中小企業退職金共済制度とは?加入要件やメリット・デメリット、申請方法を解説!
「退職金共済」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。
各企業ごとに制度を設けて運用されている退職金ですが、最近では外資系企業の参入や終身雇用制度の崩壊に伴い、退職金額が少なくなる不安や退職金制度を設けられない企業も出てきているのが事実。
特に中小企業や、退職金制度が「有無」だけ明記されていて、支払額のルール等が明確になっていない場合、退職のタイミング(企業の資金繰りの余裕)によって金額が変わってしまう不安もありますよね。
こうした企業単体で不安定な運用にならずに済む仕組みが、「退職金共済」です。
この記事では、その中で中小企業を対象としている「中小企業退職金共済制度」に関して仕組みやメリット・デメリットを解説。
また加入要件やQ&Aも見ていきましょう。
今後の就職や転職に大きく関わる退職金のお話ですので、是非要点をおさえていただければと思います。
目次
中小企業退職金共済の概要・仕組み
まず始めに、中小企業退職金共済(以下、中退共)の仕組みからおさえていきます。
厚生労働省のホームページにある図を見てください。
上記図の補足説明として、下記順序にて中退共の制度が成り立っています。
事業主と独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が契約を結べば、あとは退職者に直接退職金が支払われます。
(1)
事業主が中退共と退職金共済契約を結びます。後日、従業員ごとの共済手帳を送付します。(2)
毎月の掛金を金融機関に納付します。掛金は全額事業主負担です。(3)
事業主は、従業員が退職したときには、「被共済者退職届」を中退共へ提出し、「退職金共済手帳(請求書)」を従業員に渡します。(4)
従業員の請求に基づいて中退共から退職金が直接支払われます。
中退共制度を導入している企業であれば、従業員に負担なく、企業が毎月退職金を積み立ててくれるという仕組みです。
中退共が絡むことで、企業のさじ加減で月々の積み立てを減らされたり退職時の企業の資金力に左右されず、外部にきちんと積み立てられていくのが安心ですね。
中退共制度の概要としては、法に基づき、企業間の相互扶助と国の助成を交えて、中小企業の従業員の福利を増進しようという目的で作られました。
中退共制度は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。
昭和34年(1959年)からできている制度と、長い歴史があります。
そんな中退共制度ですが、2019年2月末現在で、
・加入企業数:369,156社
・加入従業員数:3,465,746名
・運用資産額(積立額):約4.9兆円
と、非常に大きな規模感で利用されている制度となっています。
参照記事⇒制度の概要|中小企業退職金共済事業本部
中小企業退職金共済の加入資格
中退共の加入資格は、下記表の通りです。
業種 | 常用従業員数 | 資本金・出資金 | |
一般業種
(製造業、建設業等) |
300人以下 | または | 3億円以下 |
卸売業 | 100人以下 | または | 1億円以下 |
サービス業 | 100人以下 | または | 5千万円以下 |
小売業 | 50人以下 | または | 5千万円以下 |
参照記事⇒加入の条件|中小企業退職金共済事業本部
※上記でいう「常用従業員」の定義については、下記の通りです。
常用従業員とは、一週間の所定労働時間が同じ企業に雇用される通常の従業員とおおむね同等である者であって、
・雇用期間の定めのない者
・雇用期間が2か月を超えて使用される者を含みます。
「中小企業退職金共済」というだけあり、企業規模の大きさが加入資格の要件に入っておりますね。
中小企業退職金共済の8つのメリット
中退共に加入する上で、どのようなメリットがあるのでしょうか。
大きく下記の8点が挙げれます。
①:新しく加入する事業主や従業員への月額掛金を増額する事業主に対して、一定期間一部の金額を国が助成してくれます。
②:掛金が口座振替かつ従業員ごとの納付状況等の通知を受けられ、事業主の管理が簡単です。
③:掛金は全て非課税(法人企業は損金扱い、個人企業は必要経費扱い)です。
※資本金の額または出資総額が1億円以上の法人に関しては、事業税のみ外形標準課税が適用されます。
④:企業は従業員ごとに掛金を選択できるメリットと、従業員は一定の条件が揃わないと掛金を安易に減らされない安心感があります。
⑤:一定の要件を満たせば、過去の勤務年数や転職時に企業間の通算ができます。
⑥:退職金は中退共から直接従業員へ支払われるので安心です。
⑦:中退共と提携している施設等の割引サービスが福利厚生としてあります。
⑧:2014年4月以降に解散した解散存続厚生年金基金からの移行先としても利用できます。
ポイントは、企業側にもメリットがあり(国の助成や非課税扱い、管理の簡便さ、等)、従業員側にもメリットがある(安易に掛金を減額されず、直接退職金を受け取れて中抜き等の心配もない、等)ところに、制度としての大きなメリットを感じますね。
また、筆者が感じる最大のメリットは、「スケールメリット」です。
前述の通り、中退共制度の加入実績から見ても、約5兆円規模の共済制度として確立されていますし、ここには上記の通り国の介入もあります。
これだけの規模感で運用されている共済制度であれば、ちょっとやそっとでは崩れないと言っていいでしょう。
企業側にも、従業員側にも、安心できるレベルの母体が出来上がっている点が最大の特徴ですね。
詳細の説明も含め、特に重要なポイントに関しては、この記事の後半でも個別で見ていきます。
中小企業退職金共済の3つのデメリット
一方で、中退共のデメリットとしては、どんなことが考えられるでしょうか。
下記の3点がデメリットと言えます。
①:早期退職時の積立額元本割れのリスクがあります。
共済による積立制の退職金となりますので、返戻金のある保険等と同様に、集まった掛金を運用して、積み立てた金額よりも多く還元する仕組みとなっています。
そのため、積立期間が長くならないと、仕組みとしてメリットを享受しにくいのです。
基本退職金額表によると、
・掛金納付1年未満の退職…支給なし
・掛金納付1年以上2年未満の退職…元本割れ
・掛金納付2年〜3年6ヶ月までの退職…掛金同等額のみ
・掛金納付3年7ヶ月目〜…掛金相当額を上回る支給
となっており、3年程度までの退職が多い企業では、企業にとっても従業員にとってもメリットのない制度となります。
参照記事⇒よくわかる中退共制度詳細版(あらまし)パンフレット|中小企業退職金共済事業本部
②:企業としては、月額掛金減額の条件が厳しく、従業員としては、減額の難しさから増額の規定がないと中々増額してもらえないリスクがあります。
掛金の減額ができる場合は、中小企業退職金共済法に明記されています。
〈契約の解除〉
第八条 機構又は共済契約者は、第ニ項又は第三項に規定する場合を除いては、退職金共済契約を解除することができない。
〜中略〜
3 共済契約者は、次の各号に掲げる場合には、退職金共済契約を解除することができる。
一 被共済者の同意を得たとき。
ニ 掛金の納付を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めたとき。
〜中略〜
〈掛金月額の変更〉
第九条 〜中略〜
2 機構は、共済契約者からの掛金月額の減少の申込みについては、前条第三項各号に掲げる場合を除き、これを承諾してはならない。
従業員本人が、自身の退職金を減らされることを容易に認めないでしょうし、厚生労働大臣が認めるレベルの困窮さとなると、単に「資金繰りが苦しいから」といった程度では減額容認は難しいことが想像できます。
つまりは、減額の申請は中々現実的ではないという点が企業にとっての大きなデメリットとなるのです。
そうなると、企業が掛金の増額自体を渋る場合が想定されます。
元々退職金規定において、「月額賃金の◯%に相当する掛金を…」ですとか、「職位に応じて掛金を増額」といった明確なルールを設けてくれている企業であれば安心ですが、そうでない場合は、結局は経営陣のさじ加減に左右されてしまうリスクがありますね。
③:企業としては、ネガティブな退職に対しても規定通りの退職金支払いとなりますし、従業員としては、どんなに会社に貢献して円満退職でも、上乗せの無い規定通りの退職金支払いとなります。
退職金に関しては、定年を迎える従業員に対しての老後の収入として繰り延べているお金とも言えますが、中途退職も含めて、勤めてきた年数や今までの企業への貢献度も含めての支給額決定となる場合が多いでしょう。
その中で中退共制度は、基本的には勤続年数(積立年数)のみに左右されて支給額が決まる仕組みです。
ですので例えば、懲戒解雇になるようなケースは例外ですが、勤続年数の長い社員でも企業への貢献が少なく、ネガティブな退職に至った場合でも、勤続年数が長ければその分退職金は高くなり、法律でも本人の申し出がない限りは減額できない制度となっています。
参照記事⇒よくわかる中退共制度詳細版(あらまし)パンフレット|中小企業退職金共済事業本部
一方で、会社に一定期間在籍して業績でも大きく貢献して退職となる場合でも、算定基準は積み立ててきた年数のみとなりますので、こうした点をデメリットと感じる場合もありますね。
中小企業退職金共済を活用すると具体的にどの程度の節税になるか
前述の通り、メリットもデメリットも併せ持つ中退共制度ですが、それを取り入れる側の企業側にどれだけの加入価値があるかを押さえておきましょう。
法人に支払いが義務付けられている税金の中で、最もウエイトが大きいものが「法人税」です。
中退共制度を導入することで、企業にとってどの程度の節税効果があるかを計算していきます。
モデルケースとして、下記事例で中退共の有無による法人税の違いを見ていきます。
・資本金:5,000万円
・(社長、役員を除く)従業員数:10人
⇒10人に対し、1人あたり平均で月額10,000円の中退共制度の積立をしていると想定します。
・年商:3億円
・経常損益:900万円
※経常損益とは、年商から必要経費等(材料費等となる原資費用や人件費等々)を差し引いて算出した営業損益に対し、借入金の利払いや預金の受取利息、為替の差損金等の財務活動上の損益を加減して出た損益のことであり、企業がその1年で出した利益の目安となります。
参照記事⇒経常利益とは|日本経済新聞
※経常損益額は、年商の3%として算出
次に、法人税の税率に関してですが、今回の計算に該当する中小企業に対する部分を見ていきます。
国税庁ホームページによると、上記のモデルケースのような資本金1億円以下の企業の場合、通常年間の課税所得800万円までは15%の税額が、800万円を超えてからは23.2%(2018年4月1日から2019年3月31日までに開始の事業年度より適用の税率)の税額が法人税の金額となります。
参照記事⇒No.5,759 法人税の税率|国税庁
なお、この「課税所得」とは、前述の「経常損益」とは大部分が一致しているものの、定義の違いから若干の誤差があります。
課税所得に含まない項目が複数あるのですが、その誤差の1つとして、今回中退共制度の積立金も関係してきます。
中退共制度の積立金は、「非課税の損金」として扱われるのですが、非課税となるので、利益から差し引いて税額計算ができるということですね。
まず、中退共制度の制度を利用しない場合は、上記経常損益の900万円に税率がかけられます。
(便宜上、経常損益額を所得税額とみなします)
この場合、
900万円×23.2%=208.8万円
となるので、法人税として208.8万円かかる計算になります。
続いて、中退共制度を前述の条件にて利用した場合、下記金額が「損金」として非課税の計算となります。
1人あたり10,000円の×10名分×12ヶ月分⇒10,000×10×12=1,200,000円
経常損益の900万円から、上記の120万円が非課税として控除され、残り780万円に対して、法人税が課せられます。
この場合、課税所得が800万円以下の場合法人税率が15%なので、
780万円×15%=117万円
となります。
純粋な120万円の非課税控除だけで同じ法人税率の場合でも、数十万円単位の節税になりますし、課税所得額の境目に活用すれば、上記の通り90万円以上の節税となりました。
このモデルケースの場合には、実質約30万円の年間支出だけで、120万円分の社員への年金積立をできたこととなります。
また、これらは一番大きい金額でわかりやすい法人税の計算を挙げたに過ぎません。
法人住民税等、その他の細々した税金も合わせていきますと、節税効果はさらに大きくなるでしょう。
これだけのメリットが企業にあれば、従業員側から見ても継続した積立や積立増額も期待できそうですね。
中小企業退職金共済の月ごとの掛け金の範囲
では、実際に中退共制度の月額掛金は、最低いくらから最高いくらまであるのでしょうか。
最低掛金は5,000円から始まり、6,000円、7,000円と1,000円刻みで10,000まで、またそれ以降は12,000円、14,000円と2,000円刻みで最高掛金30,000円まで対応しております。
なお、短時間労働者(時短勤務のパートさん等)用として、2,000円、3,000円、4,000円から掛金を選ぶことも可能です。
参照記事⇒よくわかる中退共制度詳細版(あらまし)パンフレット|中小企業退職金共済事業本部
掛け金には国や市から助成制度がある
また、条件にはあるものの、上記掛金には国や市からの助成制度があります。
まず国の助成ですが、「新規加入助成」と「月額変更助成」があります。
まず、新規加入助成について見ていきます。
<新規加入助成>
新しく中退共制度に加入する事業主に
(1)掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、国が助成します。
(2)パートタイマー等短時間労働者の特例掛金月額(掛金月額4,000円以下)加入者については、(1)に次の額を上乗せして助成します。
掛金月額2,000円の場合は300円、3,000円の場合は400円、4,000円の場合は500円
※ただし、次に該当する事業主は、新規加入助成の対象にはなりません。
・同居の親族のみを雇用する事業主
・社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している事業主
・適格退職年金制度から移行してきた事業主
・解散存続厚生年金基金から資産移換の申出を希望する事業主
・特退共事業廃止団体から資産引渡の申出を行う事業主
続いて、月額変更助成についてです。
<月額変更助成>
掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額変更する事業主に、増額分(増額前※1と増額後の掛金月額の差額)の3分の1を1年間、国が助成します。
20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象にはなりません。
月額変更助成期間中に再度、増額変更する場合には、前の「月額変更助成」は中止され、新しい「月額変更助成」が対象となります。
※1.増額前の掛金月額とは、過去に納付した最も高かった掛金月額です。
※2.同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象にはなりません。
※3.助成額の10円未満の端数は、切り捨てになります。
※4.掛金月額の増額による助成期間内(12か月)に掛金月額を減額した場合、「月額変更助成」は打ち切りとなります。
〜中略〜
節税だけでなく、中退共制度の導入時や従業員への積立金増額後には国が助成してくれるので、当初の負担を減らせて運用していけるのがありがたいですね。
合わせて、一部自治体では各自別途で助成が設けられています。
一部例を挙げますと、
・東京都葛飾区:各従業員ごとの掛金総額に3分の1を乗じて得た額(10円未満切捨て)を合計した額(年額50万円まで)を助成
・東京都八王子市:被共済者1人につき、1ヶ月あたり300円を助成
参照記事⇒リンク集 助成自治体(関東)|中小企業退職金共済事業本部
等々、各自治体で様々な助成が受けられる場合もありますので、更にお得になる可能性がありますね。
中小企業退職金共済の通算制度とは?
いざ中退共の利用を企業側が決めた場合、従業員は下記の4つのパターンで過去の積立年数を通算して加算できる可能性があります。
①中退共導入時から遡った同一企業での勤続年数を通算するパターン
企業が中退共制度を初めて導入する際、
・1年以上勤続している従業員に限る
・通算する分の掛金は別途納付する
ことを条件に、最長過去10年間分まで、勤続年数を遡る通算が可能です。
ただし、一部通算ができない特殊なケースもあります。
上記ケースでは最長10年分の通算を認めてくれますが、転職等で実際に別企業や別の共済制度で加入していた掛金納付月数がある場合は、その分の通算に留まるということですね。
参照記事⇒通算制度|中小企業退職金共済事業本部
②中退共加入企業間での転職をするパターン
退職金制度は各企業のものであるのが通常なのですが、下記の場合は転職時も掛金納付月数の通算が可能です。
中退共の退職金積立をしている企業から、中退共制度を導入している企業へ転職する際に前職分の通算ができるのは、下記の場合です。
・掛金が12月以上納付されていること
・前の企業を退職してから3年以内に申し出ること
・前の企業で退職金を請求していないこと
また、会社都合の退職の場合は12ヶ月以上の納付が不問になる場合や、同一企業内でも復職等での以前の勤務分通算もできる場合があります。
参照記事⇒通算制度|中小企業退職金共済事業本部
③中退共制度導入企業と、「特定業種退職金共済制度」導入企業との間での転職をするパターン
中退共制度の中でも、特定の業種である建設業、清酒製造業、林業に勤める期間雇用者を対象にした「特定業種退職金共済制度」というものもあります。
上記のような職種の場合、期間限定の仕事で雇われたり等、雇用はもちろん、退職金の制度としても不安定な状況に置かれやすいので、こうした業種に絞って退職金共済制度を設けられているのは安心材料となりますね。
こうした企業から中退共制度導入企業へ転職する場合に、下記条件を満たせば掛金納付月数を通算することができます。
(1)異なる企業に再就職した場合
・退職後3年以内であること
・退職金を請求していないこと
・その加入従業員(被共済者)が通算を希望し、その旨を申し出ること
・その退職が当該加入従業員(被共済者)の責めに帰すべき事由またはその都合によるものでないと厚生労働大臣が認めたこと
(2)同一企業内で職種を変更した場合
・事業主(共済契約者)がその加入従業員(被共済者)の同意を得て通算を申し出ること
④中退共制度導入企業と、特定退職金共済制度導入団体との間での転職をするパターン
商工会議所や商工会等の特定の退職金共済団体が実施する退職金共済制度との通算も、一定条件に限り可能となっています。
・退職後3年以内に退職金の請求をしないでもう一方の制度の被共済者となり、かつ、通算の申込みをすること
・中退共と特定退職金共済団体との間で退職金引渡契約を結んでいること
上記の通り、もちろんどんな場合でも通算ができるわけではありません。
加えて、転職が絡む場合は両者で中退共制度の導入、利用が必要となります。
それでも、通常であれば転職ごとに退職金の清算がされるので金額が少ない(もしくは勤続年数が短く退職金自体が無い)はずのケースでも、通算制度の活用によって、より多くの金額の退職金が見込めるようになりますね。
中小企業退職金共済に申請する方法
次は、実際に中退共に申請する方法を押さえていきます。
加入時の申請としては、
・「【新規】退職金共済契約申込書」という書類(各金融機関や委託事業団体等に置かれています)に必要事項を記入する
・金融機関、委託事業主団体、委託保険会社いずれかに直接提出する
上記2点のみです。
参照記事⇒Q&A 2.加入について|中小企業退職金共済事業本部
なお、退職金共済契約申込書は、金融機関や委託事業先に置いてあります。
また、委託事業主団体には、下記のような団体があります。
・中退共が業務の一部を委託している商工会議所、商工会
・中小企業団体中央会
・青色申告会
・労働保険事務組合
・労働基準協会
・ハイヤー・タクシー協会
・中小企業勤労者福祉サービスセンター
・税理士協同組合
・TKC企業共済会
等々
参照記事⇒Q&A 2.加入について|中小企業退職金共済事業本部
中小企業退職金共済を退職時に受けとる方法
中退共の退職金を退職時に受け取る手順は、下記の通りです。
①加入時に受け取る「退職金共済手帳」の3枚目にある、「退職金(解約手当金)請求書」に署名押印の上、銀行等金融機関の窓口に向かい口座確認欄に押印してもらう。
②本人確認書類(マイナンバー入り住民票と、身元確認書としての運転免許証やパスポート等のコピー等)を添付する。
※遺族が受け取る場合、過去に退職金の受取がある場合には、別途確認書類が必要です。
③上記の①と②の書類を、中退共本部給付業務部へ送付する。
参照記事⇒退職した際の手続きを行う場合|中小企業退職金共済事業本部
なお、退職金の請求書類を送付してから、実際に口座へ振り込みがあるまでは、審査の進捗にもよりますが、約1〜2ヶ月ほどかかる模様です。
参照記事⇒退職した際の手続きを行う場合|中小企業退職金共済事業本部
中小企業退職金共済以外の積み立ての方法
企業側としては、銀行での積立と、保険を用いた積立が考えられます。
ですが、前述の通り銀行での積立ですと、法人税その他の課税対象となりますので、余裕を持った用意がしにくいことが予想されます(税金として引かれてしまう金額が大きくなります)。
その点、従業員を被保険者とし、死亡保険金の受取人を従業員の家族にする形で養老保険を組むことで、従業員死亡時には家族に保険金が渡るようにし、満期を迎えれば保険金を退職金として従業員に支払うことができます。
ただし、2019年2月13日に、国税庁主導でこうした企業が加入する保険商品に対して規制を行う方針が出されました。
今後の保険商品を検討する中で、保険料が「非課税の損金」として扱われるかどうかには注視する必要がありそうです。
中小企業退職金共済に関するQ&A
以下に、中退共に関して回収の多い質問と、それぞれに対して回答を致しました。
参考までにご覧ください。
中小企業退職金共済は個人事業主でも加入できる?
結論としては、中退共への加入はできません。
理由は、中退共が中小企業で働く「従業員」に向けた退職金共済制度だからです。
個人事業主は、1人で事業を行う場合も、少人数で事業を行う場合も、実質的な「経営者」という扱いとなりますので、中小企業の経営陣と同様、中退共には加入できないということですね。
ですが、同じく国の助成も受けられる制度で、「小規模企業共済」というものがあり、こちらは個人事業主でも加入できます。
ご興味ある方はご確認ください。
小規模企業共済URL:http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/index.html
退職より前のタイミングで中小企業退職金共済を解約することはできる?
原則できません。
中退共制度の退職金支払いは、中退共の事業本部が扱いますので完全な第三者の対応となります。
ですので、いわゆる前借りとして企業内でやりとりすることはできませんし、制度自体が企業からの従業員退職の書類と従業員の退職の書類の両方を確認の上支払う決まりとなっています。
また、加入企業も経営側の意向のみで簡単に辞められないようにもなっていますので、加入すれば原則退職時になるまで解約はできないと思っておきましょう。
中小企業退職金共済とiDeCoは併用できる?
併用できます。
中退共制度は、企業側が従業員に向けて行う企業年金としての制度です。
一方iDeCo(確定拠出年金)は、自身で月額の支払いを決めて運用し、運用実績に応じて年金として受け取るという個人年金の一種です。
「中退共制度の退職金だけでは不安」という方は、中退共と違ってご自身の支払いにはなりますが、iDeCoの活用も併せて行うと、退職してからの老後の生活をより手厚く準備することができますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今のご時世的にも、勤める先・転職希望先が退職金の期待できる企業なのか、またどの程度期待していいのかは従業員側にとって重要な関心事。
一方で、企業側にとっても、雇用の在り方や経済成長率が一昔前と変わって衰退している現代において、大風呂敷を広げて退職金を支払う余裕がないのも事実。
そんな双方の不安を解消する1つとして、中退共の退職金共済制度は有効な手段となるのではないでしょうか。
こうした制度の情報が、中小企業の経営側も、また中小企業で働く従業員側にも、将来の安定を感じながら働けるようになるきっかけとなれば幸いです。