりを疑われてしまうのです。
反社会的勢力はマネーロンダリングや不当に保険で利益を得ようとする傾向が高いため、生命保険の加入は一切できません。
このためタトゥーがあることで反社会的勢力との関係の恐れありということで生命保険に加入できないのです。
タトゥーが入っていても入れる生命保険
それでは、タトゥーが入っていても入れる生命保険はあるのでしょうか。
結論から言うと、「タトゥーが入っていても加入出来ますよ」と明確にしている保険会社はありません。
逆に民間の生命保険会社で構成される一般社団法人生命保険協会などでは反社会的勢力への対応について以下に引用する通りの指針を掲げています。
生命保険事業における反社会的勢力への対応
反社会的勢力との関係遮断を推進することは、生命保険事業の健全な発展のための重要な課題の一つであるとともに、生命保険会社に課せられた社会的責任であるともいえます。
当協会では、政府が策定した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」に則り、「行動規範PDF」において反社会的勢力との関係遮断を徹底することとしております。また、「行動規範」に基づき、会員会社が遵守する個別・具体的な事項を取りまとめた「生命保険業界における反社会的勢力への対応指針PDF」を策定いたしました。
また、保険契約においても、保険契約者、被保険者または保険金の受取人が、反社会的勢力(*1)に該当すると認められるとき、またはこれらの反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係(*2)を有していると認められるときに、保険契約を解除するとともに、反社会的勢力等に該当した時以降に発生した保険事故については保険金等を支払わない方向にて取りまとめております。
あわせて、生命保険会社が保険約款にて上記内容を定めるにあたり、その参考の用に供するため、規定例PDF を策定しております(規定例は各生命保険会社における反社会的勢力への対応の参考の用に供するものであり、各社を拘束するものではありません)。
(*1) 暴力団、暴力団員(脱退後5年を経過しない者を含む)、暴力団準構成員または暴力団関係企業その他の反社会的勢力をいいます。
(*2) 反社会的勢力に対する資金等の提供もしくは便宜の供与、または反社会的勢力の不当な利用を行うこと等をいいます。また、保険契約者または保険金の受取人が法人の場合は、反社会的勢力による経営の支配または実質的な関与があること等も含みます。
生命保険業界では、警察等の外部専門機関と緊密に連携のうえ、組織として反社会的勢力との関係遮断を徹底することを宣言し、適切な対応を行ってまいります。
引用_一般社団法人生命保険協会
このため、生命保険募集人(生命保険会社や募集代理店の営業社員、具体的には窓口の販売員など)が保険の提案時や申込み時において、タトゥーの有無などの確認や質問を行っています。
そのためタトゥーが入っていることが判明すると、それが保険会社の引受判断をする部署に報告されます。
そした反社会的勢力との関係をどうしても連想させてしまうタトゥーが入っている人は加入をお断りされてしまうことが多いというのが実情です。
なお、これは推奨するわけではありませんが、告知事項が限定されているような限定告知型の生命保険、一部の通販や小規模短期、共済などの非対面で申込ができる場合にはタトゥーの有無について確認されることがないため、タトゥーがない人と同じように加入できてしまうという実態となっています。
タトゥーが入っている人が保険に加入する際の3つの注意点
タトゥーが入っている場合には生命保険に入れるかどうかは事前には判断できないことがわかりました。
それではタトゥーが入っている人が保険に加入する際にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
その注意点は3つあります。
順番に説明をしていきましょう。
必ず告知をする
後で詳しく説明をしますが、もしタトゥーを入れていることを隠して加入したとしても、肝心の保険金や給付金の請求の際に、タトゥーをしていたことが露見した場合には、保険金や給付金を受け取ることが出来なくなります。
したがって、保険に加入する際には必ず「タトゥーを入れていること」を告知するようにしてください。
告知というのは、口頭で保険の営業の人に伝えるだけではいけません。
必ず告知書といわれる書面に、タトゥーをしていることを具体的に記載するようにします。
これで初めて保険会社は、タトゥーを入れているあなたを保険に加入させることができるかどうかを判断することになるのです。
条件付で加入できる場合
告知をして保険加入の申し込みをした後は、保険会社の引き受け可否を待つことになります。
残念ながらこの段階で加入できないという結果が返ってくる可能性があります。
しかしながら、特に問題なく加入できる場合もあるかもしれません。
そしてもうひとつ考えられるのは、条件付きで加入が出来るという場合です。
条件付きというのは、反社会的勢力との関係の疑いはないと判断されたものの、病気になるリスクは高いと判断された場合の結果として出てくるものです。
具体的には、病気のリスクが高いと想定される肝臓などの部位での病気の場合には保険金・給付金が出ない、というような部位不担保と呼ばれる条件です。
あるいは、2年間は保険金・給付金の金額を半額にしますよという保険金削減と呼ばれる条件もあります。
こうした条件が付いた場合に、その条件が承諾できるかどうかを慎重に判断したうえで加入をされることをお勧めします。
複数の保険会社で申し込む場合
これまで確認してきたとおり、タトゥーが入っていることで生命保険の加入を断られる可能性が高いことがわかりました。
そうすると、生命保険に加入するためには複数の保険会社で申込をしてみようと考えられる方がでてきます。
これは自然な行動なので責められることではないのですが、もし本当に同時に複数社で申込をするとどうなるでしょうか?
生命保険会社は、申込を引き受ける際に、自社に申し込みをしてきた人が、他社でどれ位の保険金額の生命保険で加入をしているかを相互ネットワークで確認をしています。
なぜこうしたことをしているかというと、あまりにも過大な生命保険金額に加入したり、集中して加入をしたりする場合には、保険金詐欺や保険金目当ての犯罪といった公序良俗に反する可能性があるからです。
このためタトゥーが入っている人が複数の保険会社に集中して申込をすると、余計に加入動機を疑われてしまう、という結果になるのです。
生命保険に加入する際には、本当に自分が加入したいという生命保険に絞って申込をされることをお勧めします。
こんな場合はどうなるの?保険加入にまつわる疑問
ここからはタトゥーにまつわるいくつかの疑問にお答えしていきます。
ぜひ今後の参考になればと思います。
保険に加入後タトゥーが入れたらどうなるのか?
保険に加入した後にタトゥーを入れたらどうなるのでしょうか。
特段保険会社に知らせる義務はないのですが、なにか病気やケガで治療をした後に保険会社に給付金請求をする場合があると思います。
その際に医師の診断書などからタトゥーが入っていることが保険会社に知られる可能性があります。
その時に、確認ということで保険会社から問い合わせが入る可能性がありますので、タトゥーを入れた時期・場所などについて回答できるようにしておくことが大切です。
また、同じ保険に加入し続けている場合は問題ないのですが、新しい保険に切り替えたり、保障の追加をしようとした際に、これまで確認してきたのと同様にタトゥーがあることで希望通りの加入ができない可能性が高くなりますので、注意をしてください。
タトゥーを入れると病院で健康保険は使えない?
タトゥーを入れると病院で健康保険を使えなくなることありません。
ここまでみてきた生命保険というのはあくまでも民間の生命保険のことであり公的な医療制度としての健康保険は、タトゥーの有無にかかわらず適用されますのでご安心ください。
アートメイクはタトゥーと一緒と見なされる?
最近はタトゥーを入れる方と同じぐらいアートメイクをされる方が増えてきました。
両方ともに似たようなものと思われる方も多いでしょうが、これらには実際に違いがあり、保険の入りやすさについても今後違いが出てくると思われます。
アートメイクとタトゥーの違い
タトゥーは、腕や脚にデザイン性のある柄や絵を入れる方が比較的多いと思います。
勿論背中や肩など全身に入れる方もいらっしゃいます。
これに対してアートメイクの場合はあくまでもメイクのためであり、メイクの手間を省くことがもともと主眼にあります。
アートメイクをする箇所もほとんどが顔の一部であり、眉毛や目元などに限られていることが多いです。
またアートメイクとタトゥーとの違いとして施術上の違いがあげられます。
具体的に言うと、皮膚に針を刺す深さが異なるのです。
アートメイクでは顔に施術をするので、自然に仕上がるよう皮膚の表皮層にしか針を刺しません。
それに対してタトゥーは色素が薄くならないように深く真皮層に針を刺します。
この違いによりアートメイクは徐々にその効果が薄れていき、やがて効果がなくなりますが、タトゥーはずっと効果が残るという違いがあります。
一緒とみなされる可能性は残る
ここまで説明してきたとおり、タトゥーとアートメイクとは異なるものです。
そのためタトゥーではなく、アートメイクをしているだけであれば保険の加入上はタトゥーではないということで問題ない可能性も高いでしょう。
しかしながらタトゥーではなく、アートメイクだということを証明することを求められる可能性がありますので注意をしてください。
タトゥーがあることを隠して保険に申し込むとどうなる?
タトゥーがあることを隠してバレなければそのまま保険に加入できる場合も多いでしょう。
しかしながら、後日保険会社がタトゥーがあることを知り得た場合、保険会社によっては、保険引受に係る重大な事実を告知していなかったということで契約が解除となる可能性があります。
ただしこれはケースバイケースの判断となり、一律に適用されるものではありません。
タトゥーの有無で保険金の額は変わる?
タトゥーがあることで保険金の額が変わる可能性があります。
ただしこれは保険申込みの後に生命保険会社から条件付きということで保険金削減の内容として具体的に記載があります。
その条件をよく確認したうえで加入を判断されるとよいでしょう。
【番外編】タトゥー以外で保険加入が難しくなる条件まとめ
ここまではタトゥーについて説明をしてきましたが、タトゥー以外で保険加入が難しくなる条件(あるいは状態)をご紹介していきましょう。
最初にご紹介するのは妊娠中の方です。
妊娠すると病気になるリスクも高まるため、出産後にならないと加入することはできません。
次にご紹介するのは、危険職種や危険が伴うスポーツを趣味とされている方です。
前者は、プロテストドライバー、スタントマン、高圧電気取扱者など、後者はハングライダーなどです。
すべての職種がまったく生命保険に加入できないということはないのですが、保険金や給付金の金額が削減されることが多いです。
まとめ
タトゥーが入っている人が生命保険に加入する際の注意点について説明をしてきました。
タトゥーがあることで病気のリスクとモラルリスクとで加入を断られるケースも多いのが実情ですが、申込み時にタトゥーであることをしっかりと告知したうえでの加入をすることで、加入後に保険金が払われないというような事態を避けることができます。