自動車保険の運転者限定特約とは~配偶者や家族も補償されるのかFPが解説

2024.07.16

自動車保険

自動車保険を契約する際には、代理店のスタッフやネットの契約手続きにいてさまざまな特約が紹介されることでしょう。

なかでも「運転者限定特約」と「運転者年齢特約」は、支払う保険料に関わってくるため、その仕組みやルールについて理解しておくことをおすすめします。

今回は、自動車保険の特約について解説していきます。

目次

自動車保険の運転者限定特約とは~配偶者や家族も補償される?

自動車保険の特約の1つである「運転者限定特約」をご存知でしょうか?

簡単に言うと、自動車を運転していた人が事故に遭った場合、賠償金がもらえる人の範囲を限定する代わりに保険料を安くする特約のことです。

運転者限定特約は、主に自動車を運転するのは誰か、どのような目的で自動車を利用するかで最適なプランが変わってきます。

今回は運転者限定特約の基礎知識から具体的なシミュレーションを通して、お得な特約を付ける方法を紹介します。

自動車保険における運転者限定特約とは

運転者限定特約とは、自動車事故のケガなどを補償してもらえる範囲を次のように区分した特約です。

●保険会社と契約した本人(記名被保険者)のみ
●本人と配偶者まで
●本人と配偶者いずれかの同居中の子供と別居中の未婚の子供まで

補償の範囲を夫婦や家族に絞ることで、保険会社は万が一の賠償の負担を減らし、契約者は保険料を割引してもらえるねらいがあります。

運転者限定特約を付けなければ、被保険自動車を誰が運転していても自動車事故のケガが補償されますが、保険料は割引されません。

運転者家族限定特約とは

運転者家族限定特約とは、自動車事故のケガなどを補償してもらえる範囲を本人とその家族に限定する特約のことです。

被保険自動車を本人の配偶者や子供が運転中に自動車事故を起してケガなどをした場合、補償の対象になります。

ここで言う「家族」には、本人や配偶者と同居中の息子や娘など同世帯の家族、および家を離れて一人暮らしをしている未婚(婚姻歴なし)の子供が自動車を運転する場合も補償の対象になります。

ただし、近年になって家族限定特約を選ぶ比率が小さくなっていたため、保険会社大手4社を筆頭に、各自動車保険会社が2018年12月31日をもって家族限定を廃止する動きがあります。

参考→割引率7~8% 自動車保険に「本人限定」広がる|NIKKEI STYLE

運転者夫婦限定特約とは

運転者夫婦限定特約とは、自動車事故のケガなどを補償してもらえる範囲を本人とその妻や夫までとする特約です。

被保険自動車を本人の配偶者が運転中に自動車事故を起してケガなどをした場合、補償の対象になります。

当然ながら、対象外である本人・配偶者の子供やその両親が自動車事故を起してケガをしても保険金は支払われません。

家族や親族の運転中のケガも補償してもらいたい場合は、「条件なし」を選ぶ必要があります。

自動車保険における運転者年齢条件特約とは

運転者年齢条件特約とは、交通事故のときに補償の対象となる運転者の年齢を限定することで保険料を割引できる特約です。

年齢区分は「年齢不問(条件なし)」「21歳以上」「26歳以上」「30歳以上」の4つから選択します。

過去の自動車事故の統計で若い人の事故発生率が高いことから、20~30代が条件となっています。

当然ながら、運転者年齢条件特約を付けた自動車を、条件を満たさない年齢の人が運転して事故を起こしてしまった場合、保障の対象となりません。

運転者限定特約だと代行も使えない?

運転者限定特約を付けていた場合、例えば配偶者や家族でない運転代行サービスも利用できないのでしょうか?

答えは「NO」ですが、万が一、運転代行中に自動車事故を起した場合、賠償責任は代行業者と依頼者(本人)が負うことになります。

運転代行中は依頼者が加入している任意保険は使えません。

しかし、代行業者が加入している対人賠償8,000万円、対物賠償200万円の保険があるため、基本的に交通事故の被害者は代行業者に賠償請求をします。

ただし、運転代行業者が保険未加入(違法操業)だったり、賠償の義務を果たさなかったりした場合は、連帯責任として代行の依頼者にも責任が及ぶ可能性があります。

代行を依頼する運転代行業者が保険に加入しているか否かは、優良運転代行業者評価制度を利用して確認しましょう。

参考→優良運転代行業者評価制度|公益社団法人 全国運転代行協会

運転者限定特約シュミレーション~家族の範囲はどこまで?

運転者限定特約を付けている場合のシミュレーションしてみましょう。

【ケース①】

●運転者(本人):35歳男性
●配偶者・子供:妻30歳女性、子供なし

※配偶者も運転する
※保険開始日は2019年1月1日以降

【ケース①】にマッチングする契約受験

運転者限定特約「なし」
運転者年齢条件「30歳以上補償」

【ケース①】の補償の対象となる範囲

本人:30歳以上補償の対象内
配偶者:30歳以上補償の対象内

同居親族や別居の親族、友人、知人は年齢を問わず補償の対象内

【ケース②】

●運転者(本人):60歳男性
●配偶者・子供:妻55歳、別居中の28歳未婚の子供あり

※配偶者・別居中の未婚の子供も運転する
※保険開始日は2018年12月31日以前

【ケース②】にマッチングする契約受験

運転者家族限定特約
運転者年齢条件「26歳以上補償」

【ケース②】の補償の対象となる範囲

本人:26歳以上補償の対象内
配偶者:26歳以上補償の対象内

別居の未婚の子供:年齢を問わず補償の対象内

それ以外は年齢を問わず補償されない

9社の自動車保険、運転者限定特約と運転者年齢条件特約一覧

自動車保険会社の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組みを紹介します。

三井住友海上の自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
本人限定特約 本人(記名被保険者)のみ補償
運転者本人・配偶者限定特約 本人とその配偶者まで補償
運転者家族限定特約 本人とその配偶者、または同居の家族及び別居の未婚の子まで補償

※2018年12月31日以降廃止

運転者年令条件特約 「21才以上補償」「26才以上補償」「35才以上補償」の3区分

損保ジャパンの自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
本人限定特約 本人(記名被保険者)のみ補償
運転者本人・配偶者限定特約 本人とその配偶者まで補償
運転者家族限定特約 本人とその配偶者、または同居の家族及び別居の未婚の子まで補償

※2018年12月31日以降廃止

運転者年齢条件特約 「21歳以上補償」「26歳以上補償」「35歳以上補償」の3区分

東京海上日動の自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
本人・夫婦限定特約 本人とその配偶者まで補償
家族限定特約 本人とその配偶者、または同居の家族及び別居の未婚の子まで補償

※2018年12月31日以降廃止

運転者年齢条件特約 「21歳以上補償」「26歳以上補償」「35歳以上補償」の3区分

東京海上日動の自動車保険に、記名被保険者のみ(本人限定)の特約はありません。

チューリッヒの自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
本人限定型 本人(記名被保険者)のみ補償
夫婦型 本人とその配偶者まで補償
家族型 本人とその配偶者、または同居の家族及び別居の未婚の子まで補償
運転者年齢条件特約 「21歳以上補償」「26歳以上補償」「35歳以上補償」の3区分(適用範囲は本人の同居親族まで)

チューリッヒの自動車保険は、2019年以降も家族型が選択可能です。

JA共済の自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
運転者家族限定特約 本人とその配偶者、または同居の家族及び別居の未婚の子まで補償
運転者一定年齢限定保障特約(運転者年齢条件) 「21歳以上限定」「26歳以上限定」「30歳以上限定」「35歳以上限定」の4区分(適用範囲は本人の同居親族まで)

※30歳以上限定は平成2013年10月1日以降廃止

JA共済に本人(記名被共済者)限定特約、夫婦限定特約はありません。

アクサダイレクトの自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
本人型 本人(記名被保険者)のみ補償

※2018年12月31日以降廃止

夫婦型 本人とその配偶者まで補償

※2018年12月31日以降廃止

本人・夫婦型 本人とその配偶者まで補償

2019年1月1日以降の保険開始日より

家族型 本人とその配偶者、または同居の親族及び別居の未婚の子まで補償(同居の親族、別居の未婚の子は年齢不問)

※2018年12月31日以降廃止

運転者年齢条件特約 「21歳以上」「26歳以上」「35歳以上」の3区分

ソニー損保の自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
本人限定 本人(記名被保険者)のみ補償

※2018年12月31日以降廃止

夫婦限定 本人とその配偶者まで補償

※2018年12月31日以降廃止

本人と配偶者限定 本人とその配偶者まで補償

2019年1月1日以降の保険開始日より

家族限定 本人とその配偶者、または同居の親族及び別居の未婚の子まで補償

※2018年12月31日以降廃止

運転者年齢条件特約 「21歳以上」「26歳以上」「35歳以上」の3区分

富士火災の自動車保険の運転者限定特約と運転者年齢条件特約の仕組み

特約 仕組み
運転者本人・配偶者限定 本人とその配偶者まで補償
運転者家族限定特約 本人とその配偶者、または同居の親族及び別居の未婚の子まで補償
運転者年齢条件特約 「21歳以上」「26歳以上」「35歳以上」の3区分

運転者限定特約をつけるとどれくらい保険料が安くなる?割引率の目安

保険会社によって若干異なりますが、運転者限定特約の割引率はそれぞれ次のとおりです

●本人限定 約7%
●本人・配偶者限定 約6%
●家族限定 約1%

【シミュレーション】

●記名被保険者:38歳男性
●家族:34歳の妻、4歳の子供1人、他の同居人なし
●車を運転する主目的:主に買い物やレジャーで車に乗る
●妻の運転:する
●免許証の色:ゴールド
●任意保険:車両保険
●自動車保険の加入期間:加入後1年くらい
●自動車:トヨタ プリウス
●運転者限定:本人・配偶者
●年齢条件:35歳以上補償

以上でシミュレーションすると、保険料は年間約68,000円です。

あくまでも目安ですので、加入を検討している保険会社のシミュレーション等でお試しください。

既存の自動車保険を運転者限定に変更する方法

たとえば、自動車保険の契約期間中に運転者限定特約が「本人限定」だったものを、「本人・配偶者限定」や「家族限定」に変更することは可能でしょうか?

答えは、可能です。

手続きの方法は契約中の保険会社によって異なりますが、基本的には保険会社のコールセンターや代理店に問い合わせれば変更手続きができます。

また、ネットから変更の申し込みをすることでも可能です。

変更の注意点としては、保険会社によって変更後の補償開始日が異なることが挙げられます。

申込みの際には保証開始日を確認しましょう。

既存の運転者限定特約を解除する方法

たとえば、運転免許証を取得した子供が親の自動車に乗る際に、自動車保険の契約期間中に「本人限定」としていた運転者限定特約を解除して「条件なし」にすることはできるでしょうか?

答えは、できます。

これも各自動車保険会社によって手続きの方法は異なりますが、コールセンターや代理店に問い合わせて解除の手続きができます。

ただし、保険料の割引が無効になるため注意が必要です。

さらに「この日だけ友人が自分の車を運転する」という場合に、運転者限定特約を1日限定で解除することも可能です。

1日限定補償は、一般的な補償内容が500円/日、手厚い補償内容が1,000円/日で付けられます。

まとめ

運転者限定特約について、基礎知識と各自動車保険会社の特約の一覧、具体例によるシミュレーションを紹介しました。

大手自動車保険会社が2019年1月1日以降のシンプルになった特約を採用しているため、これから自動車保険に加入を検討している方は「条件なし」「本人限定」「本人・配偶者限定」のいずれかを選ぶことになるでしょう。

保険料の割引率はもちろん、自分の自動車の運転目的やライフスタイルに合わせて、最適な特約を見極めることが重要です。

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